今次の放送法改正案に反対すべき理由:令和元年はNHK改革の正念場

足立 康史

週明け5月14日(火)の衆院総務委員会で放送法改正案の採決が行われます。衆院の総務委員である私は、党政調の総務部会長として反対の論陣を張ってきましたが、参院の総務委員である片山虎之助共同代表が賛成すべきとの立場であるため、週明け13日(月)に改めて部会を開催し、直接対論を行う予定です。

以下は私の主張。ご支援を宜しくお願い申し上げます。

NHK放送センター(NHKサイトより:編集部)

1.NHKの「ネット同時配信」解禁は、一歩前進と評価する向きも一部にあるが、今次は放送と通信の融合する新時代に対応する最後のチャンスであり、この期に及んで単なる弥縫策に過ぎない法律案を提出するというのは、NHKの抜本改革を行わないとの政府の意思表示と受け取らざるを得ない。

2.受信料に支えられるNHKが現在の枠組みのままネット業務を拡大することについては、民放連(日本民間放送連盟)が民業圧迫として反発してきた経緯がある。そのため、法律案では、1)ネット配信を放送受信契約者に対する補完的サービスに限定(IDとパスワードがなければ視聴できない)、2)ネット業務の費用を受信料の2.5%までに制限、3)同時配信に係る著作権法規定(許諾権)を維持、といった極めて限定的な解禁となっており、NHKの肥大化を図ると同時に民放連の既得権に配慮する「妥協の産物」であると断じざるを得ない。

NHKが現在の古い枠組みを抜け出せないのは、民放連との関係だけが理由ではない。放送にまつわる広範な既得権者に過剰に配慮する中で、世界に類例のないスクランブルを前提とした限定受信システムCAS (Conditional Access System)を民間放送事業者と共同で開発し、視聴者の利便性を犠牲にしてきた経緯がある。昨年からは更に、外挿するカード(B-CASカード)を内蔵チップ(A―CASチップ)に切り替え、その費用を視聴者に転嫁する暴挙に出た。そして、民間の有料放送事業者さながらに受信契約に応じない視聴者を識別し、NHKの現在の枠組みに反発する視聴者を放送サービスとネットサービス両方の受益から排除してきた。

3.本来、NHKの業務のうち、民間にできる番組は民間に委ね、災害時の緊急放送や報道等に番組内容を限定し、公共性の高いコンテンツを視聴する機会を広く国民にノンスクランブルで提供すべきである(=公共NHK)。そして、既に肥大化してきた民間との競合分野については、民間放送事業者との公正な競争環境(イコールフッティング)の下で正々堂々とそのコンテンツを競い合うべきである(=民間NHK)。 そうすれば、Eテレ等地上波の帯域開放も進めることができるし、Incentive Auctionなど周波数返上の仕組みを整備すれば5Gなど新しい時代のサービスを展開することもできる。

4.以上のようなNHKを公共的役割に集中させる方策をネット同時配信に踏み切る前に実行し改革すべきと再三指摘してきたにもかかわらず、政府提出法案には放送と通信の融合時代に相応しいビジョンもなければ対策もない。日本維新の会としては、本会議の壇上で党のNHK改革方針を示した上で法律案に反対するのが妥当と考える。


編集部より:この記事は、衆議院議員・足立康史氏の公式ブログ 2019年5月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は足立氏のブログをご覧ください。