バロンズ:米中通商摩擦の激化での、投資対象とは

2019年05月12日 11:30

バロンズ誌、今週のカバーは変動の大きい市場を迎えて堅実に配当ベースでの推奨銘柄を取り上げる。米中通商協議が難航し、遂にトランプ政権が2,000億ドルの中国輸入品ヘの追加関税を10%から25%ヘの引き上げを決定、さらに3,250億ドル相当、即ちほぼ全ての中国輸入品に対し25%の関税を賦課する方向で検討に入った。不確実性が米株相場を覆うなかで、バロンズ誌は7つの手堅い配当銘柄で何を推奨する。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は米中通商交渉の軟着陸を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

米中間の貿易戦争が激化するなか、最も打撃を受ける市場のひとつが米株だ。消費者や生産者が追加関税賦課の代償を支払うと想定されるだけでなく、影響を受けるのは金融であるためだ。

トランプ大統領が2,000億ドルの中国輸入品の追加関税を10%から25%ヘ引き上げると表明した5月5日以降、米株相場は2兆ドル程の時価総額を吹き飛ばした。しかし、上海総合は追加関税引き上げにも関わらず10日に3.1%高で取引を終え、ダウも358ドル安から転じて114ドル高で終了した。

これは、トランプ大統領が米中通商協議に対し「率直で建設的だった」と言及した結果だろう。とはいえ、上海総合は6日週に4.52%安だったほか、日経平均や韓国総合株価指数はそれぞれ約4%安でクローズした。ダウは2.1%安で引け、S&P500は2.2%安、ナスダックは3.0%安となり、S&P500とナスダックは年初来で最悪のマイナスを記録した。

マイナスで週を終えたとはいえ、劉鶴副首相がワシントンを訪問した事実もあり、市場では依然として楽観論が漂う。また、トランプ大統領と習近平主席は20ヵ国・地域首脳会議が開催される大阪で再会する予定だ。

いずれにしても、中国はトランプ大統領を激怒させることなく、同時に面子を保てるような対応を講じる必要がある。だからこそ、トランプ政権の追加関税引き上げを受けても、即時に対応策に打って出なかったのだろう。とはいえ人民元は、米中間の緊張を反映し6日週に1.3%下落した。人民元は心理的節目である1ドル=7.0元を下回る推移を維持するが、これは中国政府が中国からの資金流出を懸念していることの表れと考えられる。

ただし、中国ベージュブックのレランド・ミラー氏は、トランプ政権が検討する3,250億ドル相当の中国輸入品に対する25%への追加関税引き上げにより、中国政府が7元を超える人民元安の誘惑に駆られるのではないかと指摘。ソシエテ・ジェネラルが試算するように、これまでの米国による追加関税措置により、中国の成長率が0.2〜0.3%pt押し下げられたならば、そうなるのも頷ける。

BCAリサーチのピーター・ベレゼン主席グローバル・ストラジテストは、投資家が中国による信用拡大を過小評価していると考える。確かに、中国政府が現代金融理論(MMT)に則り、経済を支えてもおかしくない

仮に一連の緩和策に踏み切れば、中国は足元の人民元ペッグを断念しなければならない可能性が出てくる。そう考えるのは、Jキャピタル・リサーチのアン・スベンソン—ヤン氏だ。

アトランタ地区連銀のボスティック総裁によれば、米連邦準備制度理事会(FRB)も、追加関税措置による個人消費鈍化に備え対策を講じる可能性がある。足元、米国の消費者は追加関税措置の影響を受けて支出を抑制しているようにはみえない。ただ、仮に家計が支出を減速させれば、利下げの可能性も出てくるだろう。少なくとも、ボスティック総裁はそのように発言した。

皮肉にも、トランプ政権による利下げ要請は、中国政府が強硬姿勢をとる口実を与えたと、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は伝えている。トランプ政権が利下げを求めるということは、米1〜3月期実質GDP成長率が示すほど米経済は力強くないと考えられるためだ。

こうした交渉上の取引はさておき、UBSインベストメント・バンクの米国担当首席エコノミストであるセス・カーペンター氏は、世界貿易は年初来の2ヵ月間で金融危機以来で最も落ち込んだと指摘する。米中間の貿易戦争の影響を緩和するには、米中に緩和策に頼るしかない。

投資家は、こうした状況でどのように自身を守っていくべきなのか。これまで、米株相場でとったポジションは、米長期債でヘッジできた。例えば、ブラック・マンデーを迎えた1987年10月19日、ダウは22%も急落したが、Fedが緊急利下げを断行したため、米国債の価格は上昇し米10年債利回りは10%超えから急低下した。

しかし、昨年から米長期債はそれほど米株安のヘッジとなっていない。恐らく、長期債は債務者が返済しないリスクや返済が十分であるかのリスクが横たわるためだろう。

こうした事情から、リチャード・バーンスティーン・アドバイザーは、顧客に長期債をリスク資産のヘッジとして推奨していない。同時に、長期債はS&P500と比較し、ポートフォリオのダイバーシティーを生んでいないとも指摘する。例えば、高利回り債とS&P500はほぼ正比例してきた。

一方で、S&P500と米長期債はわずかな違いしか確認されていない。つまり、十分なヘッジとして機能していないことになる。利回り自体も、長期債を保有するインセンティブを与えていない。例えば、米2年債利回りが2.283%に対し、米財務省短期証券(Tビル)の利回りは2.432%だ。米5年債利回りが2.265%に対し米10年債利回りは2.461%であり、米5年債が償還された場合は、年限ベースで半分のリスクをとるだけで米10年債の92%を得ることになる。

ただし、仮に景気後退局面で米債利回りが急低下すれば、米株相場の打撃となり、米長期債の価格に上昇圧力を加えるだろう。グラスキン・シェフのデビッド・ローゼンバーグ首席エコノミスト兼ストラジテストは、その時に米10年債が英10年債利回りと同じ水準(足元で1.126%)に近づくと予想する。実現すれば、米長期債は2桁のリターンを与えることになるだろう。

——バロンズ誌は、かつて米債が米株のヘッジとして機能していないと指摘していたにも関わらず、方向転換したようです。米中間の貿易摩擦により、米景気後退を想定するようになったと考えられます。少なくとも、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリートを担当するランダル・フォーサイス氏は、米中通商関係の一段の悪化を見込んでいるのでしょう。

(カバー写真:The White House/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年5月11日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑