10年遅れたトヨタのデジタルエコノミー対応

2019年05月13日 06:00

トヨタはプリウスPHVを一部改良し、今月9日に発売しました。以下はCar Watchのウエブ記事の引用です。

今回の改良では、車に備えた電気を住宅に供給する仕組み「V2H」が新たに加わった。

新しく急速充電インレットに外部給電機能をオプション設定し、クルマに蓄えた電気を住宅に供給する「V2H(Vehicle to Home)」に対応。別売りのV2H機器と接続することで、車両の駆動用バッテリーに蓄えた電気を家庭用電力として利用でき、災害などで停電した際でもプリウス PHVを“蓄電池”として活用可能とした。さらに、住宅の太陽光発電などで生じた余剰電力を車両の駆動用バッテリーに蓄電できる。

ようやくトヨタ車によるV2H(車の蓄電池から家への電力供給)が商用化されたとは感慨深いです。

EVの先駆者は2010年にリーフを世に送り出した日産で、当時トヨタはプリウスハイブリッド車の絶頂期で、投資回収に躍起。ハイブリッドの次世代車は一足飛びに水素による燃料電池車にほぼフルベットし、EV・PHVを明らかに軽視していました。それはホンダも同様でした。

エンジン主体の部品の擦り合わせで圧倒的な優位に立っていた日本勢は、モーターと電池で走るEVが普及することは避けたかったという説が有力です。それは結果としてCASE、すなわち車を含めた社会インフラのデジタル化に出遅れる原因となりました。

2010年当時、私の勤めていたフィリピンに本部のあるアジア開発銀行は、日産リーフに触発され、アジア新興国でEVの普及を促進するプロジェクトを手がけていました。そこで、私は日産リーフの担当者をフィリピンにお招きして、途上国関係者と引き合わせていました。

その時に日産の開発の方から伺ったのですが、日本国内でニチコンと組んでV2Hの商用化を図ったら、某クラスターから「電気が汚れる」(恐らく系統管理に支障を来たすという意味でしょう)として認められなかったそうです。

まだ東日本大震災前の話です。あの時認められていれば、東日本大震災に伴う大停電で本領発揮して、家庭に明かりを灯すことが証明され、今以上にEVは日本発のデジタルエコノミーコンテンツとして大きく普及していたのかも知れません。これこそ、電力+自動車+住宅のCASEだったのにです。それはテスラや中国EV勢が現れるずっと前の話です。欧州勢はフォルクスワーゲンのデータ不正が発覚する前でディーゼル車にベットしていました。

2010年時点で日産リーフには携帯電話が車載されていて、携帯無線で日産本社のメインサーバー・データベースと繋がっていて、充電情報などもリアルタイムで管理していたのです。まさにCASEですが電力システムと接合できない以上宝の持ち腐れでした。ここでV2Hが実現していれば世界の勢力地図は大きく変わっていたでしょう。

その後、車単体で売るしかない、日産は苦戦、トヨタ・ホンダは追従せず、我が国のモビリティ・電力セクターのデジタル化は欧米・中国に遅れをとってしまいました。

さて、V2Hがようやく実用化された今、次の課題はV2Gすなわち車載用蓄電池のVPP化です。これも計量法等厄介な問題があって、高圧では認められている需要家から系統への逆潮流が家庭用の低圧では認められておらず、未だ実現していないという課題を抱えていて、この分野で欧米に抜かされかけています。

もう何年も前から低圧VPPは国のプロジェクト化しているのですが、そこに社運をかけていた某IT大手企業は待ちきれずにチーム縮小の憂き目にあっています。これがその会社の迷走の遠因となったと言っても過言ではありません。

もちろん当事者のお立場、各論でのジレンマ・お悩みは理解できるのですが、自動車+電力のCASEで日本が負けずに、デジタルエコノミーの世界潮流に乗り遅れぬよう、大所高所に立った当局の英断を期待します。

酒井 直樹

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酒井 直樹
株式会社電力シェアリング代表

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