4年ぶりの父娘対面…大塚家具と匠大塚の和解などありえない(と思う)

山口 利昭

4月26日、4年ぶりに父(匠大塚会長)と娘(大塚家具社長)が対面した様子から、マスコミは「父娘の和解進展か?」と報じています。私も対面の様子をニュースで拝見しましたが、大塚家具の社長さんの笑顔とは裏腹に、対面の際、父である勝久氏は表情を変えませんでしたね。

笑顔は同伴されていた大塚家具関係者の方のほうに少しだけ向けていました。これを契機に、マスコミも含めて、関係者の多くは父と娘の再会とビジネス上の和解を望む声が上がっています。

大塚勝久氏(匠大塚HP)久美子氏(大塚家具HP):編集部

私も娘を持つ親として(?)和解してほしいなア…とも思うのですが、とてもじゃないけどビジネスとしての大塚家具と匠大塚の和解はありえないと考えています。6年前に発生した紛争は、親族だけでなく、多くの社員の人生を変えました。大きなリスクを背負いながら、社員はどっちについていくべきか悩み、選択に至ったわけです。

本家に残った社員も、父とともに新たな会社に移った社員も、おそらく現状を受け入れて生活を送っておられると思います。中には見切りをつけて退職された方もいらっしゃるのではないかと。そういった状況の中で一組の親子の関係解消といった事情によってビジネスを変えるというのは、双方の社員の気持ちを考えると到底むずかしい。都心に一号店を構え、「さあ、これからだ」といった気持ちの匠大塚社員の面前ならばなおさらです。あの対面の際の勝久氏の表情は、そういった組織の事情をそのまま映し出していたと思います。

5月9日の文春オンラインのニュースでは、勝久氏自身も「会社が一緒になることはむずかしい」とインタビューに回答しておられます。週刊文春5月16日号の関連記事も読みましたが、大塚家具社長の実弟(匠大塚社長)の方が「久美子さん」という呼び方でインタビューに応じているのが印象的でした。

資産管理会社を訴訟に巻き込み、さらには本家大塚家具の委任状争奪戦にまで至った騒動を経験すれば、親族の間でも和解はむずかしいようです。ビジネスの上では到底和解が困難だとすれば、あとは誰にも気づかれないところで(ひっそりと)父娘での個人的な仲直りができればいいな(でもそれをマスコミは報じてほしくないな…)と、個人的には願うところです。

山口 利昭 山口利昭法律事務所代表弁護士
大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(1990年登録  42期)。IPO支援、内部統制システム構築支援、企業会計関連、コンプライアンス体制整備、不正検査業務、独立第三者委員会委員、社外取締役、社外監査役、内部通報制度における外部窓口業務など数々の企業法務を手がける。ニッセンホールディングス、大東建託株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を歴任。大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)社外監査役(2018年4月~)。事務所HP


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2019年5月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。