余命3ヶ月と言われて目の前が真っ暗。どうすればいいの?

2019年05月15日 06:00

Photos by K.Bito

「がんに立ち向かうにはどうすればいいか?」 健康なときにはなかなか意識しないこの問題は、 いざがん告知を受けたとき、あるいはがん治療をスタートしてからも、 患者やその家族を大いに悩ませる。 そして、悩み抜いた末に「孤独」におちいってしまう人も少なくない。

今回は『孤独を克服するがん治療〜患者と家族のための心の処方箋〜』(サンライズパブリッシング)を紹介したい。著者は、消化器内科・腫瘍内科医師の押川勝太郎さん。抗がん剤治療と緩和療法が専門。2002年より宮崎大学附属病院第一内科にて消化器がん抗がん剤治療部門を立ち上げる。09年から宮崎県全体を対象とした患者会を設立し、現在NPO法人宮崎がん共同勉強会理事長の職責にある。

■余命宣告というのは不確かなもの

余命宣告を受けてショックを受けない人はいない。しかし、私たちは余命宣告の正しい意味を理解していない。押川さんは、余命宣告というのは不確かなものだとしている。

「理由として挙げられるのは、『余命』という概念そのものへの誤解です。おそらく多くの方は『ある病気の、ある進行度での平均寿命』というイメージを持たれているのではないでしょうか。たとえば、『卵巣がんのステージⅣでこの状態なら、平均的な余命は3ヶ月』という感じです。しかし、本来の意味はまったく異なります」(押川さん)

書籍より引用

「医学的に言うと、余命は『生存期間中央値』と混同してしまうケースが多いのです。注目していただきたいのは、『平均値』ではなく『中央値』という点です。簡単にご説明すると、ある病気の患者さんが100人いたとして、そのうち50番目に亡くなった患者さんの生存期間を『生存期間中央値』といいます」(同)

つまり、51番目以降の人は半年後、1年後に亡くなる可能性もある。新薬の登場などにより、生存期間が大幅に延びる可能性もある。それでもこの説明では、「余命3か月」ということになってしまうのである。

■「中央値」と「余命」は異なる

「中央値」を代表的な「余命」として説明してしまうことについて、押川さんは次のように解説をする。生存曲線のカーブが「平均的な寿命」というものは存在しないと。

「生存曲線のカーブが、『平均的な寿命』というものは存在しないのです。つまり『可能性』を示しているに過ぎません。実際のところ、『余命宣告の7割は外れる』という論文も発表されています。余命宣告はあくまで参考程度に留め、生きる希望を失わないことが大切です。見方を変えれば余命宣告にもいいところがあります」(押川さん)

「不確かではあれど、生の締切を意識することで、1日1日を大切に生きられるようになるのです。おそらく、健康なうちから人生の締切を意識して生きる人はほとんどいないでしょう。漠然と『平均寿命までは生きられる』と考え、未来があるのを当たり前のようにとらえていると思います」(同)

余命宣告を受けた方にとっては、1日先の未来もありがたいものになる。貴重な日々を悔いなく過ごすべく「今の自分にできること」を懸命にするようになると、押川さんは言う。

「家族と濃密な時間を過ごすなど、価値ある毎日を過ごすかもしれません。きっかけと考えれば、余命を意識することは、決して悪いことではありません。がん患者の方々にとって大切なのは『物事の良い面を見出すこと』です。ネガティブな面にとらわれて悩んでいるだけでは、貴重な日々を無為に過すことになってしまいます」(押川さん)

■がん患者と家族にとって必携の一冊

「孤独」なままでがんに立ち向かうことは難しい。病院、主治医、患者会、支えてくれる人たち――さまざまな存在とのつながりが、 がん患者に希望を与えてくれる。5つのシチュエーション別に詳細な解説がされているのでわかりやすい。

本書では、がん患者やその家族から寄せられる疑問、 あるいは医師の目から見た「がん患者が抱えやすい悩み」に対してアドバイスがされている。がん治療の実情、誤解されがちな医療のトピックスにも触れつつ、「孤独」から抜け出すための「心の処方箋」を詰め込んだ、 がん患者とその家族にとって必携の一冊である。

尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※筆者12冊目となる『波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)を上梓しました。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
尾藤 克之
コラムニスト、著述家、明治大学サービス創新研究所研究員

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑