丸山氏の処分は議員辞職ではなく「丸刈穂高」でよい

2019年05月14日 11:40

日本維新の会の丸山穂高衆議院議員(大阪19区)が、国後島へのビザなし交流の訪問団に参加した際、元島民の男性に「戦争でこの島を取り戻すのは賛成ですか?反対ですか?」と尋ねたことが波紋を呼んでいる。

ANNニュースより

丸山氏は発言を撤回して謝罪したが、左派の野党やメディアなどからは議員辞職を要求する声まで出ているようだ。酒にも酔っていたといい、数年前に酒の席でけんか騒ぎを起こして党に誓約した「禁酒」を破ったことも含めて、国会議員の発言として軽率だったのは間違いないが、彼の進退について、ありきたりな国内の論理で決めてしまうことにいささか違和感はある。

まず、発言の中身だが、明石市長の「暴言」が問題になった際にネットで地元紙のネット記事が前後のやりとりを詳報し、マスコミの初報でもたらされた世間の印象が変わった経緯もある。この日本テレビなどのように「丸山氏は『戦争で取られた島は戦争で取り返すしかない』という趣旨の発言をしていた」などと報じているが、前後の流れも公表されているものについて確認した上で評価しておきたいところだ。そこでテレ朝が、訪問団の同行記者が録音していた内容を一部報じているのを引いてみる。

丸山:「戦争でこの島を取り戻すのは賛成ですか?反対ですか?」
元島民:「戦争で?」
丸山:「ロシアが混乱している時に取り返すのはOKですか?」
元島民:「戦争なんて言葉は使いたくないです。使いたくない」
丸山:「でも取り返せないですよね?」
元島民:「いや、戦争はすべきではない」
丸山:「戦争しないとどうしようもなくないですか?」
元島民:「いや、戦争は必要ないです」

発言の前段がない上、読み方によっては、けしかけているように見えるが、ここだけを読む限り、ロシアに戦争を仕掛けるとまでは断定はしていない。もちろん、国会議員として発言が不穏当・不適切ではあるが、日本が戦争に敗れたから、敵国に武力を行使されて領土を奪われたのは紛れもない事実だ。そして戦後70年、外交交渉で地道にやってきても現時点で北方四島はロシアが実効支配している。

それに、核保有国で近年も近隣諸国に侵攻してきたロシアに、長らく戦争から遠ざかってきた日本で戦争を仕掛けて領土を取り戻せるなどと、さすがに丸山氏も本気で考えてはおるまい。

つまり、国際政治や外交は軍事力や経済力に裏打ちされたパワーゲームであるわけだから(国会議員の立場として言うべきかの問題はあっても)一つの「思考実験」として考えれば、彼が問いかけた領土問題の「本質」についてまで議論から破却しようとする風潮にはいささか違和感はある。「戦後国際秩序への挑戦」などと仰々しいことをいうメディア関係者もいたが、丸山氏もそこまで愚かではないだろうし、少なくとも日本政府の見解が北方4島を不法占拠としているのであれば、その現状をも「戦後国際秩序」と建前でも認めてしまうのもおかしい。

いずれにせよ、丸山氏がこれで議員辞職をすれば、国内的にはカタルシスになっても、ロシアから見れば、「日本人は武力で取り返すオプションは完全に捨てた」と、思われはしまいか。力がなければ舐められることの方が危険だ。中国が国家戦略として狙っている尖閣への影響も出てくる。

共同通信によると、今年1月にロシア軍の元高官が、軍事誌に、日本は領土的野心を捨てておらず日ロの紛争時にはサハリンと北方領土を急襲する可能性があるとする論文を載せてロシア国内で波紋を呼んでいたそうだが、裏を返せば、日本が「抜かずの刀」を持って見せていることの意味を示唆している。もし、野党の、それも要職にあるわけでもない若手議員が騒いだくらいで辞めさせるのは、それこそ日本が舐められてしまう。

毛利家の家紋(Wikipedia)

関ヶ原に敗れた毛利家は、江戸期260年、毎年の正月、家臣が「今年は徳川を討つべきか」と藩主に伺い、藩主が「いや、時期尚早じゃ」と応える習わしをずっと継続していた(参照:萩ナビ)。幕藩体制が機能していた頃には、藩主も家臣も「伝統芸能」程度にしか思ってなかったかもしれないが、いざ幕末の一大政変で倒幕・維新の先陣を切れたのは、関ヶ原で敗れた「遺恨」を脈々と語り継いでいたからではないだろうか。

毛利家の儀式風に言うなら、北方四島や竹島の奪還は現実の国際政治と安全保障において、永遠に「時期尚早」だろう。憲法でも国際紛争の解決手段としての武力行使は禁じられている。しかし、対外的な武力だけでなく「領土を守る」という魂まで放棄してしまっていいのだろうか。抜かなくても刀を持つ姿勢は大事なのだ。

ただ、そうした世界基準の当たり前のことを言うと、すぐ「右翼」とかレッテルを貼るのは困ったことだ。日本の言論の貧困を思う。

とはいえ、丸山氏も軽率だったことは事実なので、頭を坊主にして反省の意を示し、「丸刈穂高」として、地元の有権者の前でお詫びするくらいの禊はしたほうが良い。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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