精神疾患の増加につれ、メンタルヘルス関連アプリも成長

GW明け、日本では5月病に悩まされている方も多いのないでしょうか。今年は空前の10連休だったこともあり、例年よりその症状は著しくなっている方もいらっしゃるかもしれません。どうぞご自愛下さい。

5月は、米国でもメンタルヘルス向上月間に位置付けられています。米国と言えば、オピオイド問題や自殺率の上昇など、精神疾患が増加中ですよね。米国薬物乱用精神保健管理局(SAMHSA、保険福祉省傘下)によれば、米国で過去1年間に精神疾患の症状を確認した18歳以上の成人は、2017年に前年比4.3%増の4,660万人と、成人全体の18.9%(前年は18.3%)に及びました。年齢別では最も多いのは、ジェネレーションZと一部ミレニアル世代にあたる18~25歳で25.8%、続いて26~49歳で22.2%、50歳以上は13.8%となります。特に18~25歳での上昇が極めて著しく、2008年以降で文句なしに最悪でした。

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(作成:My Big Apple NY)

若い世代で精神疾患者が増加している一因は、SNS普及に伴って機会が増える他人との比較というも。

精神疾患の増加は、世界的な流れでもあります。世界の精神医学をはじめ公衆衛生、神経化学の専門家28名が5大医学ジャーナル“ランセット”に連名でレポートを公表したところ、 世界経済は2010年から2030年の20年間、精神疾患の波及により16兆ドルの損失を被るというではありませんか。

レポートの共同執筆者で、ハーバード大学医学部のビクラム・パテル教授は、経済損失が単に医療サービス、医薬品、治療のコストといった直接的なものだけでなく、社会福祉や教育、法や秩序など間接的な分野に広がるといいます。また同氏は、過去25年間で精神疾患は「劇的に増加した」と指摘。背景として、①高齢化、②思春期を超えた子供の生存率改善を挙げています。

こうして精神疾患が増えれば、治療法や対策も裾野が広がるというものです。例えば、患者の精神状態をフォローするアプリは足元で脚光を浴びており、自律神経やストレス度合いをスマホで測定するだけでなく、認知行動療法やアクセプタンス&コミットメント・セラピーといった心理療法を受けられるのですよ。米国での人気アプリは、こちらからご覧になれます。

一部では、成長産業として期待する声も聞かれます。業界見通しによれば、2019年のメンタルヘルス関連アプリ売上高は11.3億ドルだったところ、2024年には21億ドルで、年平均成長率は11%に達するのだとか。

問題は、データの取り扱いです。実は4月、が浮上しました。その数は、何と36の人気メンタル・ヘルス・アプリのうち29に及びますから、恐ろしい限り。便利になった世の中の代償が個人情報というのは、精神衛生上、よいわけありませんよね。

(カバー写真:Claudio Alvarado Solari/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年5月14日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。