大阪出張報告②&議員視察の意義

こんにちは、都議会議員(町田市選出)おくざわ高広です。

1月下旬に行った大阪出張について、報告ができておらず大変失礼しました。出張報告①として、社会全体で子どもを育てる朝ごはん屋さんという投稿をした際に、それは都議会の仕事ではないのではないか?といった指摘もあり、自分としても視察や意見交換、報告や情報発信について悩んでしまったのがその理由です。

ただ、ご相談を受けることが必ずしも都議会に関することではないので、私自身の知見は少しでも広げておくべきであること、その知見を活かせる可能性を自分の中に閉じ込めておくのはもったいないこと、という観点から、今後は益々視察・意見交換→情報発信の流れを強化していこうと考えるに至りました。

話を戻しまして、1月下旬に視察・意見交換した目的は、

①社会全体で子どもを育てていく意味(朝ごはん屋さんやインクルーシブ教育の現場)

②維新改革の現場(後述)

③万博やIRによって臨海部がどのように変化しているのか(民間事業者との意見交換のため、色々と考えがまとまり次第改めて投稿します)

の3点でした。本日は、②について、元・大阪市東淀川区長の金谷一郎さんにお話を伺いました。以下、概要です。

1.文化施設の独法化について

・指定管理方式の弊害として、サービス低下、来場客の固定化などを招いていた。
→何のための文化施設なのか、という本質的な議論が必要であり、結果として独法化へと動いた。

・独法化により、各施設の横連携と一元的な事務、広報が可能になったことで、新たな客層へのアプローチが期待される。
→キュレーターの存在がカギであるとの認識のもと、人事面での工夫も求められている。
→インバウンド対策(ナイトミュージアム、回遊性高めるフリーパスなど)が成功のカギであると考えている。

・現在の運営主体からの抵抗(民営化への抵抗)は当然あったが、様々な手法を横並びに比較検討した上での決断であった。

東京都においては、都政改革本部の提言により、文化施設の運営形態に関する見直しが図られる予定です。元々のスケジュールでは2019年3月末とのことでしたが、結論を出すのが遅れています。文化施設を維持していくためには、お金がかかります。だからこそ、その資源を最大限に活用しなければならないと私は考えており、大阪市の先行事例から学んでいく所存です。

2.市立病院の独法化

・公立病院は医療のセーフティネットであるが、赤字でもOKではない。
→職員意識、住民意識を抜本的に変えることが必要であったし、その意味では成功していると思う。

・東京では、民間病院で受けられない患者を公立病院への転院させることが難しくなることを不安視する声が聞こえるそうだが、在宅医療やかかりつけ医の推奨をしている団体は反対しない。しかし、反対があるなら不安を払しょくする説明が必要であるのは間違いなく、それは政治の責任の1つともいえる。

東京都においては、都立病院の将来にわたって持続的な運営を確保するために、一年ほど前から独法化も含めた運営形態の議論が行われています。先日は、2009年に独法化した東京都健康長寿医療センターを視察しましたが、こうした先行事例からメリットデメリットを冷静に捉え、賛否の判断と共に情報発信、説明責任を果たしていけるように努めます。

3.地下鉄の民営化

・民営化には、一つ一つの路線について公共交通の役割という本質的な議論が必要。

・交通セーフティネットと稼ぐことの両立は可能
→大阪市では京阪電車の副社長が交通局長に就任したことで大きく流れが変わったと記憶している。

・労働組合の抵抗もあったが、雇用を守ることを前提に交渉に入ったことで議論する環境が整った。

・高齢者や障害者の足をどうするのかという批判(議会圧力・住民圧力)、「採算性への批判」が巻き起こった。
→全体が儲けているから一部では赤字でも良いとは考えない。それはいずれ破綻する。

・最も問題だったのは、基準がなかったこと。それでは議会圧力に屈してしまう。
→半径600メートル以内にバス停が無いという状況はダメだという基準をつくった

・バスを走らせるのとタクシー補助するのとどちらが安いのかという客観的かつ冷静な判断も求められた。

東京都では、主に23区内を走る都営バスが長年赤字経営であったが、2024年頃から黒字化するとの報道があった一方で、多摩地域では将来的に交通空白地帯も生まれる可能性があります。また、都営地下鉄と東京メトロの一元化の議論や、東京メトロ株の売却益をどう活用するのかという議論が長く続いており、なかなか答えが出せずにいます。近いうちに東京都の将来の交通政策は変革期を迎えるとの考えの元、今は情報収集を続けているところです。

また、私たちのような少数会派の生きる道についてもご示唆頂きました。
・改革の方向性、議論の経過、ボトルネックとなっている部分を引き出す信頼関係を築くことが重要。
※職員の皆さんは、なぜ改革が進まないかをよく知っている(はず)
・ロジック、エビデンス、財源の確保策を示せば、行政は動く(はず)

以上、大阪出張報告②となりましたが、実は、現在羽田空港でこの投稿をしています。東京は世界の都市間競争において打ち勝つ、言い換えるならオンリーワンの存在価値を発揮していくことがより求められていると考えており、海外諸都市がどのような施策を打ち出しているのかに敏感でなければならないと考えています。都議会では、海外視察へ政務活動費を充当することはご法度(?)のようなので、私費での視察となりますが、都議会議員も積極的に海外に出るべきだと考えています。

今回は、シンガポールへの出張です。森記念財団の世界都市ランキングにおいて東京に次ぐ第四位のシンガポールにおいて、教育、ビジネススタートアップ、観光施策(IR・ナイトタイムエコノミー)を中心に学んでくることになります。また改めてご報告しますので、お楽しみに~!


編集部より:この記事は、東京都議会議員、奥澤高広氏(町田市選出、無所属・東京みらい)のブログ2019年5月14日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおくざわ高広 公式ブログ『「聴く」から始まる「東京大改革」』をご覧ください。