日本企業が多く進出するメキシコ・グアナフアト州で殺人事件が急増

2019年05月16日 06:00

世界で最も殺人事件が多発している国のひとつがメキシコである。その一番の要因が麻薬組織カルテル同士の戦いと、カルテルの犯罪横行を報じるジャーナリストや彼らの思い通りにならない政治家が暗殺されるなどといったことが理由である。

最近の懸念材料として注目に値するのはメキシコに進出している日本の企業が多く集中しているグアナフアト(Guanajuato)州で犯罪が急増しているという現状である。

グアナファト州(Wikipedia:編集部)

2006年からグアナフアト州に進出した日系企業は110社と現地電子紙『Kokó México』(2018年11月付)が報じている。ホンダ、マツダそして今年はトヨタといった自動車メーカーの進出を柱にして、それに関連した部品メーカーなどが現地の日系企業を構成している。同州での日系企業の進出は、同紙によると、現地人4万96人の雇用に繋がったと報じている。

ところが、最近の現地紙で盛んに取り上げられるようになったのは、グアナフアト州での殺人事件が多発しているということなのである。メキシコの代表紙のひとつ『excelsior』(2018年11月10日付)は2015年から2018年までにグアナフアト州で殺人が400%増加したことを報じた。特に、次の6都市での殺害が同州の54%を占めることを伝えている。レオン(13.4%)、イラプアト(13.1%)、サラマンカ(9.6%)、セラヤ(7.4%)、シラオ(5.2%)、ペンハモ(5.0%)となっている。(参照:excelsior.com.mx

今年2月10日付で現地紙『CORREO』(電子版)がメキシコの2012年から2018年の間に殺害が最も増加した比率の高い20都市をランキングしている中にグアナフアト州から6都市が選ばれたのである。そしてその増加率は4位に位置していると報じた。

また3月1日付の現地紙『La Razón』の電子版は2017年10月から2019年1月までに3130人が暗殺されたと報じた。それが急激に増加したことを示すのに、2016年6月から2017年9月までだと1380人が暗殺されたことを取り上げている。

ではグアナフアト州でどうして殺人事件が増加したのかという理由を現地の数紙が取り上げているが、それを以下に要約しよう。

特にカルテルのハリスコ・ヌエヴァ・ヘネラシオン(Jarisco Nueva  Generación)とサンタ・ロサ・デ・リマ(Santa Rosa de Lima)同士の縄張り争いが主因であるという。前者はカルテルシナロアの分派だったのが独立したもので、もっとも凶暴なカルテルのひとつだとされている。後者は2018年に結成された地元グアナフアト州のカルテルである。

同州で彼らが儲けのネタとしている犯罪というのは石油パイプラインに穴を開けて石油を抽出、列車強盗、路上での強奪、精油所の爆破といった犯罪である。同州には700本の石油パイプラインが敷かれているという。これまで1500か所でパイプラインに穴が開けられたのが記録されているそうだ。これらの犯罪をこの二つのカルテルが儲けるために競っているというわけである。

また、強奪では10万人に対して993.18件の発生率だという。全国平均は208.02件だとされている。
(参照:razon.comexcelsior.com

同州にはこの二つのカルテル以外にも、ラ・ファミリア・ミチョアカナ(La Familia Michoacana)、ロス・カバリェロス・テンプラリオス(Los Caballeros Templarios)、ロス・セタス(Los Zatas)といったカルテルも存在して犯罪を犯している。そのような中でも、同州ではハリスコ・ヌエヴァ・ヘネラシオンが幅を利かしている。組織的にもしっかりしており弁護士や金融専門家も組織の一員となっている。(参照:proceso.com

昨年12月に大統領に就任したアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(アムロ)も犯罪の減少にと軍隊と警察を組み合わせたような新しい組織の編成も一つの構想としてもっている。カルテルが蔓延っているのが理由で外国から企業がメキシコへの進出や投資を敬遠しているという事実も十分にある。これまでカルテルが横行するようになってから4人の大統領がその撲滅に努めたが、逆にカルテルの活動がより活発になっている。

現在経済的に成長しているグアナフアト州ではあるが、犯罪が増加して外国企業の進出を図るためのこれまでの努力が無駄にならないように犯罪の取り締まりの強化を施している。同州政府は海兵隊を含む軍隊、国家警備隊らの協力を得て犯罪に対して恐れることなく厳しく法の適用を実施して行くとしている。(参照:razon.com

同州には1995年にゼネラルモーターズが進出して以来、2012年からインフラの整備を行って外国からの企業の誘致に努めて来た。その為に、23の工場団地を建設して既に存在していた8つの工場団地を加えて現在31の工場団地を用意している。その為に州政府はこれまで6億7740万ドル(745億円)の投資をして来たそうだ。(参照:elsoldeirapuato.com

犯罪の増加によってこれまで同州の産業発展に注いで来た努力が無駄の泡にならないように州政府そして各市政もそれに恐れることなく積極的な取り組みをしていく決意を表明している。その決意は同州の観光業の後退にならないことにも繋がっている。(参照:elsoldeorizaba.comrazon.com

白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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