囁かれる衆参ダブル選挙の可能性はあるのか?

参議院選挙は7月4日公示、21日の投票の方向で調整が進んでいるようですが、最近、衆議院も解散する衆参同時選挙が囁かれています。私の素直な一言は、大義名分は?であります。

官邸サイトより:編集部

衆議院解散は首相の専権事項である、というのはアメリカの大統領令のようなものなのかもしれませんが、解散には税金を思いっきり使わねばなりません。その額、衆議院でざっくり600億円ぐらいかかります。専権事項だからと言って600億円使っていいという専権は十分な理由がない限り、疑念が浮かぶでしょう。

カナダの新聞などを見ていると税の使い方について非常に厳しい論調のコメントが何ページにもわたり記載されることもありますが、日本の新聞は論説が海外の新聞に比べはるかに少なく、切り口に物足りなさを感じます。

さて、衆議院解散のささやきとはまず、萩生田光一幹事長代行が景気動向次第では消費税の延期もありうるという趣旨の発言を4月18日にしました。これを読み込んだ筋がいや、これはそれを理由にした衆議院解散ではないか、と見立てたことが始まりでした。

次いで訪米以降、急速に有力な次期総理候補として取りざたされている菅官房長官が「不信任案提出は時の政権が衆院解散を行う大義になるか」との質問に対し、「それは当然なるんじゃないでしょうか」と語ったことで更に解散があり得るのか、という見方を広げることになりました。

では実際に本当にあり得るのか、でありますが、95%ないと思います。理由はG20が6月28,29日の日程で入っており、仮に7月4日の参議院の公示に合わるならあまりにも厳しい日程だからであります。つまり、物理的な難しさが一つ。

二つ目に荻生田氏の真の意味は「消費税増税を止めるなら国民に信を問わねばならない」というものであり、その判断の基準に6月の企業短期経済観測調査(短観)を一例として提示しています。6月の短観は7月1日に出ますが、それをみて消費税延期するから解散するとの即決はまずありえないでしょう。

この点については私のブログで消費税増税を今回止める理由はない、と申し上げておりますので個人的には荻生田氏の論拠となる解散説自体が極めてスリムなチャンスではないかと思います。

三つ目の野党が提出するであろう恒常化した不信任案提出によって直ちに「じゃあ、国民に信を問うか?」という行為にもならないでしょう。むしろ、これは菅官房長官が野党に放った牽制球で、何でも不信任を出せばいいというものではない、と言いたかったのではないでしょうか?

更には令和になったから新しくリフレッシュしたいなどというヨミもありますが、首相をはじめ、政治家の方がそこまで暇だとは思いません。例えば首相が憲法改正をどうしてもやるから国民の信を問う、ということであればその内容がもっと煮詰まってからやるべきで現時点で体系的な意見が形成されていないわけですから、劇場型解散をやる話でもありません。

個人的には安倍首相の任期中に衆議院解散に打って出るのはあと一度だけチャンスがあると思います。そしてそれは憲法改正を問うピンポイント型の解散を考えていると思います。ならば、それまでは解散というエースのカードは切るはずがない、と私は思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年5月23日の記事より転載させていただきました。