ファイナンスリースからオペレーティングリースへ

航空会社が航空機を購入するとき、普通に考えれば、銀行から融資を受けて、その資金で航空機を購入するか、より現実的には、同等の経済効果をもたらすファイナンスリースを用いると思われる。ファイナンスリースは、事実上、リース物件を担保とした融資だから、航空会社の立場は、航空機を所有し、それを担保に供して銀行から融資を受けるのと同じになる。つまり、カネを借りるのである。

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これに対して、オペレーティングリースは、リース会社が物件を所有し、その物件を貸す仕組みである。つまり、ここでは航空会社はモノを借りることになる。従って、カネを借りるかモノを借りるかという選択の問題は、事実上、ファイナンスリースかオペレーティングリースかという選択の問題と同じになる。

両者の決定的な違いは、いうまでもなくモノの所有権の所在であり、要は危険負担の所在である。つまり、オペレーティングリースの場合、所有権は貸す側のリース会社にあるから、借りる側の企業は、モノに関する危険を負担しなくてよいことになって、そこに借りる側の利益ができる。

危険は、事前に制御できる限り、危険ではない。事故による破損や滅失などの危険は損害保険で対応でき、使用に伴う自然な損耗や劣化も使用実績に基づいて経験的に推計可能だから、計画的に償却することで対応できる。故に、これらは危険ではない。

モノに関する危険は付保できない危険であり、予測を超えた速度による劣化だから、技術革新による陳腐化の危険が最大のものである。借りる側として、この陳腐化の危険を回避できることがオペレーティングリースを利用する大きな利益なのである。

借りる側にとって、もう一つの大きな利益は財務リスクの削減である。これは同時に貸す側にとっても与信リスクの削減として大きな利益になる。空運業で航空機のオペレーティングリースが発達しているのは偶然ではないのである。

世界的な規制緩和は、価格競争を激化させ、航空会社の収益を不安定なものにしている。その結果、航空会社には財務体質の弱いところが少なくなく、常時、世界のどこかに経営危機に陥る企業が存在するというのが現状である。

そうした環境下では、資金調達は容易ではないが、熾烈な競争に勝つためにこそ新鋭機の導入を進めなければならないわけだから、その購入資金の調達は重要な経営課題となる。そこで結果としてオペレーティングリースが普及することになったわけである。

借りる側の立場からいえば、カネは借りられないのでモノを借りるということであり、貸す側の立場からいえば、カネは貸せないのでモノを貸すということであって、これがオペレーティングリースの本質なのである。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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