国民主権下で「不敬」は成立しない 〜「読み間違い」騒動を考える

2019年05月30日 06:00

国民主権下で「不敬」は成立しない

大日本帝国では天皇・皇族を防御するものとして「不敬罪」が存在した。周知のとおり不敬罪は日本政府の反対にも関わらず占領下、GHQの指示によって廃止され現在に至るまで「復活」の機運もない。

宮内庁サイトより:編集部

天皇は憲法に規定された存在であり「国民統合の象徴」としての役割を果たすためにも一定の防御手段は必要であり、現在でも一応、天皇は刑法で規定された名誉棄損・侮辱罪を通じて保護されている。

両罪が親告罪である限り天皇が適切に防御されるとはとても思えないが、兎にも角にも天皇を防御するものとして「不敬」の概念はない。

「不敬」は字句を素直に読めばと「礼を失する」とか「礼を欠く」という意味だが、現在の日本で「不敬」を素直に読む者はいないだろう。

戦後の日本人にとって「不敬」とは大日本帝国時代の概念であり、それは天皇・皇族に対する振舞いである。

読者も思い返してみてはどうか。

会社の上司や目上の人、年長者に対して失礼な振舞いをした者を「不敬だ」と指摘する者はいないのではないか。一般市民同士のやり取りで「不敬」の用語は出て来ないはずである。

「不敬」は大日本帝国時代の天皇・皇族を防御するための概念であり大日本帝国時代の概念である以上、天皇を「君主」国民を「臣民」と捉える思想が含まれていたと考えるの自然である。

要するに「不敬」とは主従関係を前提とした概念である。

だから「不敬」は国民主権を宣言した日本国憲法下の日本では成立しないと言えよう。

誤解がないよう強調しておきたいが国民主権下の日本で「不敬」は成立しないが、天皇は無防備であるべきだと言いたいわけではない。むしろ天皇はその歴史的性格上、積極的に防御されるべき存在である。

しかし、それは主従関係を前提にした「不敬」ではなく「国民統合の象徴」としての観点からである。これについて筆者は既に記した。

天皇は正当に解釈されているか?

不敬罪が廃止され70年以上経つが「不敬」という用語は「死語」になっていない。

大日本帝国時代と同様に「政治利用」しようとする者がいる。

「右翼活動家」田岡俊次の誕生か

安倍首相が4月30日の「退位礼正殿の儀」で「国民代表の辞」を読み間違えたことがネット上でちょっとした話題になっている。これについてはアゴラでも既に触れられている。

首相官邸YouTubeより:編集部

安倍総理の滑舌を笑う人(田村和広氏)

記事では「あるジャーナリスト」が「不敬の極み。あきれた失言」と動画サイトで問題視したと紹介されているが、この「あるジャーナリスト」とは元朝日新聞編集委員の田岡俊次氏であり、氏もこのことを隠そうとしない。

已む」読めなかった? 安倍首相が歴史的儀式で驚きの大失言(AERA.dot)

当然、我々は田岡氏に問わなくてならない。

国民主権下の日本で「不敬」は成立するのか。田岡氏の考える「不敬」とは何なのか。「あきれた失言」と評するが、ではこの「失言」で主権者たる国民はどんな打撃を受けるのかと。

今回、安倍首相は「国民代表」の立場で祝辞を述べたわけだが、では「天皇」と「国民代表」の間で「読み間違い」を含めた「ただならぬ雰囲気」が成立した場合、田岡氏は「国民代表」ではなく天皇の側に立つのだろうか。そうだとしたら大変なことである。

田岡氏は肩書を「ジャーナリスト」から「右翼活動家」に改めることになる。

一体何を見せられているのか

田岡俊次氏(AERA.dotより)

田岡氏は大日本帝国時代の「全知全能と称される露国皇帝」を「無知無能と称される露国皇帝」と記した読売新聞社説や1631年にイギリスで起きた「not」の欠落により「汝姦淫すべからず」を「姦淫すべし」と読める聖書の誤植の例を挙げて、安倍首相の「読み間違い」を批判している(前出のAERA.dot)。

前者については常識的に考えれば新聞の誤植を受けてまず律するのは新聞記者だろう。田岡氏は朝日新聞に所属していたのだから朝日新聞の「誤植」「誤報」について関心を持つべきである。

例えば朝日新聞の従軍慰安婦の誤報について田岡氏はどう考えているのだろうか

朝日新聞の従軍慰安婦の誤報は日韓関係を破壊し国際社会における日本と日本人の立場を著しく貶めたものである。今回の安倍首相の「読み間違い」とは比較にならないほどの大問題である。

後者についても聖書の出版元の主は「投獄され獄死した」と紹介している。

400年近く前の外国の歴史上の事件に過ぎないとはいえ、誤植で「獄死」したとは尋常ではない。完全な言論弾圧事件である。ジャーナリストの肩書を持つ者が得意になって引用すべきではない。

それにしても今回の騒動ほど「反安倍」の低次元・軽薄さを示したものはない。

我々国民は一体何を見せられているのか。

高山 貴男(たかやま たかお)地方公務員

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑