離島防衛にも貢献する漁業のP2Pビジネス:再エネと共に地域活性を

2019年05月31日 06:00

私は電力シェアリングというベンチャーを3年前に立ち上げて、周囲の人々の支援を得て今期黒字化することができました。先日、20年前のシカゴ大学MBA時代の旧友、田中彰さんと久しぶりに夕食を共にしました。彼は私よりもずっと前にオクトフォースマネージメントを起業し、大きな成功を収めています。

改めて田中さんと確認し合ったのですが、起業に必要なことは全て20年前にシカゴ大学で学んだと言っても過言ではありません。沢山のことを学んだのですが、最重要な二つのことは、時代に合ったビジネスの仕組みを作ることと取引先とのウインウインの関係を構築することです。田中さんは鮮魚で、私は電力でこれを実践しています。その構造原理はほとんど一緒です。

そして鮮魚と電力はよく似ています。一つは、貯められないこと。二つ目はそれ故に、中央集権的なピラミッド型の流通構造で大量に捌く必要があるという事です。

皆さんは、鮮魚の伝統的な流通システムをご存知でしょうか。それは、昔は日本橋、今は築地からの豊洲市場を頂点とする江戸時代からほとんど変わっていない重層的なシステムです。

写真AC:編集部

多くの漁師さんは、夜明け前に海に出て、朝日が昇る頃には浜に水揚げします。全国各地の港にある魚市場でせりにかけられ、買い付けた事業者が豊洲にある倉庫に運び入れます。

例えば、伊豆半島の漁港でアジを水揚げしたとします。トラックで運べば遅くとも午前10時には豊洲に着きます。問題はその時点で、その日の豊洲市場でのセリは終わってしまっているということです。なので、翌日の早朝のセリまで待たなければならず、豊洲近辺の倉庫でほぼ1日寝かされる事になります。魚の鮮度は落ちるし、倉庫代はかさむしこれは誰も得をしないタイムスケジュールです。

何故こうなるかというと、江戸時代のしきたりを守っているからです。江戸時代には、浜から日本橋の市場まで人間の足で運ばなければならなかったのでそれが合理的でした。しかし、現代の状況には合っていないのは明らかです。

豊洲でセリにかけるのは中央魚類、東都水産など伝統ある大卸と呼ばれる7社です。それを落とすのは、488社の仲卸業者です。落とした魚はターレ等でそれぞれの販売ブースに運びます。そこに魚屋さんや飲食店の料理人が買いに訪れ、店頭に並ぶのはお昼過ぎで、消費者の口に入るのは夕食になります。つまり、ほぼ2日間を要するわけです。

電力では、遠隔地に置かれた大規模発電所から、電圧を上げて、高圧送電線で何百キロを運び、徐々に電圧を落として末端の電柱まで全国津々浦々に同じ規格で電気をお届けするユニバーサルサービスがそれに当たります。浜の魚市場が発電所、大卸が送電網、仲卸が配電網、魚屋さんが小売り業と考えれば両者はとても似ています。

もう一つの問題は、このような物流システムに乗せるには大量に安定的に水揚げが見込まれる規格品の魚種に限定されるということです。大量漁獲・大量輸送・大量消費が基本原則です。すると、壱岐対馬や五島列島など離島で獲れる魚は、新鮮で美味しいのですが、このようなシステムに乗れずに、値段がつかず、漁師の収入が立たず、地元の経済が回らなくなり、人口減少が深刻化しています。

こうした現状を見て、田中さんは、新しいビジネスの構造を思いつきます。それは、魚のP2P取引です。ITを駆使して、多品種・少量漁獲の魚を市場価格より高い値段で長期間安定的に買い付け、その日のうちに都会に送るロジスティクスを確立します。しかしそれだけでは十分ではありません。買い付けた魚を安定的に購入してくれる緊密先の確保が必要になります。ここで、田中さんはお互いウインウインの関係を持てるような顧客を開拓しました。

さらに、自社で、離島で取れた新鮮な魚をその日のうちに提供する居酒屋「離島のテーブル」を新橋に立ち上げます。そこでは、アジやカサゴ、イサキ、伊勢エビ、ウニといった海産物、壱岐牛や五島牛など畜産物、コメやトマト、イチゴなど農産物を五島市と壱岐市内の海産物卸や青果卸、農協などから仕入れて提供します。

安定供給が難しい食材も多いのですが、確保できた食材に応じたメニューを開発して対応するという発想の転換です。これで漁師さんは安定収入を確保できる、離島経済が活性化する、お客様も新鮮で美味しい「お任せ」食材を堪能出来る、そして田中さんの会社も儲かる、無駄のない食料安全保障にも通じる構造を作り上げたのです。ここで生産者と最終消費者は双方顔の見える形で繋がっています。私も五島で朝獲れの伊勢海老とウニを堪能しました。

さらに、「離島のテーブル」事業は2017年に施行された国境近くの離島の振興を図る有人国境離島法に基づく補助事業に採択され、人の安全保障として国土防衛にも貢献しているのです。

翻って、私は地方部で再生エネルギーで作られた電力を都会に送る、電力のP2P取引の構造をブロックチェーンを使った取引プラットフォームにより作り上げました。緊密先の分散型電力の販売者は、地方部の志の高い個人です。一方緊密先の最終消費者は電動モビリティシェアサービスの利用者です。

ここで、再生可能エネルギーの作り手と消費者は双方顔の見える形で繋がっています。エネルギーのほとんどを輸入に頼る我が国において、エネルギー自給率の向上は急務で、再生可能エネルギーがその重要な役割を担っていきます。特に油価の高い離島では再生可能エネルギーを使った電力の地産地消による経済の活性化が見込まれます。

このように関係者が皆豊かになる仕組みを作ることが、シェア経済の大宗であります。

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株式会社電力シェアリング代表 酒井直樹
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酒井 直樹
株式会社電力シェアリング代表

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