1ルピーも生み出さない日本企業の「100点主義」とは?

尾藤 克之

Photos by K.Bito

グーグル、マイクロソフト、ペプシコなど、インド人CEOが次々と誕生している。これからの日本人に本当に必要な「お金」と「働き方」のモデルとはなにか?

今回は、『お金儲けは「インド式」に学べ!』(ビジネス社)を紹介したい。著者は、公認会計士・税理士の野瀬大樹さん。ニューデリーにコンサルティング会社を設立。独立系会計士として、日本企業のインド進出支援、インド企業の日本進出をサポートする。

戦後、日本は製造業で世界にその存在感を示してきた。製造業の快進撃を支えてきたのが日本に何百年も前から根づく「職人意識」である。「100点主義」といえばわかりやすい。

「100点主義の世界では、常に百点満点のものを目指します。寸分の狂いもない完璧なものをつくります。この『100点主義』の思考が、世界に冠たるメイド・イン・ジャパン製品の数々を生み出したことは間違いありません。問題は、こうした『100点主義』が日本中を覆ってしまっていることです」(野瀬さん)

「品質に完璧が求められる製造業なら『100点主義』でもかまいません。ただ、日本人の生来の生来の”生真面目さ”がそうさせるのか、あるいはミスを怖れる”リスク回避主義”がそうさせるのか。あらゆるジャンル、場面で、『100点主義』が顔を出しがちなことは問題です。インドと比較すると改めて思い知らされます」(同)

生き馬の目を抜く途上国ビジネスの世界で、その意思決定の手続きに「100点主義」を取り入れていれば、当時、事業展開は周回遅れになってしまう。「石橋を叩く」ことも大事だが、何度も叩いているうちに、ライバルは先に橋を渡ってしまうだろう。そうなれば、必然的にビジネスパートナーの候補から除外されることになる。

野瀬さんによれば、「100点主義」は、どん欲に利益、お金を求めるインド人の富裕層には、まったく理解できないそうだ。日本から依頼されたチェックリストや工程表について、相手のインド人経営者に説明していると、ウンザリした顔で「その作業は1ルピーも生み出さないじゃないか」と言われてしまう。

本書には、大富豪も普通の会社員もインド人ならみんな知ってる非常識だけど極めて正しいビジネスルールが紹介されている。「会社の言いなり人生」にいますぐサヨナラ、「自分の行きたい道を行く人生」にいますぐナマステしよう。メディアでは報じられない、ナマのインド式「お金」と「働き方」のルールを堪能いただきたい。

[本書の評価]★★★(77点)

【評価のレべリング】
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
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尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)を上梓しました。