池上彰氏に引用文献の明記を望む

2019年06月01日 21:00

他者の研究成果を棄損するな

池上彰氏は「フリージャーナリスト」として、多くのテレビ局に登場し、多数の出版社からおびただしい数の著作物を出版しています。分かりやすく要点をついた新書などはベストセラーになり、増刷(重版)を重ねています。単独で森羅万象に取り組む活躍には感心します。

Wikipediaより:編集部

その一方で、池上氏は他の著作者の成果に対する「フリーライダー」(タダ乗り)との指摘があります。私は「池上彰氏は著作物で不可解な行為」(18年9月12日)を始め、何度かこの問題を取り上げました。著作権法の引用を規定をきちんと守っていないようだとの批判です。

政治経済、社会問題、国際情勢ついて要領のいい解説書が多く、私も時々、書店で購入します。最近、「おとなの教養2」(NHK出版新書、19年4月刊)を買いました。憲法、ポピュリズム、地政学、仮想通貨など、現在を理解する上で十分に参考になる本です。

参考文献を列挙した池上氏

私は池上氏の参考文献、引用に対する姿勢に関心がありますので、巻末を拝見しました。3頁にわたり「さらに学びたい人のために」として9点、「主要参考文献」として24点の本が列記されていました。これまで読んだ池上氏の著作(新書など)では、参考、引用文献がほとんど明示されていないので、「社会の批判を受けて姿勢を改めたか」と、思いました。

「おとなの教養」はまず14年4月に出版され、その続編が今回の本です。2点同時に印刷され、セットで書店に並んでいました。巻末をみますと、「さらに学びたい人のために」が5点(自分の執筆本)、「主要参考文献」として、2頁に16点が列記されています。5年で26刷と書いてありますので、他の著書と同様にベストセラーなったのでしょう。

14年4月の初版本が手元にありませんから、ここから先は想像です。「第1刷の初版から参考文献が列記されていたどうかは、分からない。そうだとしても、19年刊は参考文献数がぐっと増えているので、池上氏は著作権法を尊重する方針に改めたのではないか」と。

私は新聞社から出版社に何年か、出向していましたので、しばしば問題を起こす引用規定には敏感でした。引用規定をきちんと守る出版社・著者、ルーズな出版社・著者と様々です。たまたま手元にある本をみますと、講談社現代新書の「新・日本の階級社会」(橋本健二著)、岩波新書「平成経済/衰退の本質」(金子勝著)、中公新書「人口と日本経済」(吉川洋著)は多くの参考文献が列挙されています。

著作権法を守れば無断引用できる

池上氏にお願いしたいのは、最も人気のある執筆者ですから、率先して、引用規定を尊重し、他者、他社に模範を示していただきたいということです。出版に関する公正な慣行を守るようお願います。

著作権法では「報道、解説、批評、研究などの目的で自らの著作物に、他の著作物の一部を再録できる」「出所の明示、著作権者名を示せば、引用は著作者に無許可、無断で行える」「自分の著書を主とすれば、引用部分は従の関係に収める(行数など)」と、しています。

公正な慣行を守れば、他者の研究成果、調査の成果を活用できる。そのほうが社会全体の発展に役立つという思想です。引用箇所、著作者名を明示せず、自著に取り込むことは、他者の成果を侵害する。それは避けなければならないのです。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2019年6月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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