バロンズ:逆イールド、今回は景気後退の前兆にあらず?

2019年06月03日 11:30

バロンズ誌、今週のカバーは高齢者向け住宅や老人ホームを取り上げる。米国でもベビーブーマー世代が続々と引退するなか、想像と異なる現実を目の当たりにするアメリカ人も多い。例えばワーデン夫妻の場合、コロラド州からウィスコンシン州に移り住んだが、厳しい冬と社会的に隔離された地域での生活は予想以上に苛酷なものとなり、生活設計の再考を余儀なくされた。とはいえ、新しい住宅に引っ越すのもひと苦労だ。

さらに高齢者向けの住宅環境は良好と言えず、ハーバード大学の調査によれば、80歳以上の高齢者のうち43%が室内の移動などで問題を抱え、居住空間に満足しているのは4%以下に過ぎない。つまり、階層やドアの多さ、段差、廊下の広さなど、高齢者フレンドリーでない住宅が非常に多い状況である。そこで、老人ホームという選択肢が登場するわけだが、では何を基準に検討すべきなのか。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測している名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は逆イールドを取り上げる。抄訳は、以下の通り。

逆イールド、今回は恐るるに足らず—An Inverted Yield Curve Is Usually Scary. Not This Time.

トランプ大統領は5月31日、メキシコが不法移民対策を強化しない場合、5%の追加関税を賦課すると発言した結果、ダウ平均は5月最終週に3%超下落し、6週続落した。米株相場への打撃が如実に表れているが、ドイツ銀行のストラジテストによれば、メキシコへの追加関税措置コメント直前の段階で既に米株から5兆ドルの時価総額を失われていたという。トランプ政権が追加関税措置カードを切ってから17ヵ月間、S&P500はレンジ内での推移にとどまり、2009年に開始した強気相場の平均上昇率12.5%高を下回る。

(作成:My Big Apple NY)

(作成:My Big Apple NY)

トランプ大統領は米株高を自身の功績として捉えてきたが、追加関税措置は支持率を押し上げているわけではない。ゴールドマン・サックス(GS)は、アイオワ州、オハイオ州、ペンシルベニア州、ミシガン州などの接戦州で支持率が上昇していないと分析する。対中追加関税措置は支持される傾向にあるものの、トランプ大統領の支持率は貿易摩擦が落ち着いた時に改善してきた。

とはいえGSは、2020年の米大統領選を占う上で、追加関税措置より問題は米国経済、労働市場、米株市場が2020年4〜6月期にどのように推移しているかが重要と考えている。中国との通商協議合意をめぐって、GSは最大限の効果を狙い今年後半となると分析する。

メキシコへの追加関税措置は、米国経済を一段と下押ししかねない。追加関税措置が発動すれば商品が値上がりし、消費者は買い控えに動くと想定されるためだ。そうなれば、米連邦公開市場委員会(FOMC)が利下げを決定してもおかしくない。金融市場では、2回の利下げが織り込まれている。

利下げ観測が強まるように、米国経済が減速するとの懸念が金融市場で広がりあり、その兆候も見て取れる。米10年債利回りは2.139%と、2017年9月以来の水準まで低下した。JPモルガンのエコノミスト・チームは、金利低下などでもたらされる緩和効果が追加関税措置を相殺することで「ひどい成長を達成可能な水準に(Make Abysmal Growth Attainable(MAGA)」引き上げうると見込む。

これまで、逆イールドは景気後退入りの前兆として知られてきた。足元、米10年債利回りは2.15%に対し、3ヵ月物米財務省短期証券(Tビル)の利回りは2.35%と、逆イールドの状態だ。では、今回もそうなるのか、あるいはあの危険な言葉「今回は違う」が該当するのか。

(作成:My Big Apple NY)

(作成:My Big Apple NY)

ルーソールド・グループのジム・ポールセン最高投資責任者(CIO)は、労働市場や消費者信頼感指数と米利回り推移で別の方向性を示した場合、米株相場への見通しは(低金利環境を受けて)明るくなりやすいと指摘。米株相場にとって、買いの機会を与えるという。ポールセン氏は消費者信頼感指数と米10年債利回りを比較した”信頼感ギャップ”モデルを作成、両者の乖離が激しくなればなるほど、S&P500は上昇する傾向にあり、乖離幅を4分割して最大のレンジに入った場合の6ヵ月平均リターンは14.34%高、下落確率は20.36%だった。逆に最低レンジでの6ヵ月平均リターンは6.76%高、下落確率はむしろ高まり38.06%だったという。そして、米4月雇用統計は良好な労働市場を表し、米5月消費者信頼感指数は半年ぶりの高水準だった。

ベルギー国立銀行(中銀、NBB)が公表したNBBレビュー6月号でも、逆イールドをトロイ陥落の予言を無視されたカサンドラと比較してこう指摘する——1980年以降、ボルカーFRB議長の手腕によって2桁インフレが沈静化した結果、逆イールドと経済との間の相関性は低下した。さらに中銀が導入したインフレ目標は信頼を担保しているため、債券市場は短期金利の上昇を一時的と判断し、かつ長期金利は安定的かつ低下するものと仮定しているという。もちろん、金融危機後の異例な金融政策も、ターム・プレミアム(長期債保有リスクに見合う上乗せ金利)低下に一役買ったことは言うまでもない。

仮に米景気が減速したならば、FOMCが利下げに応じること必至だ。そうなれば、リスク資産を押し上げ、現金を保有する投資家が飛びつくだろう。短期的な投資は、長期債保有よりリターンが高ければ、尚更だ。

——逆イールドと米国債市場の関係は、確かに「今回は違う」環境を作り出すのかもしれません。その一方で、米4月ISM製造業景況指数米4月鉱工業生産米4月耐久財受注など供給側の経済指標が減速していることは事実です。労働市場が好調の割に米4月小売売上高も振るわず、今後はFedが利下げしたとして、どこまで下支えできるのか、量的緩和と合わせ、その効果が問題視されるのではないでしょうか。

(カバー写真:Kevin Baird/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年6月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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