ブラック企業のPR表現が決定的にダメな理由とは

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名詞を修飾する形容詞は、便利な言葉ですが、意味がわかるようなわからないような、ぼんやりした文章になることもあります。

今回は、14冊目となる著書『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)のなかから関連するエッセンスを紹介します。

たとえば、ブラック企業にありがちなPR表現です。次の文章を読んでください。

○私の上司は魅力的な人です。
○風通しのよい組織です。
○アットホームな会社です。

人材採用のホームページや会社説明のパンフレットなどで見かけますが、このような文章に読む相手を惹きつける吸引力はあるでしょうか?

学生からすると、「よい上司です」、「風通しのよい会社です」と言われても、何がよいのか、どんなふうに風通しがよいのか、まったくイメージできません。また、アットホームであることを理由に、プライベートまで介入してくる会社があります。こうなると、アットホームではなく公私混同です。

○学歴不問!未経験者歓迎です。
○少数精鋭です。

ありがちなフレーズですが、応募条件が緩すぎる会社は、労働者をただの消耗品と考えているおそれもあります。人を採用する余力がなく、少人数に過重労働を強いる可能性も否定できません。検証する材料やリアリティがないので、エントリーにもつながらないでしょう。ではこの場合、どのような情報を使うべきしょうか。

私の経験上、有効なのは具体的な数値です。たとえば、「年間有給消化率80%」「高校卒の管理職比率が60%」「賞与平均は月給10カ月分」などの、事実を数値化して、それを根拠に魅力的な会社だとアピールするのです。魅力的な根拠を提示し、具体的にイメージさせることができれば、応募者の心を動かすことができるでしょう。

数字を入れたり、情景を具体的に描写したりすることで、ぼんやりしていたものが明確化してきます。多用せず、効果的に使うことで力を発揮すると覚えておきたいものです。

<参考書籍>
3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)

尾藤克之(コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員)