NHKは「スクランブル放送」を実施すべき

2019年06月04日 06:00

NHKにテレビ番組のインターネット常時同時配信を認める改正放送法が5月29日の参院本会議で、与党などの賛成多数により可決、成立した(産経新聞)。これによりNHKは、本年度中にネット向けの新サービスを始めることができることになった。

放送と通信の融合は結構なことだが、正直なところNHKはその前にやることがあるのではないかと思う。今回の改正放送法の成立により、テレビを持っていない若者世代もスマホさえ持っていれば受信料を徴収されるのではないかとの懸念も生まれている。もとをただせば、そもそも現在のNHKの受信料に国民の多くが納得していない。

NHK渋谷放送センター(編集部撮影)

2012年の産経新聞の調査によれば、「NHKの地上波放送はスクランブル化を導入すべきか」という問に対し、88%が「Yes」と回答をしている(TOPIC NEWS)。88%という数字はおよそこの手のアンケート調査では類をみない高さであり、国民のほとんどは、現在のNHKの受信料に納得をしていないと言える。

納得していない理由は、「スクランブル化して、番組を見たい人が受信料を払うべき」「テレビ受像機を持っているだけで受信料を徴収する今のNHKのやり方に納得できない」「見たくもない韓国アイドルを放送されるのは納得いかない」との声があげられている。さらに言えば、NHKの受信料の徴収の仕方にもかなりの問題点がある。NHKの料金の徴収の仕方をネットで調べれば枚挙にいとまがない。

例えばオートロックつきのマンションの玄関を居住者と一緒に入って来たり、新聞記者よろしく、夜討ち朝駆けで訪問しているケースもあるという。下請け業者が行っていることではあるのだろうが、コンプライアンス上、NHKも責任がないとは言えないだろう。

これらの国民の不満の声に応えているのが、今話題の「NHKから国民を守る党」である。党の主張「スクランブル放送をせよ」を掲げて、先の統一地方選で26人を当選させている。その手段に賛否はあったとしても、一定の支持を得ているのは事実で、同党は次期の国政選挙にもうって出るという。

NHKの受信料収入が7000億円を超え、5年連続過去最高になったことが報道され(産経新聞)。これに先立ちNHKは受信料を2020年から地上波で59円値下げすることを決めたというが(朝日新聞)、7000億円の受信料収入に対して不満を抱える国民に対しては、焼け石に水のような感も覚えるのではないか。

この受信料収入の増加は2017年12月6日に最高裁で出た判決も影響をしている。この判決で「放送法は受信設備の設置者に対して受信契約の締結を強制する旨を定めた義務規定」であると認められた。しかし、一方で、NHKに「公共放送の役割を丁寧に説明し、受信料を支払う意味を理解してもらうよう不断の努力」を求め、「受信契約が未確定の段階で徴収するのは適当ではない」という指摘もされた。

このようなNHKに対する国民の不満を解決する手段がスクランブル放送である。2012年からアナログ放送からデジタル放送に移行して、技術的にはスクランブル放送は可能になっている。WOWOWやスカパーなどは、見ようとしても料金を払っていないと画面は映らない。NHKの地上波も同じように未払い、未契約者にはスクランブルをかけて映らないようにすれば良いだけだ。ライフラインと言われる水道、ガス、電気でさえ料金を支払わなければ止まる。NHKができない道理はない。

「なぜスクランブル放送にしないのか」の質問に、NHKはこう答えている。答えを見ると、「いつでも、どこでも、だれでも、分けへだてなく提供する役割を担っているから。公共放送だから」という、放送法上公共放送の役割を担っているからとの回答が多い。

しかし、たとえば「緊急災害時には大幅に番組編成を変更し、正確な情報を迅速に提供する」というような答えは、はっきり言って詭弁にしか思えない。

そもそも、非常時には有線で繋がっているテレビよりもネットの方が有効であるし、災害時に必要ならスクランブルを解除すれば良いだけの話しだ。NHKがもし解除ができないというのなら、政府は民放に災害時に放送するよう努力義務を課せば良い。民放は努力義務を怠れば国民の批判を浴びるので進んで義務を果たすだろう。

回答の中に「スクランブルを導入した場合、どうしても『よく見られる』番組に偏り、内容が画一化していく懸念があり、結果として、視聴者にとって、番組視聴の選択肢が狭まって、放送法がうたう「健全な民主主義の発達」の上でも問題がある」というものがある。NHKが健全な民主主義の発達に貢献していたとは驚きだし、この言葉自体はなはだ不遜にしか聞こえない。NHKがいくら視聴者に多様な選択肢を提供したとしても、興味のないものを見るわけがない。

この簡単な解決方法を選択しようとしないのは、NHK自身が視聴者離れで収入が減るとわかっているからではないか。また、NHKと強い結びつき、既得権のある組織、団体の力が働いているのではと勘ぐりたくもなる。ネット配信になればますます国民のNHKに対する意識は高まってくる。NHKは国民の約9割の「スクランブル放送にすべし」という声に真摯に耳を傾けて、スクランブル放送を実現すべきだ。

石川 了(とおる)宅地建物取引士
1982年中央大学卒業、NTT入社 退職後不動産投資業を営む ブログはこちらです。石川了ブログ

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