メルケル氏の政界引退早まるか

2019年06月04日 11:30

ドイツの社会民主党(SPD)のアンドレア・ナーレス党首が2日、党首と連邦議会(下院)の会派代表ポストから辞意を表明したことで、SPD指導部は混乱に陥っているが、SPDと連立政権を組む「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)内でも当惑の声が聞かれるなど、第4次メルケル政権の土台は大きく揺れだしてきた。

党首の辞任を表明したアンドレア・ナーレス党首(2019年6月2日、SPD公式サイトから)

ナーレス党首(48)は党員宛ての書簡の中で、「党の刷新を実行するために努力してきたが、それを支えてくれる党内の支持が欠けていることが明らかになった」と辞任理由を説明した。同党首は2018年4月、シュルツ党首(当時)の後任として歩んできたが、党の低迷を止めることはできず、SPDは昨年10月14日のバイエルン州議会選では第5党となり、極右党「ドイツのための選択肢」(AfD)の後塵を拝したばかりだ。

先月26日に実施された欧州議会選では社民党は15・8%と前回(2014年)比で11・5%減と大幅に得票率を失う一方、同日に行われた独北部ブレーメン州議会選でも戦後からキープしてきた第1党の地位をCDUに奪われるなど、散々な結果で終わったばかりだ。ナーレス党首の辞任はその責任を取っての引責辞任である。

メルケル首相は2日、ナーレス党首の辞意表明に対し、「自分はナーレス党首の活動を評価してきた。党首の人事問題を早急に解決し、安定した政府の仕事が継続されることを願う」と述べ、SPDとの大連立政権を継続していく考えを明らかにした。

また、CDUのアンネグレート・クランプ=カレンバウアー党首は、「現政権の仕事に支障が生じないようにしてほしい」と述べ、CDUのバイエルン州の姉妹政党CSUのゼーダー首相は、「SPDは国家に対する責任を持って対応してほしい」とアピールしている。要するに、SPDと大連立を組むCDU/CSUは連立継続を期待しているわけだ。

SPDは2017年3月19日、ベルリンで臨時党大会を開き、前欧州議会議長のシュルツ氏を全党員の支持(有効投票数605票)でガブリエル党首の後任に選出し、メルケル首相の4選阻止を目標に再出発した。シュルツ氏は停滞する党勢を復帰してくれる救世主のように期待されたが、その後の3つの州議会選(ザールランド州、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州、そしてドイツ最大州ノルトライン=ヴェストファーレン州)でことごとく敗北を喫し、本番の2017年9月24日の連邦議会選では社民党歴史上、最悪の得票率(20・5%)に終わった。

“希望の星”シュルツ党首は社民党の低迷をストップできず、1年余りで党首ポストをナーレス党首に譲った。SPD初の女性党首に就任したナーレス党首も党の低迷を止めることはできなかった。連邦議会選後、SPDは野党に下野する予定だったが、結局、メルケル首相の誘いに乗って第4次メルケル政権のジュニア政党の地位に甘んじることになった。

SPD党内には党首を交代しても低迷する党を回復できないことから、無力感が漂ってきた。そして、「メルケル連立政権に参加したことが大きな原因だ」として、メルケル政権から離脱、野党へ下野すべきだという声が日増しに高まっている。

一方、CDU内の保守派グループでは「大連立は終わりに近い」という声が支配的だ。AfDの連邦議会代表のアリス・ワイデル氏は、「大連立は崩壊直前だ」と指摘しているほどだ。

ナーレス党首の辞任を受け、SPDがCDU/CSUとの大連立から離脱する可能性が高まってきている。SPDが下野した場合、メルケル政権は少数政権となる。その場合、SPDに代わり「同盟90/緑の党」など他の政党と連立を組むか、早期選挙の実施を決定するかの選択肢がある。CDUはこの時期の連邦議会選は避けたいだろう。SPDはCDU以上に早期選挙の実施は回避したいところだ。最新の世論調査では、SPDの支持率は12%という結果が出ている。SPDにとって、早期選挙の前に、党の刷新が緊急課題となる。

ドイツ連邦首相府公式サイトより:編集部

ちなみに、メルケル首相は昨年12月、党首ポストを辞任、2021年の任期満了まで首相職に専念した後、政界から引退する意向を表明してきたが、SPDが大連立から離脱し、早期総選挙となって、クランプ=カレンバウアーCDU党首が選挙戦に臨み、第1党を維持した場合、首相ポストも引き継ぐことになり、メルケル首相の政界からの引退時期が早まることが考えられる。

なお、独週刊誌シュピーゲル電子版が3日報じたところによると、ナーレス党首の後継者にはメクレンブルク=フォアポンメルン州のマヌエラ・シューズィヒ州首相、ラインランド=プファルツ州のマル・ドライヤー州首相、そしてヘッセン州のSPDのトルシュテン・シェーファー・ギュムベル州党首の3人組が党大会で正式に党首が選出されるまで暫定的党首を務め、連邦議会会派代表にはケルン出身のSPD議員ロルフ・ムッツェ二ヒ氏が暫定的に就任する予定だ。

ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年6月4日の記事に一部加筆。

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