参院東京2019:東京に維新のマーケットはあるのか

2019年06月06日 06:00

参院選東京選挙区の展望記事を書いた直後、主要政党の候補予定者の「トリ」として、日本維新の会が3日、前都議の音喜多駿氏の擁立を発表した。候補予定者が出揃ったところで、縦軸を政府の大小、横軸を保守・リベラルで区分けしたマトリックスにあらためてマッピングしてみよう。

画像は現職が参議院サイト、新人は所属政党サイト等より

先日も書いたように、空いていた右上の「男性×保守」のゾーンを維新は意識して候補者を立ててきたと言える。ただ、そのゾーンを「ブルーオーシャン」と先日書いたことについて、筆者のツイッターにこういう意見が寄せられた。

ブルーオーシャンだと言ってるが東京の選挙で維新が勝てないのだからここには「顧客がいない」という事。維新は大阪だけしか勝てないと思う。

維新は2013年には小倉淳氏(元日テレアナウンサー)を、16年は田中康夫氏(元長野県知事、元衆議院議員)を擁立したが、議席に届かなかった。このネット民が言うように、「顧客がいない」のだろうか。

音喜多氏と、比例から挑戦する柳ヶ瀬裕文氏の出馬記者会見(編集部撮影)

「小さな政府」ゾーンに“顧客”がいないのか?

選挙戦で拙かったことは脇に置いて、ここからしばらくは、市場分析に徹しての話だが、確かに、日本の政党は、特に老舗は、右も左も程度の差はあれ「大きな政府」志向にウエートを置いてきた。

冒頭のマトリックスは均等に分けた場合だが、みんなの党が存在していた2013年参院選当時の各党得票率(東京都内の比例票)から勘案すると、総得票563万票に対し、維新(63万票)とみんなの党(71万票)の総計が占める割合は23%。その比率に合わせてマトリックスを作り直すと、「小さな政府」論者のマーケットの少なさは次の図のようにいっそう明確になる。さらに、みんなの党はその後瓦解したから、ますますこのゾーンは小さくなっているという見方もできる。

画像は現職が参議院サイト、新人は所属政党サイト等より

では「身を切る改革」を掲げてきた維新が、大阪には、顧客を掴むだけのマーケットがあり、東京には存在しないのかといえば、一定部分は当たっていると言える。というのも、これはもう両都市の経済的基盤の格差がもろに出たとしかいえまい。

関学大の善教将大准教授が近年、維新の大阪での強さを新たな視点で実証分析し、「大阪の利益代弁者として地位獲得に成功した」と指摘をして注目されているが、その前提にあるのは、経済が長期低迷し、財政が危機的だった大阪を、行革から立て直すスタンスが支持されてきた前提があろう。

一方、東京はバブル崩壊後に一時は財政再建団体転落の危機に陥ったが、そこは法人税収に恵まれた首都の強み。2000年代半ばと2013年以降の景気回復の波に乗って税収も順調に回復。小池知事が豊洲市場問題で数千億の損失を出したところで、都民が怒って知事のクビを切るほどの世論が生まれないのは、東京が「豊か」だからとも言える。維新が大阪のノリで「身を切る改革」を唱えても、リッチな都民には切迫感がないわけだ。

所得と投票動向は相関するのか?

松田氏(編集部撮影)

では、維新…正確には維新だけでなく「小さな政府」志向がベースの政党が東京でニーズがないと言うのかといえば、そんなことはあるまい。「小さな政府」論を、行革の文脈ではなく経済成長の文脈、例えば規制緩和や民営化といったところを追求する政策であれば、経営者や上場企業勤務など、経済合理性を重視する「お金持ち」は支持するはずだ。

実際、2010年参院選東京選挙区でみんなの党は、タリーズコーヒージャパン創業者の松田公太氏を擁立。松田氏は5枠目の5位で当選したが、区ごとにみると区民平均所得が都内でも特に高い港区では2位、逆に低い足立区や北区では5位などと地域ごとにはっきりと別れた。

以前から所得と得票の相関に関心のあった筆者は、ある選挙の調査時に港区と足立区の得票傾向の違いを知り、そこから23区の区ごとの平均所得と松田氏の得票率の相関を調べて見たのだが、両者の動きは概ね一致していた。

また、23区ごとの区民平均年齢と得票率を調べてみると、全体的とまでは言えないものの、高齢化率が低い区で松田氏の得票率が高い区、あるいはその逆の傾向が見られた。

これらの傾向から「若くて豊かな地域」というのが、第三極にとって攻略しやすいゾーンと言えるかもしれない。

ただし、これは筆者がライトに調べただけの「仮説」に過ぎず、統計と政治の両方に詳しい人などから異論もあるだろう。維新とみんなの支持層の政策的な価値観も細かく解析すると異なる部分もあろう。また、仮説が当たっていたとしても、港区に住む経営者や投資家などは、安倍一強体制が確立した現在、アベノミクスなど金融緩和を基本的に支持しており、第3極がそれを切り崩すのは容易ではない。

しかし、アメリカ大統領選のマーケティングデータと異なり、日本の選挙調査はだいたいの地域ごとの支持傾向は調べても、所得階層別まで掘ることは少ない。となれば、どの政党もまだ掴んでいない有権者ニーズが存在するかもしれない。

新田 哲史   アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長
読売新聞記者、PR会社を経て2013年独立。大手から中小企業、政党、政治家の広報PRプロジェクトに参画。2015年秋、アゴラ編集長に就任。著書に『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックス)など。Twitter「@TetsuNitta」
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