オーストリア、極右・自由党が分裂の危機

2019年06月06日 11:30

オーストリアの極右政党「自由党」が分裂の危機に瀕している。直接の原因は、シュトラーヒェ前党首のイビザ島スキャンダル事件だ。

自由党党首のシュトラーヒェ副首相が野党党首時代の2017年7月、イビザ島で自称「ロシア新興財閥(オリガルヒ)の姪」という女性と会合し、そこで党献金と引き換えに公共事業の受注を与えると約束する一方、オーストリア最大日刊紙クローネンの買収を持ち掛け、国内世論の操作を唆すなど暴言を連発。その現場を撮影したビデオを独週刊誌シュピーゲルと南ドイツ新聞が今年の5月17日、報じたことから、オーストリア政界に激震が走った。

シュトラーヒェ氏の辞任を受け新党首に就任したノルベルト・ホーファー氏(2019年5月19日、自由党公式サイトから)

シュトラーヒェ氏は同月18日、クルツ政権下の副首相のポストと共に、党首の辞任を表明。最終的には、クルツ首相が率いる国民党・自由党の連立政権は解消され、前倒しの総選挙実施となったことはこのコラム欄でも紹介済みだ。

自由党は先月26日の欧州議会選では2014年の前回比で得票率1・63%減だったが、大きなダメージを受けずに済んだばかりだ。自由党はノルベルト・ホーファー新党首のもと9月実施予定の早期議会選に集中する予定だった。

そこに新たな問題が生じた。シュトラーヒェ氏が欧州議会選の党リストで最下位に登録したが、選好投票で同氏が4万4750票を獲得、当選した自由党3人候補者の中に入り込むことができ、欧州議会議員の道が開かれたのだ。

もちろん、シュトラーヒェ氏が選好投票の特典を利用してブリュッセルに行くことができるが、イビザ島不祥事の張本人であり、党首職を辞任したばかりのシュトラーヒェ氏が欧州議会議員となることに党内からも強い反対が出てきた。

党内でシュトラーヒェ氏に批判的なオーバーエスターライヒ州の自由党のマンフレッド・ハイムブフナー党首が、「シュトラーヒェ氏が欧州議会議員になるのならば、自由党から離党すべきだ」と主張。それに対し、ウィーン市とニーダーエスターライヒ州の自由党はシュトラーヒェ氏を支援。ウィーン自由党はシュトラーヒェ氏にウィーン市自由党の党首ポストを提供する用意がある、といった具合だ。

ちなみに、同党はイェルク・ハイダー党首時代の2005年4月、分裂し、多くはハイダー主導の自由党から袂を分かった。右派傾向を強めるハイダー党首は自ら自由党を離党して「未来同盟」を結成した経緯がある。

自由党の分裂を回避するためにホーファー党首はシュトラーヒェ氏と会合し、同氏が欧州議会議員のポストを取るならば、イビザ島スキャンダル事件の全容解明まで自由党から離党することで双方が一致したという。

ところが、シュトラーヒェ氏が1980、90年代の若い時分、ドイツのネオ・ナチグループと深い関係だったことを証明する写真と絵葉書が見つかったとファルター紙が4日、報じたのだ。誰が写真と絵葉書をメディアにリークしたか。当方の推測だが、自由党内の反シュトラーヒェ派だろう。ネオ・ナチとの関係が切れなく、スキャンダラスな言動が多いシュトラーヒェ氏を自由党から追放することで、政権担当可能な右派政党に党を刷新したいオーバーエスターライヒ州のハイムブフナー党首らの画策ではないか。

シュトラーヒェ氏は自身のフェイスブックで、「写真はネオナチとは全く関係ない」と否定する一方、欧州議会議員となるか否かについては、「まだ何も決定していない」と述べている。

オーストリアで3日、前倒し国民議会選(下院、定数183)の実施と新政権発足までのブリギッテ・ビアライン暫定政権がスタートしたばかりだ。

複数の世論調査によると、クルツ前首相が率いる中道右派「国民党」が38%の支持を得てトップを独走、社民党は23%、自由党は17%となっている。クルツ国民党は単独で議会の過半数獲得は難しく、選挙後は連立パートナー探しで苦戦することが予想される。

ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年6月6日の記事に一部加筆。

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