同音異義語が多いといわれるハングル、不便はないのか?

2019年06月07日 06:00

名前の読みが筆者と同音の韓国論の大御所(室谷克実氏)にあやかる訳ではないがまた韓国の話を書く。ハングルが表音文字であるために韓国には同音異義語が氾濫しているという話をよく耳にする。韓国紙を情報源にしている筆者も、特に人名などでは当惑させられることが間々ある。

韓国大統領府Facebookより

6月5日のハンギョレでも、「韓米の間で、北朝鮮の先非核化ではなく『同時並行的解決』への共感広がっている」との見出しの後に、「キム・ヨンチョル統一部長官、外信記者会見で ハノイ以降、米国の変化に言及」と続くので、えっ、北朝鮮の金英哲?と思ったら、韓国の金錬鉄統一部長だった。

5月9日の中央日報はこのキム・ヨンチョル(金錬鉄)統一部長が、就任早々開城南北連絡事務所を訪問したことを報じた。その北朝鮮側でキム・ヨンチョル統一部長に応対したのが、この開城南北共同連絡事務所のキム・ヨンチョル(漢字表記なし)臨時所長代理だったというから念が入っている。

朝鮮日報と東亜日報はたいてい漢字だけか、あるいは漢字と片仮名を併記して人名を報じるのだが、ハンギョレと中央日報は往々にして漢字を省くので、片仮名だけの記事と漢字だけの記事を読んで、果たして同一人物かどうか判断がつかずに困ることもある。それでなくとも韓国には同じ苗字が多い。

金英哲も2月のハノイ米朝首脳会談までは朝鮮労働党統一戦線部長だったので、肩書も似た様では間違うのも仕方ない。本稿では、後段でハングルに多い同音異義語でどのような不便がありそうか体験してみようと思う。が、その前にこの金錬鉄統一部長と彼が抜擢された3月の閣僚人事を見てみる。

文大統領が3月8日に新長官候補7人を指名した時、政権寄りのハンギョレは「専門性が最優先の“バランス改閣”…実質的成果が課題」の見出しで、「政権3年目迎えて能力中心の内閣作り 文大統領と距離置くパク・ヨンソン議員や保守政党出身のチン・ヨン議員も起用」と支持の姿勢を滲ませた。

他方、東亜日報は4月1日、文大統領が候補7人のうち趙候補と崔候補を、前者は偽装転入による農地取得と息子の豪華留学、後者は多住宅保有と小細工贈与を理由に指名撤回したことを難じ、金錬鉄候補も「卑劣な言葉と理念的偏向性が健全な常識では容認できるレベルを超えており、候補全員が国会聴聞会の過程で不動産投機や偽装転入などで批判を受けた」と報じた。

中央日報も3月27日、金錬鉄候補が親北主義者と疑わせるほど過激な発言を繰り返してきたとし、金剛山観光の韓国人が北朝鮮兵に射殺された事件を「通過儀礼」と述べたことや制裁無用論を主張してきた学者であることを批判、金候補が統一政策を展開すれば、核で武装した北朝鮮を無条件に支援するようなことが生じる可能性が高いと報じた。

そこで冒頭のハンギョレ記事になるのだが、同じ金統一部長官の発言を4日の朝鮮日報は「南北間で本格的に平和と共同繁栄の課題を前進させるためにも、朝米関係の進展が並行すべきだ」、南北の鉄道と道路の連結事業も「南北関係が再び活発になれば、真っ先に最もスピーディーに進展する協力分野」で、開城工業団地と金剛山観光事業も「環境が整えば優先的に正常化されるだろう」と述べたとやや批判的に報じている。果たして東亜日報や中央日報の予測が当たりつつあるようだ。

ソウル南大門市場(源五郎/写真AC)

さて、そのハングル、韓国通の豊田有恒氏は『韓国が漢字を復活できない理由』(祥伝社新書)で、中国や韓国が日本語訳の学術用語などをそのまま持ち込んで、読み方だけを中国風、韓国風に変えていることを同音異義語氾濫の原因の一つに挙げている。

知られた同音異義語には、風速と風俗、停電と停戦、救助と構造、意識と儀式、全力と電力、課長と誇張、地図と指導、歩道と報道、紳士と神社、防水と放水などがあるようだ。そこで記事の下欄に必ず韓国語のURLが記されるハンギョレの文化欄の記事とAI翻訳を使ってその不便さを体験してみたい。

というのも、筆者は米国や台湾の記事などを読むのに良くAI翻訳の助けを借りるからだ。英単語や漢字なら、おかしな日本語訳になっても対応する語の見当が付けられる。が、ハングルは学んだ経験がないので、変な訳語がどの単語の訳語なのかまるで見当が付かない。

幸い、韓国紙は日本語版が充実しているし、中国の環球時報英文版も体裁は頗る立派だからあまり困ることはない。が、もしも韓国紙の日本語版がなかったなら、ハングル記事をAI翻訳にかけて読むに違いない。その場合どのような不便が生じるか体験してみるという訳だ。

例文は3月24日のハンギョレ文化欄の「古代史論争で常に引用される『翰苑』訳注本、韓国で初めて発刊」-日本の神社に保管されていた唐の古文献 東北アジア歴史財団、3年かけて講読・研究 筆写本唯一の「蕃夷部」を訳注-という記事を用いた(リンク)。(太字は筆者

ハンギョレ日本語版の記事

1917年、この神社の神事を司る官吏が自宅に所蔵した宝物を調査していて発見された。・・三国時代の朝鮮半島の地理風俗を言及する際に欠かせない引用出処になっている『翰苑』筆写本がそれだ。・・唐の歴史家、張楚金が660年頃に編纂し、雍公叡が注を付け、当初30冊が作られた。しかし、ほとんどが失われ、朝鮮半島三国と倭国、そして匈奴と烏桓、鮮卑など北方一帯の異民族を扱った「蕃夷部」1冊だけが9~10世紀に日本に伝えられ・・た。この「蕃夷部」は、高句麗の等と政治状況、綿織物などの生産基盤、鴨緑江の起源、三韓の位置、百済の年代呼称など、現存する他の史書にはない稀少な記録が多く書かれているだけでなく、今は存在せず名前だけが残った歴史書物『魏略』『高麗記』が引用根拠として言及されているため、韓・中・日の古代史研究にとって大事な基盤資料と認められている。

ハンギョレのハングル記事をAI翻訳した日本文

1917年に神社の祭祀仕事を見る管理が家に所蔵して宝物を調査した中で発見された。‥三国時代、朝鮮半島の地理風速を述べるとき欠かさず引用源として言及されている<翰園>筆写本がそれだ。・・当代の歴史章草金(張楚金)が660年ごろ編纂し、雍公叡が主につけ、当初30巻が作られた。しかし、ほとんど消えて、韓半島三国と倭国は、匈奴と烏桓、ソンビなど北方一帯の異民族を扱った「回が部「1冊だけ9〜10世紀の日本に・・伝えられた。この「一度この部」は、高句麗の等の政治状況、綿織物などの生産基盤、鴨緑江の起源、三韓の位置、百済の連帯呼称など、県伝える他の司書はない珍しい記録が多数含まれているほか、今は消え名前だけ残った歴史書だ<魏略> <考慮機>などが引用根拠として言及されて韓・中・日の古代史研究に貴重なベース材料として認められている。

おかしな訳の、官吏と管理、風俗と風速、注と主、唐と当、官と管、年代と連帯辺りは凡そ想像が付くし、それほどの不便はない。だが、鮮卑とソンビ、「現存する他の史書」と「県伝える他の司書」辺りになるとチンプンカンプンだし、何より重要な固有名詞の『高麗記』と<考慮機>、そして「蕃夷部」がまともに訳されないのは致命傷だ。

これがAI翻訳の学習不足によるものか、あるいは表意文字ハングルの特性によるものか、はたまたその両方なのかは判らない。が、韓国紙の日本語版がなかったら、筆者が大いに困っただろうことだけは判った。

高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。

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