最終受益者まで手が届かない厚労省の介護助成事業

2019年06月09日 06:00

今年も行政事業レビュー公開プロセスに参加している。厚生労働省では6月6日に前半戦があった。対象となった四件すべて最終受益者まで手が届いているか心配が募る事業であった。

Pixabay

介護サービス受給者が低所得である場合には利用者負担額を軽減する制度がある。すべての国民がきちんと生活を維持していくために、このような制度は不可欠である。今回対象となったのは、社会福祉法人が持ち出しにより低所得者に対し介護サービスの利用者負担額を軽減した際、費用の一部について補助を行う制度である。

第一の問題は類似の制度がいくつもある点。『渋谷区からのお知らせ』6月1日号には「介護サービス費の軽減制度」として5種類が列挙されている。一つは区独自だが、他は厚生労働省の制度である。収入制限や預貯金額制限など適用条件は似通っている。申請により適用となるのだが、認知症の進行などで判断能力が不足する当事者が自らの条件に合致する制度を選択できるとは思えない。

そこで家族や行政職員、介護施設職員などが代理で申請するのだが、本人以外が預貯金額などの配慮が必要な個人情報を扱うことについて法的妥当性が検討されていない。これが第二の問題。生命にかかわるとして個人情報保護法・保護条例の例外規定で扱うべきと考えるが、そのような議論が行われた形跡はない。

第三は、行政は申請を待つ姿勢に終始し、積極的に対象者を洗い出す作業をしていない点。介護保険の支払い・受給状況や収入額などをマイナンバーで連結すれば、対象となる可能性のある人は洗い出せる。その上で、それらの人々に預貯金額を聞けばよいはずだ。そもそもマイナンバー制度は「必要な人に必要な支援を行う」ために導入されたが、活用は進んでいない。

公開プロセスには宮腰光寛行政改革担当大臣が同席した。僕の意見に対して、大臣は個人情報保護委員会も所管しているとしたうえで、高齢者や子供への支援や見守りのためには関係者が対象者の個人情報を共有したり、マイナンバーをいっそう活用したりする必要があると強調された。大臣の前向きな姿勢に敬意を表したい。

この事業は憲法に規定された生存権に関わる。最終受益者はもれなく支援を受けられなければならない。結論は事業全体の抜本的見直しとなった。

山田 肇

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