選挙前で世論調査が多いけど、電話調査はもう限界

山田 肇

ニッキー/イラストAC(編集部)

参議院選挙を控え多くの世論調査が実施されている。選挙が公示されれば選挙区ごとの情勢も発表されるだろう。しかし、世論調査の主流である電話調査はすでに限界に達している。

新聞通信調査会は『メディアに関する全国世論調査』を毎年実施し、2018年分も公開された。「世論調査は人々の意見を反映しているか」という質問に対して、「そう思う」「ややそう思う」の合計は24.3%で2017年よりも8.2ポイント減少した。

一方、「そう思わない」「あまりそう思わない」33.6%で、6.3ポイントの上昇である。肯定派と否定派は逆転し、この一年間でメディア世論調査が急激に信頼度を失った様子が読み取れる。特に、30代では肯定派17.2%に対して否定派41.1%で全く信じられていない。

新聞通信調査会によるこの調査を報じたメディアはあるが、メディアへの信頼度がNHK、新聞、民放テレビ、ラジオ、インターネット、雑誌の順だったという程度で、世論調査の危機については「報道しない自由」が行使された。

デジタル毎日に『オレオレ詐欺は調査の大敵』という記事が載った。電話調査には二つのハードルがあるという。無作為に数字を組み合わせ固定と携帯に電話するが、電話を受けた人は名前や住所が知られたと警戒するそうだ。次に世帯構成を聞き、例えば「年齢が一番上の方が対象です。ご在宅ですか」などと聞く必要があるという。

これではオレオレ詐欺と勘違いされてもやむを得ない。そもそも固定電話は高齢者の友となり、携帯主流の若者は音声通話を利用しない。総務省の『通信料からみた我が国の音声通信利用状況』調査でも、総通話回数・総通話時間共に年々減少している。世論を把握するのに電話を使う時代は終わったのだ。ネット調査に移行しないと世論調査の価値はますます低下する。

もちろん、ネット調査には調査協力者が偏る恐れがあるという問題がある。しかし、年齢・性別・居住地など属性情報も聞き、それを用いて補正することもできる。選挙前で準備はむずかしいかもしれないが、早く対応を取るしかない。