年金は日本企業の収益性が上がれば問題ない --- 水口 進一

2019年06月15日 06:01

金融庁が年金だけで老後を暮らすことはできないという報告書を出して多くの人が批判しているようです。しかし、そもそも日本は税と社会保障を合わせた国民負担率は世界的に低いほうですし、老後を国にだけ頼るのは無理な話です。

老後をすべて国が面倒を見ろというのであれば、北欧並みに税や社会保障費の負担を上げるべきでしょう。ただ、日本の場合はこれまで年金が日本株を爆買いしてきたという特殊事情があり、日本の会社が資本の有効活用をすれば株の利益で年金の足りない分を補填することができます。

シルバーブレット/写真AC(編集部)

現在の日本企業のROEは世界と比べても極めて低く、通常であればROEは15~20%あるものの日本は二桁にも届かない9%の低いレベルで低迷しています。そして株価が企業の純資産の何倍かを示すPBRはPER×ROEであらわされ、PERは長期的に15で変わらないのでROEが低ければPBRも低くなります。

PERが平常値の15でROEが15~20%あればPBRは2~3倍になるのですが、現在の日本はROEが低く、PERが12で若干割安なのでPBRが1程度しかありません。

現在の日経平均の一株当たり純資産は19000前後でROEが15~20%あればPBRが2~3の値を取り、日経平均は38000~57000になります。アベノミクスでものすごく株価が上がったように見えますが、日本企業がちゃんと稼いでいればいまごろ日経平均はバブル高値を超えていてもおかしくないのです。

これまでアベノミクスで年金や日銀が日本株を爆買いしてきましたが、その間の日経平均のPBRはピークでも1.3くらいで企業の純資産とほとんど変わらない水準で株を買っています。日本企業が資本の有効活用をしてPBRが上がれば日銀や年金が買った値段の倍くらいに株価が上がることも不可能ではないのです。

また、これは一株当たり純資産が今と変わらなくてもそれくらい上がるという話で、まともな経営をしていれば投資をして資産が増えるので日本企業が資産の有効活用をし続ければ株価は長期的にはもっと上がります。

ただ、目先の1~2年はリーマンショック後の好景気がそろそろ終わりそうで、日本株も一時的には大きく下げるかもしれません。そうなれば政権に対する批判も大きくなり、社会問題になりそうです。ただ、文句を言ったところで何も変わりませんし、むしろ預かった資金を有効活用せず低収益を放置してきたのは政府だけでなく日本人自身の問題でもあります。

ライブドアや村上ファンドが出てきたときに自分たちの低収益は棚に上げて日本の経営は長期のことを考えているのだから利益や株価などどうでもよいと一方的に株主批判をしてきましたが、いざ年金で自分が株を持つ立場になって株価が下がったのを批判するのは都合が良すぎます。日本の年金は一時的に株式運用で含み損が出るかもしれませんが、長期的には日本人が預かった資金を有効活用して低すぎる収益性を改善させれば足りない分を補填することができるのです。

年金に関して具体的な議論をしてこなかったことに関して政府に問題があるとは思いますが、日本人自身もライブドアや村上ファンドが出てきたときに「長期のことを考えている」などと、抽象的な綺麗事を言ってきただけで具体的な資産の有効活用に関しては議論をしませんでした。預かった資金をまともな議論もせず有効活用しないまま放置してきたのは年金だけでなく日本人全てにあてはまることです。

自分が預かった資金を有効活用していなくても文句を言うなと株主批判をしておいて、自分が資金を預ける側になったら減るのは許さない、それどころか老後まで全て面倒を見ろというのは虫が良すぎます。

日本人は年金に文句を言う前に、まず自分たちが預かった資金を有効活用してきたのかを真摯に考え直すべきではないかと思います。そして日本人が預かった資金を有効活用さえすれば年金は破綻どころか株式運用で大儲けなのです。

水口 進一 個人投資家
京都大学経済学研究科卒。経営指標や資本効率に基づいた経済・経営記事を投稿しています。

【おしらせ】「年金」に関する論考を緊急募集中です

官邸サイトより:編集部

2019年6月後半の緊急公募原稿のテーマは「年金」です。参院選が近づく中、「老後資金に2000万円が必要」とした金融庁の報告書を巡って、政局が緊迫してきました。政権与党が守勢に回る場面が目立ちますが、野党も現実的な対案を持っているようには思えません。

参院選で「争点」に浮上しつつある年金問題。あなたのご意見をお寄せください。

投稿は800〜2000字。お名前・ご所属・肩書・簡単なプロフィール(100字程度)などを記載して、メールに直接書いていただいても、テキストファイル、ワードファイルの添付でも構いません。原則実名制で、ペンネームの使用は認めておりませんが、著述活動の実績等で特例を認めることもありますので、編集部にご相談ください。

投稿を希望される方はアゴラ編集部(agorajapan@gmail.com)編集部あてにお送りください。(そのほか詳しい投稿規定はこちら)。アゴラ執筆陣の皆さまもふるってご投稿ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑