バロンズ:米経済と米株市場は、Fedの利下げに根拠を与えているか

2019年06月16日 11:30

バロンズ誌、今週のカバーは世界で最も優秀な最高経営責任者(CEO)トップ30を紹介する。米国の追加関税措置をはじめ不確実性が高まるなか、女性のCEOも注目され記事中に写真で取り上げられたのは半導体メーカー大手アドバンスド・マイクロ・デバイシズのリサ・スー氏だ。

マサチューセッツ工科大学出身のスー氏は、IBMが半導体素材として銅からアルミに転換する変化をリードし、AMDに移ってからは同社の再建にも尽力した。女性以外では、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏やアルファベットのラリー・ペイジ氏がランクインしている。反トラスト法違反や個人情報問題などで向かい風に直面するものの、それぞれの業績で果たした両氏の役割が甚大であるためだ。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は6月18~19日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、利下げと米株市場などへの影響を考える。抄訳は、以下の通り。

経済が必要としない利下げ、市場が求める―The Rate Cut the Economy Doesn’t Need — but the Markets Do.

「誰を信じるつもりなのか。あるいは私か自分自身の目か?」とは、20世紀前半を中心に米国でコメディアンとして全米を風靡したグルーチョ・マルクスの言葉である。その疑問は、今のFOMCにも当てはまるのではないか。足元で、市場関係者は利下げを織り込み、今回でなくとも7月に踏み切るとの見方が有力となっている。

利下げ観測の高まりに反し、米株市場は10年目の強気相場を謳歌している。米経済といえば堅調そのもので、米1~3月期実質GDP成長率・改定値は2018年の成長率を上回り、失業率は少なくとも半世紀ぶりの低水準だ。悪材料としては、インフレ目標を下回る物価だろう。それでも、7月30~31日開催のFOMCでは、86.4%の利下げが織り込まれるだけでなく、9月17~18日のFOMC、12月10~11日のFOMCと合わせ、年内3回の利下げすら織り込み始めている

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作成:My Big Apple NY

Fedは、金融政策をめぐり経済指標次第と強調する。その経済指標は良好で、米4~6月期実質GDO成長率も、アトランタ地区連銀によれば前期比年率2.1%増となっている。前期との大きな違いは、個人消費が同3.9%増と1~3月期の同1.3%増からの大幅改善が見込まれている点だろう。3月FOMCで、2019年の実質GDP成長率見通しは1.9~2.2%増と、長期見通しの1.8~2.0%増をわずかに上回るレンジだったことを踏まえると、足元の米経済はFedの予想を上回る成長を遂げつつあると言えるのではないか。物価自体も刈込平均(CPIを構成する品目の価格変動で、1年前と比較し上下の変動率が高い品目を10%ずつ除く手法)は、インフレ目標値2%に近い。JPモルガンやクリーブランド地区連銀も、同様の見解を展開している。

一方で、米景気循環研究所のインフレ見通し指標(U.S. Future Inflation Gauge)は、2018年12月まで、計9回の利上げが過度であった可能性を示唆する。

米債市場はFedの利下げを織り込み、3ヵ月物米財務省短期証券(Tビル)の利回りは米10年債利回りを5週間上回り、景気後退のサインを点灯させている。もっとも、債券利回りの低下は世界的なもので、貿易摩擦など不確実性などFedが制御できる範囲を超えたところで発生しているといって過言ではない。確かに、ドイツ銀行によれば独10年債利回りを含め世界で12兆ドルの債券がマイナス金利にあり、米債に資金が流入してもおかしくないだろう。

金融市場で、Fedが利下げ観測を叶えるとの見方が有力だ。VIX指数先物でも同様の動きが現れ、JPモルガン・チェースのグローバル・マーケット・ストラテジー・グループによれば、ショート・ポジションが積み上がりつつあるという。VIX指数先物で同様の事態が最後に発生したのは2018年1~9月で、当時は米株に強気だったと同時に低ボラティリティが継続すると考えられていた。結果的には、2018年10月以降の調整相場を生んだわけだが、米中通商協議や大阪で開催されるG20首脳会議で物別れとなれば、再びVIX先物指数のポジションが相場変動の引き金を引きかねない。

S&P500種株価指数が2019年末に3,000を超え、足元から4%高を遂げるとのストラテジストの見方は、株価収益率(PER)が18倍と割高感が増すことを意味する。新規株式公開(IPO)も、ITバブル真っ盛りにあった1999年以来の規模だ。Fedがパーティーで提供されるパンチボウルにドリンクを提供すると、ウォール街が考えていることは間違いない。


Fedが少なくとも年内2回利下げするとの観測が高まる半面、米5月小売売上高米5月鉱工業生産など、米経済指標はそれほど経済の悪化を示していません。米5月NFIB中小企業楽観度指数のほか、米5月消費者信頼感指数などで現れるマインドも、下振れせず。強いて言うなら物価に加え、米5月ISM製造業景況指数6月ベージュブックで追加関税措置に伴う経済減速が現れる程度。投票権を有するシカゴ地区連銀のエバンス総裁ボストン地区連銀のローゼングレン総裁に加え、アトランタ地区連銀のボスティック総裁などハト派よりの地区連銀総裁が利下げに積極的でないはずです。とはいえ、市場がFedの利下げを織り込む以上、パウエルFRB議長率いるFedは利下げを示唆しなければ、クレディビリティに関わってしまう。Fedの今後の行動を、そしてパウエルFRB議長を指名したトランプ大統領の決断をどう評価するのでしょうか。

(カバー写真;Federalreserve.gov/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年6月15日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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