さぁG20、首脳宣言と個別案件との闘争

岡本 裕明

G20がいよいよ開催されます。しかもこれほど重要案件が並ぶG20も久々ではないでしょうか?世界からの注目度もいつも以上に高いでしょう。その議長を務める安倍首相の手腕にも当然期待が高まるわけですが、果たして期待感の通り展開するのでしょうか?

昨年7月の前回G20(ブエノスアイレス)の記念撮影で、トランプ氏と談笑する安倍首相(官邸サイトより:編集部)

今回のG20サミットは全体会議よりもそれに付随して行われる個別会議に注目が集まります。その最たるものがトランプ大統領と習近平国家主席の個別会合であります。個人的には無難にこなす、とみています。

この無難とは貿易摩擦問題については継続協議とし、アメリカが時間的猶予を与える譲歩をするとみています。トランプ大統領としては手綱を緩めなければそれでいいわけです。習近平国家主席としては北朝鮮からの親書なりメッセージをトランプ大統領に渡しながら今後の北朝鮮問題について対話路線を続けることで中国としてもアメリカと絶縁関係にならない最大限の政治的勝利を狙うことでしょう。

トランプ大統領が今回、中国問題を最優先事項に持ってこないと考える理由は足元のイランとの関係悪化の対応にエネルギーを費やされるからであります。当然ながらアメリカの来年の大統領選も視野に入れながら強いアメリカ、経済が成長する(=株価が上昇する)アメリカを打ち出すものとみています。

ではこれはトランプ大統領個人の情熱なのか、といえば私はそんなことは微塵にも思っていません。舞台の上で熱演する大統領の演技力は素晴らしいと思いますが、舞台下で厳しい目線を送っている人たちがいるはずです。それは誰なのかといえば、ユダヤでありましょう。

国家覇権の戦い、ユダヤ対中華対イスラム対キリスト(特にカソリック)という対立軸でみると分かりやすいのかもしれません。今起こりつつあるのは第2のブロック経済化への危機であります。1度目は1930年代に起き、各国が関税競争を行い自国の利益を追求し、第二次世界大戦へつながっていきました。当時のブロックはスターリング ブロック、フラン ブロック、マルク ブロック、ドル ブロック、円ブロックでした。つまり通貨をベースにしたブロック化であります。

今回は宗教や将来の経済力を考えたうえでのけん制であります。各国はそのブロック経済がどれほど悪影響を及ぼすか歴史から勉強しているので当然ながら一気呵成にはそうならないのですが、相手を挑発し、ギリギリの選択を迫るのがアメリカ流、そしてトランプ大統領の演技力であります。

このような背景の中で安倍首相がG20でどういうかじ取りをみせるのか、注目されます。今回の主要テーマは8本。世界経済、貿易/投資、イノベーション、環境/エネルギー、雇用、女性のエンパワーメント、開発、保健であります。一般的には経済や貿易/投資のテーマに注目が集まりますが、このテーマだけ見れば首脳共同宣言は難しいのかもしれません。特に「反保護主義」というワーディングは過去のサミットでもアメリカの反対で削除された経緯があり、G20におけるアメリカの我儘が今回も通るとみています。個人的には全体会議はあまり期待感がありません。

個別会議では米中会議のほかに安倍首相がほぼ全首脳と会合を設定している中で韓国を外した点が注目されます。日中戦争の時、近衛文麿首相(当時)が「(中国の)国民政府を相手にせず」と発言したことは今でも知っている方はいらっしゃるでしょう。今の安倍首相はまさに「韓国政府を相手にせず」であり、その厳しい姿勢が韓国への強烈なメッセージとなるとみています。

それ以外にトランプ/プーチン会談は注目だと思います。これがうまくいけば米ロ関係は改善に向かうとみられています。「敵の敵は味方」といいう言葉がありますが、この演出は「敵の味方は味方」という奇妙なロジックになります。プーチン氏そのものも一時の勢いがなく、妥協は大いにあるかと思います。

G20の枠外としては天皇皇后両陛下がフランス マクロン大統領ご夫妻との宮中の昼食会が開催される点が異彩を放っているように感じます。日仏間はゴーン氏問題や日産問題などで揺れている中でそれを払しょくするかのような昼食会設定は上手な外交手段だったと思います。

さてこれから数日はメディアはネタに困ることはないでしょう。注目です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年6月26日の記事より転載させていただきました。