統一地方選を終えて③選挙実務から見たITの可能性

統一地方選を終えて①
統一地方選を終えて② からの続きです。

世間はすっかり参院選モードに入りつつありますが、当ブログは引き続き、統一地方選を終えての話題です。

2019年統一地方選のポスター掲示板(渋谷区議選より:編集部撮影)

政策や公約に関して

本来であれば地元の地方議会選挙や首長選挙は、住民の生活により密着した行政・政治の方向性を決めるので、より多くの関心を得ても良さそうなのですが、実際は投票先を決めるのに苦労します。投票率の低さも、そもそも誰に投票して良いのかわからない、何を基準に投票して良いかわからない、といった理由もあるのではないでしょうか。

投票先を決める手立てで身近なものは選挙ポスターと選挙公報なのですが、フォーマットもバラバラで正直とても読みにくい。ある程度投票先が絞れてる状態(支持政党が決まっている)から候補者を選ぶくらいには使えますが、ゼロから候補者を選ぶ場合は厳しいですよね。

地域の行政サービスに触れる機会が多い場合、それらの質や効率の改善に尽力できそうな候補を選ぶというのも考えられます。候補者も当然それらの点は意識しますので、ほとんどの候補者が、子育て支援、介護支援、安心・安全な街づくり、という3点セットを主要政策課題にもってきます。結果ほとんどの候補者が多かれ少なかれ似たような主張を述べている印象を受けてしまい、結局誰を選んで良いかわからない最初のステップに戻ってしまいます。

そうなると、日頃からの議員個人の後援会活動や情報発信と政策提言、区議団・総支部としての情報発信やミニ集会の開催など時間をかけて地道に自分たちの政策、政治姿勢、活動実績などを理解してもらうことが重要という、ごく普通な結論になってしまいます。ポスターや選挙公報、選挙期間中の運動も重要なのはもちろんなのですが、それまでの期間にできることもやはり重要ではあります。

新人候補となると議員活動の実績もないので、公約・政策作りも大変です。身近な行政サービスの拡充に関しては先ほども述べましたがほとんどの候補者が「子育て・介護・安心な街」という3点セットの改善を主張しますので、なかなか実績ある現職候補と比べると新人候補は厳しい立場になります。

自民党の新人候補ならではの公約や政策が提示できると良いのですが、それも日頃の政策研究などに時間をかけないと説得力ある主張には繋がりません。起業支援・IT活用なども若手ならではの主張として良いと思いますが、都心の区においては都市・地域開発全般に関してもう少し詳しい政策を提示できる候補者がいてくれても良かったかなとは思います。

確かに計画段階から完成まで時間がかかる開発案件は1期4年の任期中に収まる話ではなく、新人候補にはハードルの高い案件なのでしょうが、首長選挙の対応にも関わることなので、総支部単位でも勉強会などおこない、近隣区の区議団・総支部、都議会・国政議員との連携という自民党が得意とし大きな付加価値を出せるこの分野での活動に是非とも重点を置いて欲しいと思います。

シルバーブレット/写真AC(編集部)

政治におけるITの活用に関して

政治の世界でのIT・ネット戦略というと一般的に

  • 活動報告・選挙広報へのネットの活用
  • 特区や成長戦略などの政策課題としてのIT戦略

などの二つが多く議論されるのですが、地味ですが大切な活用法として

  • 政党事務処理におけるITの活用

というのがあります。簡単にいうと日常の政治活動をITを使って効率的におこないましょう、ということです。ところが自民党においては議員、各支部幹部、党員などの高齢化が進んでいるのと、支部の資金不足からIT技術の導入・投資が難しい状況です。象徴的な事例として、いまだに事務連絡や書類の送付にPDFファイルを作成してメールで添付ではなく、FAXが使われていることが多いのです。

今回、渋谷総支部において

  • 共通チャットツール(アプリ)の導入、各種ファイルの共有
  • 総支部ドメインの個人メールの割り当て
  • 新人候補のスケジューラーの統一化とシェア化

などをおこない、情報共有のIT化を試行してみました。

結論としては、業務効率の改善には一定の効果はあったと思いますが、初期の導入手続き(各議員の端末にアプリのダウンロードやメアドの設定をおこなう)と、その後のIT関連の管理がなかなか大変でした。民間の会社でもそうですが、規模がある程度大きくなり、社員個々人での設定が難しくなってくると、IT関連の管理を専門に行う担当スタッフが必要になってくるのですが、政党支部にも同じことが言えます。

支部における事務作業のIT化を進めれば、

  • 50代以下の層とのコミュニケーションが円滑になり女性部や青年部の若返りも可能になる。
  • 各議員が事務作業にかける時間とコストを削減でき、政策提言や情報発信により多くのリソースを使うことができる。
  • 政治活動・選挙活動をより効率的にかつ個人情報の保護や公職選挙法など各種法令に遵守しながらおこなうことができる。

などのメリットがあるので、是非とも各支部においても事務関連IT技術の導入を促進してもらいたいです。

なお、意欲はあるけれども、どこから手をつけて良いかわからない、という状態の支部があれば相談に乗りますので、お気軽にご連絡ください。

もう少しだけ続きます。

与謝野 信 ロスジェネ支援団体「パラダイムシフト」代表

1975年東京生まれ。英国ケンブリッジ大学経済学部卒業後、外資系証券会社に入社し、東京・香港・パリでの勤務を経験。2016年、自民党東京都連の政経塾で学び、2017年の千代田区長選出馬(次点)から政治活動を本格化。財務相、官房長官を歴任した故・与謝野馨氏は伯父にあたる。2019年4月、氷河期世代支援の政策形成をめざすロビー団体「パラダイムシフト」を発足した。与謝野信 Official WebsiteTwitter「@Makoto_Yosano」Facebook