山本太郎の未来形?米民主党を異常に左傾化させるネット献金の進化(特別寄稿)

2019年06月27日 06:10

れいわ新選組の山本太郎氏が個人献金を数か月かけて2億円以上集めたことが話題となっている。しかし、個人献金の本場である米国ではネット献金額は既に桁違いのレベルにまで発達しており、ネット献金を行うためのネット献金システム自体の革新も起き続けている。

活動資金をネットでほぼ集めて当選も

米国でのネット献金は主に民主党側の候補者による活用が盛である。バーニー・サンダース上院議員は大統領予備選挙出馬宣言から24時間で約22.5万人の人々から6億円以上の資金を獲得した。

Michael Vadon/flickr(編集部)

そのほかの予備選挙候補者でもサンダースに匹敵する規模の資金を得た者もおり、選挙戦自体が「ネットで小口献金をどれだけ集められているか」をPRする、という形にシフトしつつある。予備選挙候補者向けのテレビ討論会の登壇資格にも20州以上から一定の小口献金を集める(実質的にネット献金が有効)ことができた人物だけが参加できる旨が明記されている状況だ。

このような民主党側のネット献金の活発化は大統領選挙に限った話ではない。昨年実施された2018年中間選挙でも下院選挙の勝敗を決する接戦選挙区の大半で、民主党新人候補者は共和党現職議員を大きく上回る献金額を確保した。

従来までは豊富な資金力で圧倒してきた共和党現職議員が資金調達面で民主党の新人対抗馬にまくられたことは、共和党の連邦下院過半数割れという事態を引き起こす大きな要因の1つとなった。

当選した民主党下院議員の中にはその活動資金をほぼ全てをネット献金に依存する議員も存在すらしていた。

民主党の活発なネット献金を支える土台「Act Blue」

民主党のネット献金分野における競争力を支えるポイントは「Act Blue」というネット献金プラットフォームにある。Act Blueは2004年に設立された民主党側・進歩派側の組織・候補者のためのネット献金プラットフォームであり、形式上は政党から独立した非営利団体形式で運営されている。

Act Blueのポータル画面:編集部

同サイトを通じた過去の資金調達合計額は3000億円を超えており、特に2014年~2018年までの資金調達額は数倍に膨れ上がっている。現在では連邦レベル(国政)だけでなく、州レベルでの政治家・組織の利用も始まっており、この仕組みが民主党側の資金調達を支える土台となっている。

Act Blueの利用時の最大の特徴はレコメンド機能にある。単純にA候補者に寄付を〇ドル支払う、というだけでなく、利用者は「A候補者に〇〇の政策をさせたいので寄付を募る」という形で同サイト上にプラットフォームを作れる。

献金先を検討している人が同サイトで政治家の名前を検索すると、それらのリストが表示される仕組みとなっている。また、同時に他の政治家に対する寄付のレコメンドなども表示されるため、一度同サイトに登録した利用者に次々と更なる献金が促される仕組みとなっている。

このように政治的意図が込められる形で連鎖的に少額寄付を積み重なっていくことで、民主党内における進歩系(左派系)献金者の政治的影響力を高める結果を生み出している。昨今の民主党候補者らの過度な左派傾斜は、この仕組みによる資金調達構造の変化の影響を明確に受けたものだと言えるだろう。

民主党に遅れて重い腰を上げた共和党

一方、共和党は民主党のネット献金プラットフォームであるAct Blueに対して完全に後塵を拝してきた経緯がある。民主党のAct Blueがオバマ政権下で着実に発展していく姿をしり目に、2009~2016年に現職の大統領が存在しなかった共和党側は統一的なネット献金プラットフォームを構築するための政治的推進力が不足してきた。

また、トランプ大統領誕生後も、同大統領に対して不信感を抱く共和党関係者らが同大統領とネット小口献金者リストを事実上共有することを忌避した結果として、トランプ大統領、上下両院共和党委員会、知事・議員らが別々の単純な献金決済システムを採用し、お互いの小口献金者リストの相乗効果が全く発揮される状態が生まれなかった。

WinRedポータル画面:編集部

しかし、中間選挙での下院大敗を受けて、共和党もようやく重い腰を上げることになった。危機的状況から半年を経て、現在のトランプ選対トップのパスケール氏がネット選挙の専門家であることを背景とし、トランプ大統領、メガドナー、議員らが共和党側のネット献金プラットフォームの立ち上げに尽力してきた結果、Win RedというAct Blueと同種のサイトの立ち上げにようやく漕ぎつけた。

これによって、多くの共和党候補者たちはトランプ大統領の小口献金ネットワークにアクセス可能となるだろう。依然として一部の共和党議員の中にはWin Redの利用に抵抗感を示す人々もいるが、資金面で劣勢に立たされている連邦下院候補者を中心に利用者が拡大していくことが予測される。今後は資金調達面を通じても各共和党議員に対するトランプ大統領の影響力は飛躍的に拡大していくことになる。

山本太郎後援会FBより

日本ではネット献金プラットフォームどころか、ネット献金自体がまだ一般的ではない。それは従来までの仕組みが党派性を無視した「中立的な献金サイト」である点が大きいと思う。やはりそれでは小口献金者は気分として「乗れない」のだ。

今後、日本でもネット献金が普及していくものと思うが、それは米国のように党派性が強いものになっていくだろう。冒頭に触れたれいわ新選組の資金調達事例はその先駆け的な傾向を示していると言える。

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
渡瀬 裕哉
国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑