国民民主党が進める「家計第一」の経済政策とは何か

2019年06月27日 11:30

なぜ「家計第一」か

国民民主党サイトより:編集部

私たち国民民主党は「家計第一の経済政策」を打ち出しました。
児童手当を増やしたり、賃貸住宅の家賃補助を強化したり…個々の政策メニューだけを見ると、バラマキではないの?そう思う方がいるかもしれません。

しかし、これらはあくまで手段に過ぎません。
私たちは「家計第一」を、あくまで経済政策として考えています。なぜなら、今の日本経済には、消費を軸とした好循環を作り出すことが不可欠だと考えるからです。

アベノミクスが豊かにしたのは企業部門だけ

経済は3つの部門で成り立っています。政府部門、企業部門、家計部門の3つです。

アベノミクスは、企業部門は豊かにしました。しかし、残念ながら、その恩恵は家計には届いていません。安倍政権による法人税減税と金融緩和による円安政策が功を奏して、特に輸出関連企業は過去最高益をあげ、企業のいわゆる内部留保も446兆円を超えるほど大きくなりました。

その一方、実質賃金の伸びは過去6年間の平均でマイナス0.6%で、消費も振るわず、最新のGDP統計でもマイナスを記録しています。

近江商人の言葉に「三方よし」というのがあります。「売り手」も「買い手」も「世間」も良くならなくてはならないという思想ですが、今の日本経済は、「企業」ばかり良くて「家計」が割をくっているので、バランスが悪いのです。

日本経済最大の問題 消費不況

よく、失われた20年、30年と言われますが、この長期にわたる経済不況の大きな原因は、一言で言うなら、消費の低迷による需要不足です。これは数字を見ると明らかです。

2016年の消費は292兆円ですが、ここから、持ち家について所有者が家賃を払ったと仮定して計上されるバーチャルな消費である「帰属家賃」の約50兆円を除くと、実際の消費額は242兆円です。また、消費税をはじめとした間接税も28兆円あるので、家計が実際にモノやサービスの対価として実際に支払った消費額は、間接税を除いた214兆円です。

過去20年間で、消費は2兆円減少

日本の名目GDPのピークは1997年で、この時の消費は280兆円ですが、先ほど述べた「帰属家賃」や「消費税などの間接税」を除いた実際のモノやサービスの消費額は216兆円です。

つまり、2016年の214兆円と比較すると、2兆円減っています。統計上は、280兆円から292兆円に12兆円も増えたことになっていますが、これは統計上のマジックに過ぎないのです。実際の消費が低迷したこと、これこそが日本経済の低迷の一番大きな要因です。

家計所得が増えないから消費が伸びない

では、なぜ、消費が低迷したのか。それは家計所得が増えていないからです。

2016年の家計所得は350兆円となっていますが、先ほどの「帰属家賃」が、今度は持ち家の所有者の家賃収入として計上されています。これが約42兆円。(先ほどの50兆円との違いは、修繕費が差し引かれているからです。)それから、社会保険料の事業主負担分約41兆円は、企業が支払うものですが、国民所得統計上は、これも家計所得として計上されています。これもバーチャルな所得に過ぎません。そこで、これら「帰属家賃」42兆円と「事業主による社会保険料負担」41兆円を差し引くと、実際の所得は268兆円しかありません。

過去20年間で、家計所得は約40兆円減少

GDPのピークである1997年の家計所得は378兆円ですが、上記の「帰属家賃」と「事業主による社会保険料負担」を差し引いた実際の所得は309兆円になります。これを2016年の268兆円と比較すると、41兆円、率にして約13%も減っています。実際の家計所得がこれほど落ち込んでいるわけですから、消費が伸びるはずもありません。繰り返し言いますが、消費が低迷した最大の要因は、所得水準が大幅に低下したからなのです。

農家の所得も減少

所得の変化をもう少し詳しく見てみると、まず、大きく変化したのが賃金・俸給です。これが245兆円から228兆円に17兆円、約7%減っています。

次に、34兆円から15兆円へと約56%も減っているのが「混合所得」です。
「混合所得」とは自営業者の所得のことで、自営業者としては「農家」が最大です。この農家を含めた自営業者の所得が伸びないことが、特に、地方における消費低迷の原因です。

金利収入も減少

また、「財産所得」が30兆円から24兆円に約6兆円減っていますが、その最大の理由は、超低金利を反映して、金利所得が大きく減ったことです。

このように、「サラリーマンの賃金」も、「農家を含む自営業者の所得」も、そして「金利収入」も、すべてが減ったことで家計所得が低下しているのです。そんな中、消費が微減に留まったのは、所得のうち貯蓄にまわす比率を大きく下げて、消費にまわる比率を上げたからです。だんだん、貯金できる余裕もなくなってきているわけです。

これからは輸出に頼れない

これまでの経済成長は、輸出頼みでしたが、中国経済の成長も曲がり角に来ていますし、米中貿易戦争の長期化を考えると、これからは外需に頼ることはできなくなると思います。

だからこそ内需が重要なのです。そして、内需を拡大するには、GDPの約6割を占める消費を増やすしか方法はありません。消費が増え、企業が売り上げを伸ばし、設備投資も出てくる、そんな消費を軸とした好循環を生み出すしかありません。2020年代の日本経済は、消費主導型にならざるを得ないと考えます。

年金財政安定のためにも賃金上昇率3%が必要

ちなみに、2014年の年金の財政検証の結果によれば、名目成長率2%、名目賃金上昇率3%を実現できれば、年金財政は安定するとされています。逆に言えば、「100年安心の年金制度」を実現するためには、「賃金」と「消費」が安定的に増えていくことが不可欠なのです。

次に、少し大きな視点で、経済の変化を見てみます。

過去20年間で、企業所得は約40兆円増加

2016年の企業所得(銀行など金融機関を除く)は130兆円です。ここに、統計上は家計所得として計上されている「社会保険料の事業主負担分」33兆円を会社の所得として含めると163兆円になります。

1997年の企業所得が125兆円ですから、この間、38兆円、約30%も増えている計算になります。家計所得が41兆円減少していることを考えると、賃金が上がらなかった分だけ企業所得が増えたということになります。

資金の流れのバランスが崩れている

次に、国全体の資金の流れを見てみます。
1991年には、家計部門の資金余剰、つまり貯蓄は約53兆円ありましたが、2016年には約11兆円となり約8割も減少しています。一方、法人部門(金融機関を除く)は、2016年には約25兆円の資金余剰となり、家計の貯蓄11兆円を超えています。

本来なら、企業部門は、投資などを行うため資金不足になるのが正常の姿です。実際、日本でも1997年までは資金不足でしたが、これが今、資金余剰に変わっています。
企業がこれだけ貯蓄超過になるのは異常であり、経済活動を活性化させるためには、企業の超過貯蓄を減らして家計の貯蓄を増やすことが重要です。

こうした現状を改善するためには、家計の可処分所得を上げ、家計の消費を増やす総合的な政策が実施することが必要なのです。それが、私たちの進める「家計第一の経済政策」なのです。

以下、その具体策を述べます。

*上記の諸計数は、中前忠著「家計ファーストの経済学」日本経済新聞社刊を参考にさせていただきました。

消費税は凍結

まず、今年10月からの消費税増税は凍結です。1月~3月期のGDP速報値でも消費はマイナスでしたし、国内外の経済も不透明感を増しています。今、消費税を上げれば、かえって消費の腰を折ってしまい、不況の扉を開けることになりかねません。

さらに、今後、仮にリーマンショック級の世界経済の混乱が発生した場合には、消費税の減税も、消費を下支えする経済対策の一環として検討すべきと考えます。とにかく、家計所得を増やさない限り消費は伸びません。

なお、最低賃金を速やかに引き上げるべきとの意見もありますが、中小企業には賃上げ能力がそれほどありません。まずは、家計の負担を軽くして消費を増やし、国内企業の売り上げを伸ばし、賃上げできる環境を整えることが順番としては正しいと考えます。この順番を間違えると、韓国のようになってしまいかねません。

法人税には「最低税率」導入し、賃上げ減税を

法人税は国際的に下げ過ぎです。国際競争力の観点から、各国とも法人税の「引き下げ合戦」に巻き込まれています。これでは、法人税は基幹税としての役割を失ってしまいます。まさに、G20などの国際的な協議の中で、協調して法人税率の適正化を図るべきです。「最低税率」について国際的合意を取り付ける必要があります。また、GAFAと言われるプラットフォーマーに対する課税の強化、適正化も必要です。さらに、今後はデータが価値を生み出す源泉となるので、データを課税標準とした新たな法人課税のあり方も検討していくべきと考えます。

そして、法人税減税を行う場合であっても、やみくもに税率を下げるのではなく、従業員の賃金を上げた企業には減税を行い(賃上げ減税)、そうではない企業には高い税率を適用するなど、労働分配率の向上につながるメリハリの効いた法人税改革を行うことが「家計第一の経済政策」を進める上では重要だと考えます。

マイナス金利はやめて金利を正常化

デフレを脱却するために、日本銀行は金利を引き下げ続けてきたわけですが、マクロで見ると、企業部門は資金余剰セクターになっています。資金が不足しているわけではないので、企業は金融機関からお金を借りる必要がないわけです。加えて、マイナス金利で地銀の経営が悪化しています。さらに、家計の金利所得の減少が、消費低迷という副作用を生じさせているのは、先ほど述べたとおりです。

日本には、純個人金融資産が1500兆円あるので、仮に1%の金利がつけば、15兆円が家計に移転することになります。とても大きな額です。この額の半分でも消費にまわれば、GDPの名目成長率を1%以上増加させることは可能でしょう。

児童手当を増額し、3人子どもがいる家庭には1000万円給付

可処分所得を増やすためには、家計負担の軽減策も重要です。特に、若い世代の家計負担の一番は、なんと言っても子育て・教育の負担でしょう。小中学校から大学まで公立に行った場合でも、一人当たり最低でも1000万円はかかると言われています。

そこで、現在の児童手当を月15000円に拡充し、中学卒業までの交付を高校卒業まで延長します。こうすれば、子どもが3人いる家庭には合計約1000万円が給付されます。子ども1人分の子育て・教育費用を、公的にサポートすることができます。

また、多額にのぼる不妊治療を保険の適用対象とするなど、子どもの妊娠、出産、教育にかかる負担を徹底して軽減し、家計の可処分所得を増やします。

賃貸住宅の家賃補助を

次に家計にとって住居費も大きな負担です。現在、住宅ローン減税など、持ち家の取得については様々な支援策がありますが、賃貸住宅への国の支援は乏しいのが実態です。現在、約1500万世帯が賃貸住宅に住んでおり、高齢者、学生、若い現役世代の中にも賃貸住宅にお住いの方も多数います。しかも、調査によると、40歳未満の女性にとって、家賃負担が可処分所得の25%を占めています。男性だと約20%が家賃負担です。いずれにしても、家計の大きな負担になっています。そこで、年収500万円以下の世帯で一定の条件を満たす場合には、月額最大1万円を支援し、可処分所得の向上につなげていきます。

農業者に営農継続可能な所得を補償せよ

自営業、とりわけ農家の所得が低下していることも、消費低迷の1つの要因です。そこで、営農継続可能な所得を補償するため、販売価格と生産コストの恒久的な差額を補填する「戸別所得補償制度」を復活させます。欧米でも農家所得の大部分は公的支援で賄われています。また、国際的な生産方法であるGAP基準を満たす形で生産する農家には、加算措置(GAP加算)を上乗せし、環境や食の安全に配慮した農業を応援します。

農家の所得が増えれば、地方における消費が盛り上がり、地域経済の活性化につながります。農業者戸別所得補償制度の復活は、家計第一の経済政策を進めるためにも重要なのです。

子育て・教育や、研究・開発への投資は国債発行で

最後に、家計第一の経済政策を進めるための財源について述べたいと思います。
平成の30年間で、国の予算規模は約1.7倍になりました。同時期に、年金、医療、介護などの社会保障関係費は3.3倍になっています。借金返しである国債費は約2倍です。しかし、教育や科学技術の予算は、30年の間、ほぼ横ばいです。この間、中国もアメリカも研究開発の予算を大幅に増やしています。これが経済成長や技術力の差につながっています。

さらに、今後2042年まで65歳以上の高齢者の数は増加し続ける見込みなので、社会保障の予算を削って教育や科学技術の財源を見つけることが困難です。また、増税も簡単ではありません。では、乏しい教育・科学技術の予算が今のままでいいのでしょうか。そんなことはありません。

そこで、私が提案するのが「こども国債」の発行です。具体的には、将来の経済成長や税収増につながる支出については、幅広く国債発行による財源調達を認めるようにします。今の財政法は、橋や道路などの公共事業に対してのみ国債(建設国債)の発行を認めています。橋や道路は将来の経済成長につながり、また、将来世代も便益を受けるので、将来の世代にも負担してもらうのが合理的との考えによるものです。しかし今や、知識や技術こそが富の源泉になる時代で、人や技術こそが未来に残すべき最大の資産です。だからこそ、教育や科学技術関係予算の財源についても、国債発行で調達することに合理性があると考えます。

まだ個人的な粗々の計算ですが、成長と税収増につながる分野として、①教育・子育て、②科学・技術、③防災等の社会インフラ整備の重点3分野には、今後20年間で約300兆円規模の投資を行い、GDPの成長率を1%程度、押し上げることを可能にしていきたいと考えています。

「消費を軸とした好循環」と「未来への大胆な投資」が鍵

このように、「家計第一の経済政策」は、家計の可処分所得を増やし「消費を軸とした好循環」を生み出すことに力点に置きながら、同時に、教育分野をはじめとした「未来への大胆な投資」を行うことで、日本経済の潜在成長率を引き上げる経済政策です。

「消費を軸とした好循環」
「未来への大胆な投資」

これらは、いずれもアベノミクスには欠けている要素です。

国民民主党は、この「家計第一の経済政策」を進めることで、日本経済を覆う閉塞感を打ち破り、安心と希望のある日本社会をつくりあげていきます。


編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2019年6月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。

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玉木 雄一郎
衆議院議員(香川2区、国民民主党代表)

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