バロンズ:Fedプットは、今回も効果を発揮するのか

2019年07月01日 11:30

バロンズ誌、今週のカバーは新規株式公開(IPO)ラッシュを取り上げる。ITバブルが崩壊する直前、2000年にIPOは花盛りを迎え、例えばペット向けオンライン小売ペッツ・ドットコムは売上600万ドル以下、創業から約1年足らずでIPOを実施し、バリュエーションは3億ドル以上と判断された。

同社はそれから1年以内に廃業に追い込まれ、投資家は全てを失ったが、新たな伝説を生んだ。ペッツ・ドットコムの最高経営責任者(CEO)だったジュリー・ワインライト氏は2011年、高級品の中古販売のザ・リアルリアルを立ち上げ、28日にIPOを実施し時価雄額は16.5億ドルに達した。

足元の状況とITバブル期には類似点がみられ、2019年のIPOは2000年につけた過去最高の970億ドルを超える見通しだ。しかし、ペッツ・ドットコムとザ・リアルリアルのように大きな違いもある。例えば、ザ・リアルリアルの2018年の売上高は前年比55%増の2億740万ドルで、注文数は同42%増の160万件に及んだ。つまり、当時と違って実績がある企業がIPOに踏み切っている。その他の相違点、今後の見通しについて、詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトは基本的に名物コラムのアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリートを定点観測していますが、今回はストリートワイズをお届けします。抄訳は、以下の通り。

Fedプットは機能せず、利下げは米株の打撃に—The ‘Fed Put’ Is Kaput and Interest Rate Cuts Might Hurt Stocks.

米株相場は、Fedプットと呼ばれる神話に取り憑かれ、投資家はFedが利下げによって米株相場を支援すると信じてきた。米株相場が急落した5月も同様の動きがみられ、パウエルFRB議長の利下げ示唆と6月FOMCを経て米株は上昇FF先物市場は7月利下げを100%織り込む状況だ。

しかし、利下げが行われなければ投資家は米株売りで反応するのだろう。では、利下げが実施されれば米株ラリーが継続するのかというと、それも難しいのではいだろうか。むしろ米株安に直面しかねない。

確かに、1984年から1998年までFedは利下げを5回行ない、その度に米株は上昇した。ゴールドマン・サックスによれば、上昇率は14〜23%に及ぶ。

当時、5回の利下げのうち4回はアラン・グリーンスパンFRB議長時代に実施された。特に、1987年のブラック・マンデー時の対応が有名で、グリーンスパン・プットと名付けられたものだ。そのグリーンスパン氏は、配管工のような役割を果たしつつ、間欠泉を放置する傾向があった。例えば、ITバブル醸成中の1996年12月には米株高を「根拠なき熱狂」と評し過熱感を抑えたが、金融危機後に米株相場が2分の1、住宅価格が3分の1に下落する前の2006年は、2つの上昇する市場を放置した。

気をつけておくべきは2001年以降、Fedプットが必ずしも奏功していない点にある。Fedが2001年1月に利下げしてから、米株は1年間で12%下落した。2007年9月から始まった次の利下げサイクルでも、1年間に18%下落している。それぞれ、利下げ開始時期と米株が底値をつけた下落率は、41%と54%に及ぶ。

何が違うのか?例えば、2008年の金融危機では保険大手アメリカン・インターナショナル・グループの救済措置に1,800億ドル必要だった半面、1998年にヘッジファンドのLTCMを救済するには銀行団が36億ドルの資本を注入すれば十分だった。

利下げ開始時のFF金利の水準も、これまでとは違う。過去7回の利下げサイクルのうち、最初の3回は利下げ開始時のFF金利が9.5%以上だった。次の3回の利下げ時期は平均6%で、最後にあたる2007年9月時点でも5.25%あった。振り返って現状は、2.25〜2.5%程度だ。

ff

作成:My Big Apple NY

クレディ・スイスのアナリスト、ジョナサン・ゴラブ氏は、超低金利は貯蓄を奨励し設備投資と借入需要を抑えると指摘、株価収益率(PER)を押し下げるとも予想する。UBSも、同様の見解を示す。

では、米株相場はどうなるのか。ゴラブ氏は年内にわたる小幅高を予想、ゆるやかな増益率がPERの低下で相殺されるという。7月に50bpの利下げを予想するモルガン・スタンレーは、7〜9月期に米経済が悪化した場合に10%安を見込む。バークレイズは米中の貿易摩擦が激化した場合(確率45%)、株価は7%下落すると予想し、逆に一時休戦(確率35%)となれば米株は10%上昇すると見込み、米国が景気後退入りすれば(確率20%)、米株は20%安を迎えると想定する。

米株は割高感が強まっているが、過剰な水準というわけでもない。S&P500種株価指数は年初来で16%上昇し、予想PERは16.7倍だ。

Fedは既に、予防的措置として利下げを行なう態勢を整えている。しかし、次の経済減速局面では、利下げ以外の独創的な対応を取る必要に迫られるだろう。


パウエルFRB議長は6月26日、市場の前のめりな利下げ期待をけん制しました過去最高値を更新する勢いの米株相場をにらみ、リスク資産の過度な上昇を抑えようとした意図が垣間みれます。同時に、今年投票権を有していないとはいえダラス連銀総裁など、地区連銀総裁が7月利下げを支持しているようにも見えず、足並みがそろっていない現状に配慮したとも考えられます。

米中首脳会談で最悪の事態を回避すれば、予防的な利下げを行なう必要性が低下するとの算段もあったのでしょうか。結局、米中首脳会談は①米中通商協議再開、③約3,000億ドル相当の中国製品に対する追加関税措置を先送り、②ファーウェイ禁輸措置の解除——で合意しています。中国側に有利な内容で終了したかにみえますが、期限などについては未定。通商協議が順調に進むかも定かではなく、未だ不確実性を残す状況に変わりはないと言えるでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年6月30日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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