トランプ氏の北の核問題解決プラン

高 永喆

6月初め、金正恩はトランプ米大統領に親書を送った。その後、中国の習近平国家主席は急きょ北朝鮮を訪問した。そして今回、トランプ氏が20ヶ国首脳会議(G20サミット)が終わって急きょ訪韓し、金正恩と板門店で会談した。

White House/flickr:編集部

この一連の動きを見ると、米国は中国寄りの北朝鮮を米国寄りの国家(親米国家)に誘導しようとの狙いが垣間見える。トランプ氏は常に「北核問題は急がない」と言っている。それは来年11月の大統領再選を視野に入れたスケジュール調整だろう。

今回、トランプ氏は金正恩氏をワシントンのホワイトハウスに招待したいと言った。今後、トランプ氏も平壌を訪問して、北核問題を平和的に決着できる環境が整う場合、米朝の両指導者の人気は急騰するだろう。米朝首脳が主導する平和ムードのインパクトは当然、トランプ氏の大統領再選を確実にし、金正恩氏も米国から体制保障を認定してもらうきっかけになるだろう。

最近の米国とイランの緊張、米中貿易戦争、そして北の核問題などの国際的な安保環境の変化は、囲碁ゲームに比喩される。

囲碁は戦線もなく衝突もない戦場環境で、最も大きな地(利益)を得るために小さいものを捨てる長期的な布石など“頭脳の戦い”である。

例えば、トランプ氏は先日、イラン攻撃を10分前に取消した。これは、囲碁の“大を獲得するため、小を捨てる長期的な布石”だろう。トランプ氏の愛読書『孫子』に出てくる兵法「戦わずして勝つ」という計算された判断だ。

一歩間違ったら会社が倒産する経営畑出身のトランプ氏の狙いはソフトランディングで、相手が頭下げるまで最大の制裁と軍事的な圧力を継続するだろう。

米中貿易戦争は長引く可能性がある。だが、北の核問題は来年11月の米大統領選挙の数ヶ月前までに平和的な解決が出来ない場合、トランプ氏は支持率を上げるため、対北軍事行動に踏み切る可能性もある。イランは中東平和を脅かしているが、北核・ミサイルと生物化学兵器は米国にとってもっと大きな脅威だ。

北朝鮮は、“核を保有しているから,体制が保証されると同時に米国が敢えて攻撃できないのだ”と受け止めている。しかし、北の核は長期独裁体制を支える有り難いものではあるが、逆に、体制を崩壊させる危険な時限爆弾でもあるわけだ。今後、金正恩氏がどんな選択をするか、体制の存亡を決める決断になるだろう。

(拓殖大学主任研究員・韓国統一振興院専任教授、元国防省専門委員、分析官歴任)
※本稿は『世界日報』(7月3日)に掲載したコラムに筆者が加筆したものです。

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