バチカン:36年前の少女行方不明事件の謎に迫れ

2019年07月08日 11:30

バチカンで11日、サン・ピエトロ大聖堂近くのドイツ人巡礼者の墓地(Campo Santo Teutonico)に埋葬されている2つの墓の棺が開けられ、その遺骨が36年前に行方不明となったバチカン職員の娘、エマヌエラ・オルランディ(当時15歳)のものかどうかを法医学に基づいて検証する。バチカン放送独語版が2日、娘の家族関係者の情報として報じた。

▲Campo Santo Teutonico墓地の情景(KNA通信から2016年9月8日、撮影)

▲Campo Santo Teutonico墓地の情景(KNA通信から2016年9月8日、撮影)

現場には墓の所有者関係者と36年前に行方不明となった家族関係者が立ち会う。法医学技術で遺骨の年齢やDNAなどが検証されることになっている。行方不明となった娘の家族関係者は、「墓の棺の鑑定・検証を承認してくれたバチカンのパロリン国務長官に感謝する。家族としてはなんらかの事実が判明することを願っている」と述べている。

今回の墓の検証は、オルランディ家の Laura Sgro弁護士に一通の書簡が届き、その中で今回開く墓の棺の中に「エマヌエラの遺骨が入っている」という匿名情報を入手したことがきっかけだ。書簡には今回掘り起こす2つの墓の写真も入っていたという。そのため、同弁護士はパロリン枢機卿に墓の再鑑定・検証の認可を要請したという経緯がある。

このコラム欄でも過去、2回報じたが、 通称「オルランディ行方不明事件」は1983年6月22日に遡る。法王庁内で従者として働く家庭の15歳の娘、エマヌエラ・オルランディさんはいつものように音楽学校に行ったが、戻ってこなかった。関係者は行方を探したが、これまで少女の消息、生死すら分からずに36年の歳月が過ぎた。その間に様々な憶測や噂が流れたが、娘がなぜ行方不明となったか、まだ生存しているのか,それとも亡くなったのか、亡くなったとすればなぜか、等の問いには依然、解明されずにきた(「バチカン、少女誘拐事件に関与」2017年9月21日参考)。

これまでの代表的な説は、①少女は誘拐され、殺害されたという誘拐殺人説、②マフィア関与説がある。いずれもそれを裏付ける証拠はない。ある者は「少女はテロリストの手にあって、彼らはヨハネ・パウロ2世の暗殺未遂事件(1981年5月13日)の犯人、ブルガリア系のトルコ人、アリ・アジャ(Ali Agca)の釈放との引き換えを要求するのではないか」と言い、また、マフィアのデ・ぺディス一味が少女を誘拐し、その後、殺してトルヴァイアニカの海岸にセメントで埋めた というのだ。

そのほか、バチカンの暴露記事で著名なジャーナリスト、エミリアーノ・フィッティパルディ(Emiliano Fittipaldi )が2017年9月19日、公表した文書に基づく生存説だ。文書は1998年に書かれたもので、バチカンが1997年まで行方不明となった少女のため約34万ユーロ(約4500万円)を支出していたことが記述されていたという。これが事実とすれば、少女は少なくとも97年まで生きていたことになる。

ローマのサン・タポリナーレ教会の本堂に埋葬されたマフィアのボス、エンリコ・デ・ぺディス(Enrico De Pedis)の墓に別の「人骨」が見つかり、その「人骨」が行方不明の少女のものでないか、という噂が流れたことがある。イタリア司法省は2012年5月、事件の捜査を再開したが、情報は間違いと分かった、といった具合だ。

最近では、昨年10月30日、ローマのバチカン大使館別館の改装作業中、人骨が発見された。その時、イタリアのメディアでは、この人骨が1983年に行方不明となったオルランディではないか、といった憶測記事が流れた。法医学の調査結果、人骨は男性のものであり、時代はオルランディが生まれる前だったということが判明したばかりだ。いずれにしても、「オルランディ行方不明事件」はイタリア犯罪歴史でも最も謎に満ちた事件といわれる。

蛇足だが、バチカンから余り離れていないインスブルックに世界最高峰のDNA鑑定家がいる。オーストリアのインスブルック医科大学の法医学分子生物学者のヴァルター・パーソン教授(Walther Parson、52歳)だ。新しいDNA鑑定方法を見つけ、FBIのDNA鑑定捜査を支援している人物だ(「『骨』がその人の歴史を語り出す時」2018年12月18日参考)。

パーソン教授の法医学関連実験所は世界に5つしかない実験所の一つといわれ、関係者以外は絶対入れない。パーソン教授はミトコンドリアDNA制御領域及びチトクロムb遺伝子の法医学分析を研究し、インスブルック医科大学法医学研究所で高スループットDNAデータベース化ユニットと法医学分子生物学研究を担当している。

1991年にアルプスのイタリア・オーストリア国境のエッツ渓谷(海抜3210メートル)の氷河で、約5300年前の男性のミイラ(Otzi)が見つかったが、そのアイスマンの遺骨を分析したパーソン教授は、「チロル州に19人のアイスマンの血縁関係者が生存している事実を突き止めた」と発表、世界を驚かせた。

バチカンが同事件の全容解明を本当に願うのならば、同教授に鑑定捜査を依頼したらどうだろうか。同教授は現代のシャーロック・ホームズだ。ただし、事件の全容が明らかになることを願わないというのならば、致し方がないが……。

ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年7月8日の記事に一部加筆。

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