うんちくよりもスペシャリスト

2019年07月12日 14:00

高校受験で重視されるのは入試とともに内申書のポイントです。この内申書は全9教科を広く薄く網羅し、ポイントの取りこぼしがないようにすることで内申書がよくなります。しかも都道府県により中1から中3までの内申書を要求されるところもあるし、課外活動や生徒会などへの参加も加味されます。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

ある意味、日本が平均的バランスの良い人材を作ろうとしているのはこのあたりの仕組みからすでに見て取れます。この形から生み出されたのがいわゆる「ジェネラリスト」と称する人で何でもある程度は知っている、けれど専門家ではないという人です。ジェネラリスト養成は入社後も続きます。一般的な会社では30代初めまでは2-3年ぐらいで人事異動が繰り返されます。それも全く畑違いの仕事を転々とし、30過ぎになってからようやく似たような部署に2度目のお勤めとなり、これが後々の専門分野になっていきます。

以前、一人前の寿司職人になるのに10年かかるという話を話題にしたことがありますが、なんということはない、一般企業だって社員を一人前にするのに10年かけているわけです。ではその10年間何を学んできたかといえばジェネラリストとしていろいろな仕事の現場を学ぶということです。

今、このプロセスが必要なのか、見直す時期になってきたのかもしれません。堀江貴文氏が寿司職人に10年もかけるのは馬鹿々々しいと著書で堂々と述べています。10年の修行を乗り越えてこそ一人前の自負が生まれるという趣旨は私たちの世代では当たり前だったので「そんなもんだろうな」とうなづくでしょう。

一方、例えば海外で日本人経営の寿司屋がどんどん少なくなり、中国人や韓国人の寿司屋になっていく現状をどう考えるか、です。今の若者が仮に10年修行して寿司職人になっても海外移住はまず期待できません。文化の伝承と言いながら少なくとも海外で活躍する日本人の寿司職人なんてもう、絶滅危惧種であります。効率化が進む世の中に於いて修行を10年、あるいはジェネラリスト養成に10年かける思想はおかしいのであります。

日経に「昭和な職場と低成長」という原田亮介論説委員長の記事があります。ここにはいみじくも私が何日か前に指摘した低い労働生産性の話も出てきます。氏は長期雇用制度がもたらす弊害という趣旨を指摘しており、私と同じ立ち位置にあるように読めます。

その記事に次のようなくだりがあります。「若手には『昭和な職場』に見切りをつける動きが広がっている。東大・京大の21年春の新卒予定者の就職人気ランキング上位には、コンサルティング会社がずらりと並ぶ(就職情報サービスのワンキャリアの調査)。定年までの『生活保障』でなく、キャリア形成を重視する動きだ」というものです。

マッキンゼー、ボストン、デロイト、アクセンチュアといった外資系のコンサルは海外留学経験者に圧倒的人気があるほか、国内派ではリクルートなども比較的キャリアアップ型企業として知られています。かつて日本興業銀行(現みずほ銀行)が日本の産業を支えるという大命題をもって大企業のバックアップをしていたのはある意味、企業向け金融サービス付きコンサル銀行のようなもので興銀マンは日本の産業を支えるという大命題を課せられたのです。だからかつての興銀は省庁合格者が最終選択で思慮するほど人気企業だったのです。

日本の大学は入ってしまえば卒業できると言われています。海外の大学は入り口のハードルは低いけれど卒業できるかどうかは本人の努力次第と言われます。同様に日本の企業も就職活動で内定を取り付けるまでが大変で入ってからは組織という中にはめ込まれ、個性を封印し、どんな職場でも一労務提供者として長時間勤務に耐えさえすれば一定の給与をもらえるようになっています。個性を出せば弾き飛ばされ、一定以上の給与をもらうとねたみや嫉妬に苦しみます。だから組織の平均の心地よいぬるま湯で40年過ごす結果になったのが今の日本です。

日本が世界のリーダーシップをとっていた時代はそれでもよかったのですが、今や戦国時代。日本はone of themでしかないことを気が付くべきでしょう。

「君は何ができるのか?」という質問に堂々と答えられる人材がどんどん増えてほしいものです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年7月12日の記事より転載させていただきました。

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