デジタル市長室から見た韓国スマートシティ

2019年07月16日 06:00

スマートシティは誰の為のものなのか、それは言うまでもなく市民の為のものでなくてはいけない。韓国スマートシティ視察で改めて実感したことなのです。

もちろん効率的な政府の運営は、市民(納税者)の為のものですが、受け取められる印象が間接的なものになってしまい、直接的な市民サービスが向上することがメインでないと市民理解が得れないのが現実です。

韓国の中でも、ソウル市は、スマートシティの世界的な協議会の1つである「WeGo」という組織の議長市もしており、スマートシティの取り組みは大いに参考になります。訪韓時には、WeGo事務局長とも意見交換をしてきました。

何を持ってスマートシティと呼ぶのか、お互いのデータを活用できる標準化システムをどうするのか…、事務局長との意見交換は、話題は尽きませんでした。最後に、日本の都市でWeGoに参加してもらえるような都市はないかとも聞かれました。

「韓国スマートシティ」の視察は驚かされたところ、納得させられたところが多数あり、有意義な時間でした。事例を取り上げると、路線バスが今どこまで来ていて、あと何分でバス停にくるのか?という情報は日本でも路線によっては、手に入れることが出来ます。しかし、ソウルでは、今やそのバスに座れるかどうかという情報をバスを待っている人が得られるようになっています。

系統が異なっていても、同じ路線を走ることがあり、3分待てば、座れるバスが来るなら1台待っても座れるバスに乗りたいと思うのが、人間ではないでしょうか。特に高齢者や子供、社会的に弱い立場の人にはとても重要な情報なはずです。何が社会課題で、その解決の為に費用を抑えながらいかにサービスを提供し、ビジネスが育つような環境をつくるのか、BPR+システム刷新が機能しているのだと思います。

今回の視察で最も驚かされたのは「デジタル市長室」です。最初に聞いた時はどのような市長室なのか、想像もつきませんでした。単に執務室にモニターが並んでいるのか…、というイメージしか出てこないのです。ソウル市長の執務室ですから、市長がいる時に視察することは出来ません。市役所の担当者が、市長の留守中に視察の時間を設定してくれました。

中に入ると木材を使った落ち着いた雰囲気がある内装です。一方でモニターが多数繋げて設置され、全体としても、分割しても使えるようになっています。ソウル市が持っているデータは、横串が刺せるようにデジタルで整理され、そのデータをクロスさせて必要な情報に加工され見える化されるているのです。市長が政策判断する際に画面にデータを呼び出し、その上で決断しています。呼び出し方は、キーボード、パネルタッチ、そして音声でも入力出来るのです。画面の下部には、電話のマークがあり、それをクリックすると事業の担当者に直接連絡がつくようになっています。

つまり、市長から直接指示も出せるようになっているという事です。このシステムは、データが整理された後のデータ活用アプリケーションなので、開発費用は低く抑えられています。しかし、日本の大手ベンダーに依頼したら桁が2つくらい異なるかもしれません。

そして、ここからが凄い。市長が決断するに際して見ていた画面を市民も見ることが出来るのです。つまり、何をもって決断したかということを市民がチェックできるということなのです。また、担当者と直接話すための電話マークすら市民に公開されていて、市民が苦情を担当者に伝える事も出来るのです。

一般的に言えば、そんな事をしてしまったら苦情電話ばかりになり、通常の執務が出来なくなってしまうのではないか、と懸念しますが、説明者は苦情がこないように仕事をすれば良いと淡々としたものです。

明日からソウル市民に公開になるという前日に市長執務室を視察させてもらっていたのです。データを見据え、エビデンスに基づき決断し、政策をつくり、実行する。最終権者なら、誰でもそうしたいものです。責任は取らなければいけないのに、決断に際してのデータが乏しい、これでは責任のある仕事を本質的にすることは出来ません。その意味ではソウル市長は本当にやりがいのある仕事になってのだと思います。

役所のデータを棚卸し、横串させるように標準化し、デジタル化し、整理してオープンデータとして、国民に提供すること。EBPM、データを用いて政策や予算をつくること。正に議員立法としてつくった「官民データ活用推進基本法」の中に盛り込んだ考え方です。日本では法的な担保は出来ているけれども実行されていないのです。

法律をつくっても、実行されないのであれば意味はありません。これからの日本の為にと思ってつくっても、単なる自己満足になってしまうのです。法律をつくると同時に人の心を動かし、社会変革をもたらし、求める社会の実現に繋がる、今はこのトータルパッケージが何よりも大切だと実感しています。EBMPを前提として街づくり、国づくり、やってみたいと思うのは僕だけではないはずです。


編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2019年7月15日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。

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福田 峰之
多摩大学客員教授、前内閣府副大臣、前衆議院議員

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