交通事故の悲劇とは?全ドライバーに読んでもらいたい一冊

2019年07月17日 06:00

Photos by K.Bito

12月の風の強い午後。一本の電話が知らせてきたのは、最愛の息子の危篤の報だった。今回は、『大地の花束』(みらいパブリッシング)を紹介したい。著者は、渡邉明弘さん。

2014年12月。当時、長男の大地さんを交通事故にて亡くす。サラリーマンとして仕事をするかたわら、自らの経験を公開して、いま生きている子どもたちの命を守るために活動している。

日本の年間の交通事故件数は、43万件。死亡事故は3500件以上にも登っている。ピーク時から比べるとはるかに減ってはいるが、それでも1件が持つ事故の重みは変わらない。

高齢ドライバーによる暴走事故が相次ぎ大きな社会問題となっている。本書は、交通死亡事故の遺族となった著者の、数年間に及ぶ闘いの記録をつづったものである。許せない怒りと、取り戻せない悲しみを感じずにはいられない。

検察側からの冒頭陳述に際して、加害者側から嘆願書が提出されたシーンがある。嘆願書には裁判長宛に加害者の処分について寛大な措置のもと減刑を切望することや、それを望む多くの人たちの著名があったそうだ。

著者は、「もしあなたたちの子供が交通ルールを守って横断歩道を通行していたのに命を奪われて同じことを言えますか?」と、自分自身に問いかける場面がある。さぞかし辛い経験をされたのだと思う。察するに余り有る。

禁錮1年4ヶ月、執行猶予2年。地裁の判決まで1年を要し、高裁でも判決がかわらず最終的に和解となる。事故から2年以上が経過していた。

一瞬の判断ミスによって奪われる命。被害者にとっては恐怖でしかなく、加害者にとっては後悔しかなく、そして遺族にとっては悲劇しかない。平穏な日々を切り裂いた悲劇に正面から対峙し活動を続ける著者の、魂の文章が心に迫る。

[本書の評価]★★★(72点)
評価のレべリング】※標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★  「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★   「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★    「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
星無し  「レベル0!読むに値しない本」50点未満

尾藤克之(コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員)
14冊目となる著書『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)を上梓しました。

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尾藤 克之
コラムニスト、著述家、明治大学サービス創新研究所研究員

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