貿易戦争の次は為替戦争の再発?新興国が次々に利下げ

安田 佐和子

18日は、新興国の利下げラッシュを迎えました。

韓国、利下げに転換、景気減速で危機感、米中貿易戦争や日本の輸出規制が影響=日経

インドネシア、金利を引き下げ、1年10カ月ぶり=日経

南ア中銀、0.25%利下げ 追加措置には慎重姿勢=ロイター

JESS3/Flickr

米中貿易摩擦をめぐる不確実性が高まり、中国や欧州の景気減速が鮮明になるなかでの対応であることは言うまでもなく。また、米国の利下げ前に、通貨高防止に動いたと考えられます。

そもそも、パウエルFRB議長が1月に利上げからの据え置きへの転換を表明した後、新興国は2月のエジプトを皮切りに利下げに転換していました。6月には5ヵ国(豪、ロシア、インド、アイスランド、チリなど)が実施していたものです。直近までで、筆者が把握する範囲内で30ヵ国が利下げに踏み切りました。

ロイターが新興国と位置付けた各国(中国、韓国、マレーシア、メキシコ、タイ、ロシア、南アなど37ヵ国)での利上げ・利下げ動向。

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作成:My Big Apple NY

利下げした各国には、共通点があります。①中国への輸出額が大きく、②米中との貿易額が大きい(米中両国への貿易依存度が高い)――という2点です。こちらをご覧下さい。縦軸が対中輸出額、横軸が米中との貿易依存度を示しています。最近になって利下げした各国のみオレンジとなっていますが。6月当初の6カ国から、7月には9ヵ国へ増加してきました。今後も増えていく可能性大です。

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(作成:My Big Apple NY)

自国通貨安誘導、通貨戦争、近隣窮乏化政策という言葉が思い出されますね。

(作成:My Big Apple NY)

米国は対抗策として、①為替操作国認定の3条件を厳格化、②自国通貨安を狙った補助金相殺関税の導入――など整備中。トランプ政権が引き金を引いた貿易戦争が通貨戦争の再発へ広がりをみせるなか、次の一手を用意していてもおかしくありません。ウォール街は、トランプ政権が為替安定化基金(ESF)を通じたドル売り介入を断行するリスクを予想し、ムニューシン財務長官は「現時点で」この観測を否定したものの、口先介入が激しくなることは間違いないでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年7月18日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。