サグラダ・ファミリアへの観光客増加で、逆にその弊害が深刻に

2019年07月23日 06:00

サグラダ・ファミリア公式FBより:編集部

バルセロナの象徴となっているサグラダ・ファミリアの建築許可がつい先月認可された。1882年に礎石を置いてから建設工事が始まって現在まで無許可で工事が進められたことになるということなのだろうか?

この建築を請け負たアントニオ・ガウディーは当時建設許可を申請していた。しかし、その後バルセロナ市行政の官僚的なシステムからそれが曖昧なままにされていたらしい。

ところが、この認可がされていなかったということが近年判明した。2010年、高速列車AVEの建設に際し、サグラダ・ファミリアの近くの地下を通過するAVEの地下鉄道を建設する予定になっていたことから、建物の地盤に悪影響が出るのではないかという調査が進められていた時であった。

それに対して、サグラダ・ファミリアの建設委員会の方からはなぜか無言を保ちAVEの調査委員会の方には如何なる情報も提供しなかったという。求められていた情報をついに提供したのはサグラダ・ファミリアを世界遺産に認定したユネスコからドイツ人エンジニアが二人バルセロナに到着した時であったという。
(参照:diariosur.es

それ以後、政治活動家出身のアダ・コラウが市長を務めるバルセロナ市当局とサグラダ・ファミリアの建設委員会の双方で建設許可並びにこれまで無許可で建設が進められていたことについての具体的な交渉が開始されたのは一昨年であった。

今年6月に入って、同建設委員会が建設許可の取得にこれまでの建設規模などを考慮して460万ユーロ(6億円)を市役所に支払うことで双方が合意した。

更にこれまで迷惑をかけた償いといった意味で今後10年間に3600万ユーロ(46億8000万円)を支払うことを約束。その使い道としてバルセロナ市政は2200万ユーロ(28億6000万円)を公共交通手段の改善に、700万ユーロ(9億1000万円)を地下鉄路線2と5からサグラダ・ファミリアを繋ぐ地下道の建設に、400ユーロ(5億2000万円)を周辺地区の通りの改善、毎年30万から300万ユーロ(3900-3億9000万円)を公共広場の改善並びに清掃に充てる計画だとした。(参照:abc.eslarazon.es

そもそもサグラダ・ファミリアがバルセロナの象徴となり、バルセロナの観光発展に多大の貢献するようになったのも、その発端は1992年のバルセロナ・オリンピックであった。当時、バルセロナのオリンピックを利用してバルセロナの象徴になるものを推進委員会は検討していた。当初、旧市街のゴシック地区をを検討材料にした。しかし、その地区の6割は19世紀の建造物ばかりが集まっており、象徴となるには物足りなさを感じさせていた。しかも、当時のこの地区は犯罪が目立ってもいた。

一方のサグラダ・ファミリアはモダニズムを代表し、それはブルジョアを代表するもので、しかも常識が支配していた当時はモダニズムのデザインは革新的なものである故にオリンピック開催前までの社会では容易に受け入れられなかった。しかし、ダリーやミローを生んだカタラン気質はサグラダ・ファミリアをオリンピックに因んだ象徴として選んだのであった。

更に、2010年には法王ベネディクト16世が訪れてミサと聖水を注ぐ聖別を行ったことによってサグラダ・ファミリアはそれまでの単に観光者が興味を引く教会から特権を付与された大聖堂となったのであった。

この二つの出来事によってサグラダ・ファミリアへの世界からの訪問者が一挙に急増したのである。現在、年間460万人の訪問を受けて、年間8000万ユーロー(104億円)の売上をもたらしている。入場料は17ユーロ(2210円)、列に並ばなくても入場できるには22ユーロ(2860円)となっている。(参照:diariosur.es

ところが、一般に報道されないことのひとつとして年間2000万人が入場せずに外観を観るだけで、その後その周辺を40分当程度ぐるぐる回っている観光者がいるというのである。サグラダ・ファミリアを訪れるスペイン人は僅か6%だとされている。

即ち、年間で460万人の入場者と2000万人の訪問者で溢れるこの地区で一番迷惑を被っているのがこの地区の住民である。先ず住んでいるマンションから外出するのも人通り多く大変だという。店は多くあるが、売っているものは観光客目当てのスーベニア商品が大半。この地区の住民が日々生活する必需品を買い求められる店が消滅している。

サグラダ・ファミリアの周辺のバルやカフェテリアは観光客を目当てにして料金が非常に高くなっている。その影響を受けているのはこの地区の住民だ。気軽にバルで一息つくのも考えねらならなくなっている。

またレンタルマンションも当然値上げしている。75平米のマンションで家賃が2200ユーロ(28万6000円)もするようになっているという。この料金では若者が住むのは不可能である。家賃が払えず立ち退きを要求される借家人が増えているという。これも外人目当ての不動産業者にとっては商売のネタになっている。

更に地元の住民を不安にさせている問題がある。2026年にサグラダ・ファミリアの建設工事が終了する予定になっているが、そのあとマヨルカ通りに面しているグロリアの門から25メートルの高さで50メートルほどの庇のようなものを建設する予定になっているというのだ。

つまり、それはマヨルカ通りの建物を壊す必要があるというのである。その影響でそこに現在住んでいるおよそ3000人が立ち退きを要求されるようになるということなのである。これには地元の住民を始め、この工事の反対を表明している建築家もいる。市当局はこの工事を認可しているが、地元の住民や反対している建築家もいる中でこの先どのような展開になるか全く未知数である。(参照:diariosur.es

それにしても観光名所としてサグラダ・ファミリアを訪れる観光客が増えれば増えるほど、逆にその弊害を受けているこの地区の住民の不満はより度合いが強くなっているということである。

1970年代はこの周辺地区は市内の中心街とは程遠く灰色で活気のない地区であったという。それが1992年のバルセロナオリンピックを起点に大きく変身して世界の観光客の必見の場所となっているのである。

また、ガウディーが1926年に路面電車に引かれて死亡した時にはまだ地下礼拝堂とキリスト生誕のフロントとか僅かしか完成していなかった。また内戦で設計図などが消失してしまって僅かの資料しか残されていなかった。残された僅かの資料を基に建設工事が進められたのであるが、ガウディーの精神面が忠実に実現されていないとして批判する建築家もいる。

当時の彼はサグラダ・ファミリアの建築に全霊を捧げていたようで、自分の身なりには注意を向けなったという。そのため、事故にあった時は浮浪者だと間違えられて手当も遅れた。その3日後にそれがガウディーであったと判明したのであった。

また、現在ガウディを聖人にまで崇めようとする活動もある。ところが彼は若い頃は無神論者であったというのは良く知られたことで、それでも聖人にするには奇跡を起こしたという証拠が必要で、それを審査委員会では彼の生前中に奇跡を起こしたことがあったか追跡しているという。

白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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