大船渡高校・佐々木投手の登板回避に思うこと

2019年07月30日 06:00

1. 登板回避の賛否

大船渡高校の佐々木朗希投手が決勝戦で登板せず、敗退したことが物議をかもしている。これは7月25日の高校野球選手権岩手大会の決勝戦で、大船渡高校の国保陽平監督がエースの佐々木投手を登板させず、チームは2-12で敗退したことに端を発している。国保監督はその理由を「故障を防ぐために起用しなかった」と説明している。

大船渡 佐々木朗希投手(岩手朝日テレビ中継より:編集部)

大船渡高校には2日間で200件を超える意見が寄せられ、対応にあたっている千葉貢副校長は「激励の言葉は1、2件くらいで99%は苦情。電話が鳴りっ放しです」と説明した。中には「今から学校に行くから」と押しかける予告もあり、学校側は大船渡警察署に周辺パトロールの強化も要請する事態にもなっている(参照:毎日新聞)。

また、この件についてTBS系テレビ番組「サンデーモーニング」内のスポーツコーナーで張本氏が「絶対、投げさせるべきだ」と発言すると、ダルビッシュ有氏はツイッターで「このコーナーを消してください」とつぶやく。するとサッカー日本代表の長友選手も「同意」とつぶやき参戦。ネットでも賛否両論、甲論乙駁で議論はとどまる気配がない。(参照:日刊スポーツ

2.監督の思いと選手の思い

国保監督は、「投げられる状態ではあったかもしれないが、故障を防ぐために判断した」、「故障を防ぐため。筋肉の張りとかそういう程度です。特に痛いとかはなかった」、「球数、登板間隔、気温です。きょうは暑いですし。特に悩みはなかった」とコメントしている。

佐々木投手の初戦からの球数は合計435球(7月16日:2回 19球、18日:6回93球、21日:12回194球、7月24日:9回129球)、(東洋経済)で肩に負担がある状態だったと思える。佐々木投手は4月に球速163キロを記録するなど、将来日本球界だけでなくメジャーで活躍できる逸材であることは間違いない。国保監督は佐々木投手の将来を慮って登板を控えたのだろう。

一方、佐々木投手は「監督の判断なので、しょうがないと思います」、「高校野球をやっている以上、試合に出たいというのは当然のことだと思うので、投げたいという気持ちはありました」と言っている。佐々木投手は「決勝で投げたかった」のだ。

11月生まれの佐々木投手はあと3ヶ月で18歳、選挙権のある年齢に達する立派な大人だ。将来得られるであろう「もの」と、それを失うリスク、甲子園に行きたい思いを全て包括して考え、判断できるのではないか。本人の将来を考えることも正解なのだろうが、佐々木投手の甲子園に行きたいという気持ちの度合いを聞いてほしかったところだ。

3. 高校球児の健康を考える

不思議なのは、将来の肩の負担を危惧する声は話題になるが、炎天下で行われている地方大会、甲子園で行われる本大会での体調管理についてあまり話題が上がらないことだ。気象庁が熱中症の注意喚起を促すなか、地方大会、甲子園では将来の体の懸念どころか、現時点でも命の危険にさらされながら野球をしている。

8月6日から甲子園で選手権大会が行われるが、梅雨明けした関西の天気予報は連日晴天、最高気温は6日から36度、39度、38度と真夏日が続く。多分、グラウンドレベルでは40度を超える気温になるだろう。

ただ、そうすると(選手の健康や将来を第一に考えて改善をすると)、地方大会は夏をずらして例えば5,6月に実施、本大会は甲子園ではなく京セラドームなどのドーム球場で試合をし、先発投手は100球近くになったとき有無を言わせず交代させる、というような感じになるのだろう。

野手が横飛びに捕球しても人工芝でユニフォームに泥はつかず、投手も打者も野手も額の汗など拭わない、照りつける太陽はなく青空も見えない、観客も涼しい顔で観戦する。それはそれで味気ない高校野球になる。限界を超えて投球する、汗にまみれて投げる、泥にまみれて滑り込む、そういう高校野球が見たい反面、体調管理は万全にしてほしいというジレンマ。

所詮、ロマンと現実を秤にかけることなどできはしないということだろうか。

石川 了   宅地建物取引士
1982年中央大学卒業、NTT入社 退職後不動産投資業を営む。 ブログはこちらです石川了ブログ

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