収拾つかない「障害者議員」大論争。当事者も異論、岸田派議員は炎上

2019年07月30日 17:00

7月の参院選で初当選した議員たちの初登院(8月1日)が迫る中、れいわ新選組比例選出の難病・重度障害者の2人の新人議員を巡る論争がネット上でヒートアップし、収拾がつかなくなっている。

舩後靖彦氏、木村英子氏(れいわ新選組サイトより:編集部)

選挙後に論争を再燃させた木村氏の訴え

れいわ新選組が参院選直前に「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」患者の船後靖彦氏と、重度障害者の木村英子氏の擁立を発表した時からも、「国会議員として仕事ができるのか?」といった疑問が呈されていたが、選挙期間中は政治的公平性の観点からマスコミはほとんど報道せず、ネット上でも当初は、障害者のことに疑義を挟みにくい空気ができあがり、大手のネットメディアは、ポジティブに取り上げるばかり。SNSでは疑義を挟んだ人たちに対して、山本太郎氏の支持者などが総攻撃する「言論封殺」の状態だった。

しかし、船後氏と木村氏が当選し、選挙が終わると、国会や議員会館の受け入れ態勢整備という現実的な問題が浮上。マスコミは、急ピッチで進む国会などの改装工事の様子を報道するにとどまっているが、少なくともSNS上は論争が再び過熱化した。

そのきっかけは木村氏の26日の発言だった。2人は現在、国の制度により、重度訪問介護のサービスを受けているが、この制度は自己負担1割で行なっているが、

「通勤、営業活動等の経済活動にかかる外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除く」

と規定されており(厚労省資料)、国会議員として勤務するのに伴う、外出や食事等については適用外となり、全額自己負担となる。これを受け、木村氏は、

「8月1日までに結果を頂けなかった場合は、私たちは登院することはできません」

と訴え、国会側に制度継続を要望。参議院の議院運営委員会も厚労省と対応を検討している。

これについては自民党からも福祉問題に詳しい議員から相次いで発言が出ている。

橋本岳氏(官邸サイトより:編集部)

元厚労副大臣の橋本岳衆議院議員はFacebookで、

もともと一般的に、重度障害者の訪問介護等は働いている時間帯は公費でのサービスは受けられない(受けるなら自費または雇用主負担で)という制度の建てつけであり、関係団体等から見直しの要望はいただいていたところでした。福祉行政と労働行政の狭間ともいえます。

と問題点を指摘した上で、

ただそれだけに、本来は参議院(または候補者名簿に登載したれいわ新選組、およびご本人)の責任で対応するか、さもなくば制度を完全に見直す(影響が何人あるかわかりませんし、数日でできるとも思いません)かという選択肢しか考えにくい。

確かに「議員活動の特殊性」も理解しなくもありませんが、ここで国会議員だけの特例を作ってしまうのは、スジが良くないことになるような気がします。

とも述べ、特例扱いについて慎重な意向を示した。

橋本氏は竹下派(平成研究会)に所属だが、同じ自民党でも、リベラルを売りにする岸田派(宏池会)の武井俊輔氏は、れいわの2人の初当選をかなり前向きに捉えている。政治評論家の加藤清隆氏がツイッターで「極力配慮すべきとは思うが、このままでは議員の職務全うは無理ではないか」と述べると、


武井氏は加藤氏の名指しを避けながらも「政治評論家と称する方が『議員の職務全うは無理ではないか』などと発言し、多くの支持を得ていることに酷暑の中、薄ら寒い思い」などと激しく非難した。

武井氏には、アゴラ執筆陣のリベラル論客の1人である秋元祥治氏が「素晴らしいご発言、さすが宏池会」と反応したのをはじめ、

山本氏の支持者ら左派系の人たちも

さすが、自民党の良心、コウチカイ!

といった賛同する声も多かったが、日頃は自民党を支持することが多い保守系のネット民などからは

綺麗ごとですね。当然彼等は合法的に当選した以上ハード面のサポートは必要… しかし過剰な要求は議員特権として戒められるべき。「お気持ち」に流される事なく是々非々であたっていただきたい

障害者に政治の門戸開放はけっこうだけれど、障害の程度にもよります‼️ 特別枠で当選しあの状態で不必要に国庫に負担をかけてまで、政治家としての職務を全う出来るとは思いません。ああいう方々の声を聞くのが国会議員の務めです

などと総ツッコミ状態となり、左右のネット民がそれぞれ違う意味で盛り上がる展開となった。

アゴラでも激しい論争に

論争はついにアゴラでも展開される事態となり、早川忠孝氏が「国会議員の介助の費用は、れいわが持つべきじゃないかな」と投稿したところ、障害者支援をライフワークにしている尾藤克之氏が「国会に登院できない障害者の対応は慎重な議論が求められる」を寄稿。「候補者として擁立した政党が知恵を出すべき問題ではないでしょうか」と早川氏に一部同意する意見を示した。

しかし、テクノロジーによる障害者のノーマライゼーションを提起している山田肇氏は、「早川氏の主張は障害者差別」を寄稿。

自分は健常者であって障害者とは全く違う、という思い込みが早川氏の主張の源にある。自分が障害を負ったときに排除されても構わないか、それを考えてから発言すべきである。

などと早川氏を猛批判した。

これには早川氏も「障害者差別のレッテルを初めて貼られて驚いた」と困惑。アゴラ主宰の池田信夫も「日本中を「バリアフリー」にするのは不合理だ」を緊急寄稿し、早川氏の意見を「素直な感想」と評した上で、

山田さんが日本中バリアフリーにしろというのは自由だが、それとは異なる意見に「障害者差別」というレッテルを貼って糾弾するのは「人権団体」が批判を封殺するときの常套手段である。

などと批判した。また、30日朝には、脳腫瘍がきっかけで障害者となったという長谷川正氏が、当事者の立場から山本氏を猛批判する記事を掲載。

山本太郎氏はポリコレ利用の逆差別:障害者の立場からの異論

これまで障害者側から山本氏を批判した意見は珍しく、注目を集めつつある。山本氏が火をつけたともいえる「論争」は、彼らの思惑通りに燃え広がっているが、さまざまな人たちを巻き込み、社会を分断に陥れる危機を生み出している。

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