政治×AIの可能性を探る

こんにちは、
東京都議会議員(町田市選出)の
おくざわ高広です。

○政治×AIの可能性を探る取組の続編です。前回のブログで、AIを使って課題を見える化し、政策提言につなげていく取組をスタートしたことをお伝えしました。思った通り、「政治家がAI???」というご意見もいただきましたので、それに応える意味からも、これまでのプロセスをお伝えしつつ、その意義についても。

1.AIで不満を可視化するとはどういうことか?

株式会社インサイトテックとはどのような会社かというと、不満買い取りセンターというサイトを運営し、全国で40万人以上の会員から蓄積した1,200万を超える不満をAIで分析し、企業の商品開発やPRをサポートしています。

私たちは、できるだけバイアスのかかっていない声を集めたいとの考えから、2月にネット世論調査を実施しましたが、インサイトテック社の保有する声は、自発的に出てきた声であり、よりバイアスがかかっていない声だともいえます。一方で、その声は一見するとバラバラに見えるため、そのままでは課題としてとらえることができません。そこで、AIの出番というわけです。

一見するとバラバラに見える不満の声。

ここに、インサイトテック社のAI技術を用いると、、、

男性の育児休暇取得に関する意識調査

→80%が義務化に賛成だが、現実的には収入減や家事負担に関する懸念から反対の声も。

2.見える化すべき声は誰から発せられるのか?

バラバラの不満の声が、AIにより課題として浮かび上がってくるということがなんとなくご理解いただけましたら、次に必要なのは、どこに課題が眠っているのか、誰の声が埋もれてしまっているのかという議論です。一定程度不満の量があり、民間では解決しにくい領域、かつ埋もれてしまいがちな声とは何か。

例えば、「保育園落ちた、日本死ね」というツイートから一気にムーブメントが広がった待機児童問題ですが、つい最近できあがった課題ではなく、実は何年も前から潜在的な課題でありました。実は暮らしの困りごと(私たちから見れば政策課題)には浮き沈みがあり、確実にあるのに見えてこない課題があったり、解決できたと思った矢先に別の課題が浮かび上がってきたりするものもあります。

こちらは、インサイトテック社で行った待機児童問題に関する調査レポートですが、まだまだ7割の方が待機児童問題は深刻であると答えています。さらに都内に限った声を分析してもらったところ、その不満の多くが保護者ニーズと提供される保育サービスのミスマッチであることも浮かび上がってきました。

そのような中、インサイトテック社に調査依頼をする領域を特定すべく、議論を繰り返しました。斉藤議員、森沢議員、私がそれぞれ伺ってきた声をベースに、まだ見えてこない声はどこにあるのか。

斉藤議員の言葉を借りるならば、

この調査にあたっては、私たちの方で何か「期待される答え」を押し付けるような質問を投げかけないことが重要なポイントです。
例えば、東京都でこんな子育て支援をやっている、これはきっと有効だろう、使われるべきだろう、と頭から考えがあった上でそれを裏付けるようなデータを取ることができるような質問を投げかけてしまっては、意味がないのです。

日常の生活の中で、子育てをする様々な方達から、言われなくても上がってきた不満やそれを裏返した希望、期待や要望と言ったものをすくい取ることができるようにと、データの取り方に慎重になります。けれども、これはさすがインサイトテックさんがプロフェッショナルで、バイアスがかからない形でより「リアルな本音」に近い意見を探るということを目指して一緒に取り組ませていただいております。

3.不満の声から東京の未来を描く

激論の末に、子育て中のパパ・ママ、子ども自身の声は、目の前の暮らしに精一杯だからこそ、気づかぬうちに流れて行ってしまっているのではないか。ということで、改めて、子育てや学校、教育にまつわる不満の声を解析してもらうことにしました。すると、PTAに対する不満がとてつもなく多く、大きいことが判明しました。

中には、PTAとは任意団体であり、広域行政体である東京都が手を出す問題ではないという意見もあります。しかし、この声こそが、これまで声に出しにくく、ひとかたまりになりにくい、いわゆるサイレントマジョリティ(声なき声)なのだと私は思うのです。次の段階では、この解決策を求めて、さらなる調査を行います。この声の本質は何か、それを突き止め、根本的な解決のための一手を考える事こそが政治家の役割なのだと確信しています。

4.政治×AIの可能性を探る

これまでの政治は、地域をまわることや組織・団体の要望をヒアリングするなどによって社会課題の特定を行ってきました。こうした地道な活動は非常に重要である一方で、どれだけの労力を費やしても、都民の暮らしの多様化などにより、拾えない声が増えてきたのも事実です。

また、上述の優先課題図を作成するにあたり7,000を越える声を集めているのですが、それを地道に集めようと思えば、何か月、いや何年かかるか分かりません。それでは、解決策の提案という政治家が果たすべき役割にたどり着くことは困難でしょう。

この取組をスタートして、改めて政治とAIの相性は非常に良いと感じています。

*社会課題の特定という部分では、AIを活用してよりスピーディに、より公正に集める。

*社会課題の解決(解決策の提案と合意形成)という点では、政治家がまさに人の力を使う。

政治家が答えを持っていない社会になっている、というのが私の持論であり、だからこそ、政治家の果たすべき役割を日々問い続け、挑戦しています。政治×AIの取組は、政治家の働き方(行動指針)を変えるものだと思います。祭りに顔を出した数(声を聞いた数)ではなく、課題を解決した数を競いあうような政治に向けて、必ずや結果を出したいと思う次第です。

引き続き、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。


編集部より:この記事は、東京都議会議員、奥澤高広氏(町田市選出、無所属・東京みらい)のブログ2019年8月1日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおくざわ高広 公式ブログ『「聴く」から始まる「東京大改革」』をご覧ください。