バロンズ:追加関税第4弾、米金融市場と米経済の打撃に

2019年08月05日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは小売セクターを取り上げる。米小売売上高は2019年に前年比3・5%増の3.7兆ドルが見込まれ、前年の4.3%増に及ばずとも堅調なペースで拡大する見通しだ。米7月雇用統計が示すように、労働市場も良好そのもの。それでも、調査会社コアサイト・リサーチによれば、小売セクターは年初来で7,567件の店舗を閉鎖しており、前年同期の2,606件の3倍近くに増加した。オンライン小売が勢力を伸ばしたことが一因で、アマゾンの小売売上高に占めるシェアは6%だが、まもなくウォルマートの10%に並ぶ見通しだ。

もう一つの理由は、特に郊外を中心に需要に対し店舗数が多い=overstored and undershoppedの状況である。JPモルガンは、店舗数と需要が均衡になるには10年掛かると予想UBSはオンライン売上高が足元の16%から25%への上昇を見込んだ上で、2026年までに食料品店を除き7.5万件の店舗閉鎖が必要と試算する。今後の小売セクターは暗黒の時代が続くのか、詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は追加関税第4弾を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

カバー写真:The White House/Flickr

新たな追加関税措置の脅威、投資家の痛手に―New Tariff Threat Bites Investors

トランプ大統領が中国に対し、9月1日から追加関税措置第4弾として残り約3,000億ドル相当の中国製品に10%を賦課する方針を表明し、米株は急落した。S&P500とナスダックは7月29日週にそれぞれ3.1%安、3.9%安と今年最大の下落率で終了した。ダウも2.6%安で取引を終え、ウィルシャー・アソシエーツによれば米株相場の時価総額は1.1兆ドル吹き飛んだ。

追加関税措置は既に貿易の鈍化と米10年債利回りの低下を招き、7月29日週には21.7bpの1.864%と低下幅は過去7年間で最大となり、米10年債利回り自体は米大統領選直前にあたる2016年11月7日以来の低水準なった。皮肉なことに、トランプ氏の追加関税第4弾の示唆が、Fedの利下げより利回り低下の観点が効果が大きかったというわけだ。

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作成:My Big Apple NY

もうひとつ、追加関税第4弾が与えた大きな影響としては、FF先物市場の動向が挙げられよう。次回9月17~18日開催のFOMCで25bpの利下げ織り込み度は99%となり、年内1.5~1.75%への利下げも74.8%に及ぶ。

ただし、利下げが追加関税措置の影響を相殺する余地は限られよう。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのグローバル・エコノミスト、アディタ・バーブ氏によれば、第4弾の追加関税措置は消費財を含むためだ。また、ダニエル・クリフトン氏率いるストラテガス・リサーチが指摘するには、追加関税第4弾が発動すれば、追加関税の収入が1,380億ドルとなり、税制改革法案成立に得られる税収の1,220億ドルを上回る見通しだ。

米国が発表した貿易収支に、これまで発動した追加関税措置の影響が現れた。中国からの輸入は6月に前年比12.6%減、中国向けの輸出は16.8%減となった。一方で、韓国、台湾、ベトナムからの輸入は前年比9.2%増となっている。とはいえ、これら3ヵ国からの輸入額は中国全体の3分の1に過ぎないい。中国からの輸入品には、代替できない製品が含まれていると考えられよう。

貿易動向は従来、市場を動かす材料となるが、米7月雇用統計を見る限りそれほど悪影響を与えているようには見えない。むしろ米経済は貿易や海外から生じる悪材料に耐性を示し、住宅市場は金利低下の恩恵を受けているように見える。問題は、こうした小康状態が続くかどうかだろう。


追加関税第4弾が講じられれば、ほぼ全ての中国輸入品が対象になると想定されます。年間の家計負担は300~800ドルとなると試算され、これは税制改革法案成立での所得押し上げ効果を全て相殺される見通し。だからこそ、トランプ氏は第4弾の追加関税措置を当初の25%ではなく10%へ引き下げたのでしょう。仮に発動するならば、対象除外品も合わせて検討されるはずです。

いずれにしても、2020年の米大統領選を控え、トランプ氏は勝算ありと判断したのでしょうが、米株市場は少なくとも米経済・産業への打撃を懸念していることは間違いありません。

(カバー写真:The White House/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年8月4日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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