知っトク解説:今回は“ホルムズ海峡”

中田 宏

今日は“ホルムズ海峡”について解説したいと思います。

海峡とは陸と陸に挟まれた狭い海のことを指し、日本で言えば本州と九州の間にある関門海峡や本州と北海道の間にある津軽海峡などのことです。

ホルムズ海峡を囲んでいる国には、イラン・バーレーン・カタール・サウジアラビア・アラブ首長国連邦・オマーンなどです。そのうち、イランとサウジアラビアは海峡を挟み向き合っていますが、この二カ国は長年対立をしています。

さて、ホルムズ海峡という言葉がなぜニュースなどでよく聞くのかと言えば「重要」だからです。ではなぜ、「重要」なのかと言えば、石油輸送に欠かせない海峡だからです。

先ほど挙げたホルムズ海峡を囲む国々は全て産油国です。これらの産油国が石油を輸出する際に使用する航路にホルムズ海峡があるからです。

全世界の石油供給量の20%強がホルムズ海峡を含む航路を使用しています。日本は石油の全てを世界から輸入しています。そのうち90%が中東からの輸入です。さらにそのうち85〜90%の石油はホルムズ海峡を通過してきます。

ホルムズ海峡で最も幅の狭い場所は21マイル(約34km)です。さらに船が航行できる場所はわずか3kmです。その3kmを航行する船を狙うことは容易で、対立しているイランとサウジアラビアの両国はともにミサイルを配備しています。また、アメリカ海軍の第5艦隊もバーレンに司令部を置いています。

1980年から1988年に起こったイラン・イラク戦争ではともに攻撃しあい、1988年にはアメリカとイランがホルムズ海峡で衝突しました。

もしこの地域で紛争が起これば、過去にあったように石油価格が急騰し、そして我々の生活もガソリン価格が高くなって困ったという程度を超越し、経済が大打撃を受けることになります。石油を全て輸入している日本は経済がガタガタになるでしょうし、石油そのものが入手できなくなると、国家の危機になり得ます。

現状はアメリカがイランに経済制裁を再開し、イランが強く反発しています。7月19日にはイランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊(IRCG)」がホルムズ海峡でイギリス船籍の石油タンカーを拿捕しました。その1ヶ月前には日本のメタノールを運んでいるタンカーを何者かに攻撃されました。

もしホルムズ海峡で「何かこと」が起これば、あなたの生活にも多大な影響を及ぼすことになるでしょう。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年8月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。