バロンズ:マイナス金利、米株相場への影響は

2019年08月12日 06:00

バロンズ誌、今週はカバーでボラタイルな市場で注目の8銘柄を紹介する。成長鈍化局面での推奨はオンライン小売大手アマゾンを始めネットワーク機器メーカーのアリスタ・ネットワークス、データセンターで知られるエクイニクス、製薬大手メルク。その他、配当利回りでの推奨銘柄は半導体大手ブロードコム、百貨店ターゲット、通信大手ベライゾン・コミュニケーションズ、木材資材大手ウェアーハウザーとなる。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週はマイナス金利とその影響を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

カバー写真:RosieTulips/Flickr

この強気相場は、いかにして終焉を迎えるの—How This Bull Market Will End.

詩人のロバート・フロストが1世紀に書いた作品では、世界の終焉が火か氷かと問うたものだが、今、世界の金利はマイナスの領域に沈む。その一方で住宅市場、商業不動産、投機的格級の債券、そして株式市場は上昇中だ。

マイナス金利は預金者や年金の運用者にとって打撃となるが、PIMCOのホアキム・フェルズ氏は、マイナス金利に対し人口動態とテクノロジーの副産物と指摘する。これは、日本銀行や欧州中央銀行(ECB)その他の中銀によって課された異例な常態とする定説に反するものだ。フェルズ氏は、平均寿命が伸び貯蓄への嗜好が強まるなかで、将来に備え購買力を温存するため、マイナス金利を受け入れさらに貯蓄性向を強めると予想。同時に、新たなテクノロジーが新たな資本の必要性を低下させ物品の価格が下落することで、投資への需要が減退し金利を低下させるという。

米10年債利回り、Tビルとは引き続き逆イールド。

tbill

作成:My Big Apple NY

そうは言っても、やはり日銀やECBなどの成長を支援するためのマイナス金利政策が、国債や投機的格の社債、株式など資産価格の上昇を招いたことは疑いようもない。成長を促進するより、むしろ金融システムへの資金流入につながった点で成功したと言えよう。

量的緩和策も、経済活性化のために導入されたが、成長への影響は限定的だった。しかし、3度にわたってQEを実施した米国では、財政赤字が2019年度(18年10月〜19年9月)から1兆ドルを超える見通しだ。それでも、米国は基軸通貨であり準備資産としての主要通貨という途方もない特権を有している。そのため、トランプ大統領は継続的にドル高に不満を表明しているが、赤字を補填する上で困難に直面してこなかった。

ケスラー・インベストメント・アドバイザーのロバート・ケスラー氏は1年前、当時誰もが米10年債利回りが4%乗せを見込むか、次の景気後退入り局面で米10年債利回りが1%を割り込むと予想した。今となっては多くが量的緩和の再開とともに、利回りがゼロあるいはマイナスへ向かうと予想する。

問題は米10年債利回りがゼロへ向かった時、米株市場などリスク資産がどうなるか、である。ソシエテ・ジェネラルのアルバート・エドワーズ氏は、米株安とリスク資産下落といった経済と金融の氷河期に入ると予想する。B.ライリー・FBRのマーク・グラント氏は逆に、米債利回りが過去最低へ進む上でリスク資産が上昇すると予想、新たな借入需要と借換需要を引き起こす見通しだ。安全資産のリターンは、その他の資産の投資妙味を高めるだろう。

あるいは、低金利の熱は生暖かい結果を生み出すかもしれない。レビー・フォーキャスティング・センターのデビッド・レビー氏は「怪しい金融ポジションを保有する企業は追加融資を受けやすくなっており、キャッシュフロ—の穴埋めが可能となり、削減計画が先送りされる」と語る。政府も財政赤字の補填が容易となるだろうが、こうした動きは利益と成長の伸びが鈍化するなかで、消滅はしていないが、弱まっている。

果たして、火なのか氷なのか?少なくとも、米連邦準備制度理事会(FRB)はFF金利を25bp引き下げるだけにとどめ、市場を冷やした。米国の政策金利が各国を上回る水準が続くなか、米国債利回りは景気後退の冬が近づいていることを示唆する。リスクは、トランプ政権の通商や為替といった政策からもたらされてもおかしくない。

LTCM破綻とロシア危機などを受けFedが利下げを行なった1998年、米経済は堅調で資産価格の上昇を招きドットコム・バブルにつながった。翻って現在、割高感は当時程ではないが、低金利環境は利益を生まない企業の融資や借換を容易にし続けている。経済動向はというと、あらゆる指標が鈍化を示すなかで労働市場の先行指標である米新規失業保険申請件数は過去最低水準にとどまる。こうしてみると、現状は冷気より熱気が勝っているのではないか。


トランプ政権が残り約3,000億ドルの中国製品に追加関税を発動する意思を表明してから、米国債利回りは低下し、米株市場のボラティリティも急上昇してきました。その陰で、VIX指数は一時的に急騰するのみ。9日も17.97と節目の20を割り込んでいます。

米中首脳会談後、禁輸解除について言及された中国通信機器大手ファーウェイをめぐり、7日に発表された国防授権法に基づく調達禁止対象リストに残したものの、反応は2018年末と年始と比較すれば限定的。逆イールドを迎えるなかで、VIX指数との温度差は足元の地合いが夏場の一時的な調整を示すのか、見極めていくべきでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年8月11日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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