カナダ経済に見る体感温度

2019年08月18日 14:00

バンクーバーで28年もビジネスをし続けていれば「ビジネスの体感温度」は案外感じやすいものです。北米は景気がいいのか、悪いのか、このあたりをカナダを中心に私の感じる肌温度で考えてみたいと思います。

バンクーバー市街地(longzijun/flickr:編集部)

マリーナの世界から

私の会社で所有、管理するマリーナ。今年の夏はボートが動かない、これが一つ目の体感温度です。この業界、ボートオーナーが数週間から月単位で外洋に出ることもあり、空いたボートの停泊場所を短期のビジターに「また貸し」し、その収益をそこを借りているボートオーナーとシェアする仕組みになっています。

ところが今年は長期どころか短期で出かけるボートオーナーすら少なく、マリーナに行けばボートオーナーたちが動かないボートを囲むようにたむろして酒を飲んでいます。完全な社交場であります。最低でも数千万円、中には数億円するボートのそれらのオーナーが気にしているのは案外、船を動かす燃料費だったりするのです。当地の燃料費は北米で最も高く、燃料をバク食いするクルーザーのオーナーにとって燃料費高騰は航海に出るには気のりしないということでしょうか?高級クルーザーと燃料費の関係は全く論理性がないのですが、高額所得者ほどこんなことが気になる傾向はあり、心理的影響は否定できないかもしれません。

不動産の世界から

不動産が高いのもバンクーバーの象徴でありました。が、この1-2年はスポットライトも当たらず、あきらめムードすらあります。ビジネス中心のトロントの不動産市況は明らかに戻り歩調で薄明りすら差していますが、バンクーバーの市場は中国本土からのマネーに翻弄されたこともあり、市場の落ち着きどころを未だに探している状況であります。

不動産開発は計画してから建物完成まで今や5年以上かかる時代です。今進む数多くの建築中の物件は最低でも2年前、つまりまだバンクーバーの不動産景気が良かったころに開発計画が進んだものであります。空高くそびえつつある建築中の物件が果たして予定通りの収益を上げるのか、開発業者の心中は如何に、というところかと思います。最大のポイントは建物完成3年前に締結された売買契約で個人の経済的事情がその間に変わらず、引き渡し時に約束通り履行されるか、ここにかかっているようです。

商業の世界から

目抜き通りだったロブソン通りはいまや、空き店舗だらけの通りと化したかもしれません。通りに面した不動産所有者たちはビジネスが成り立たないような賃料を当たり前のようにテナントに課し、それでも入居したテナントは6カ月、1年ぐらいでギブアップ、一部の物件では空きスペースである期間の方がはるかに長くなってきました。

その中でもロブソン通りのほぼ中心のある建物は路面店スペース6軒のうち5軒が空きになっています。そこを通るたびに思うことは活気のない通り、ということになります。これでは逆効果で「ロブソン通りってつまらないね」というイメージにもつながってしまうのです。こういうのは消費の心理的をすっかり冷やしてしまいかねません。

レンタカーの世界から

レンタカーの事業は好調なのですが、案外、不思議なのが提携ホテルからの問い合わせ。「お客様がいるのですが、クルマは何が空いていますか?」というコンシェルジュから問い合わせに〇〇と△△という具合に答えると電話の向こうにいる客から「一番安いやつを」と電話越しに聞こえています。

私の心中は「なになに、一泊5万円も払って1日5000円のクルマですか?」であります。冒頭のボートオーナーの燃料費の話と同じで金持ちはどういう経済感覚のバランスを持っているのか悩みます。昨年までチラチラ見られたおカネに糸目はつけず、というスタイルは明らかに少なくなっています。

結論は?

7月のアメリカの小売売上高統計は5カ月連続の上昇で7月は事前予想の0.3%増をはるかに上回る0.7%増となっています。アメリカの消費はさほど悪くありません。カナダも全く悪くなく、カナダ中央銀行は今のところ、金利引き下げをする姿勢は見せていません。何が悪いかといえばマインドが悪く、企業が投資を手控えていることが大きく影響しているとみています。

とすれば個人の懐はさほど痛んでいない、だけど、みんなが「R」(リセッションのことをよくRと表現します)というのでちょっと財布のひもを引き締めようかな、という感じに見えます。人々の表情に悲壮感などは全くなく、今日も観光客で街は人で溢れています。

こんなバンクーバーの街を見ていると経済は心理的要因が本当に大きいのかなぁと思ってしまいます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年8月18日の記事より転載させていただきました。

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