香港デモ:強い意思表示だけど、逆効果も?

8月18日に香港でまた大規模なデモが行われました。主催者発表で170万人(警察発表12万8000人)ということです。主催者発表というのは万国共通で盛られた数字だと思いますが、それでも6月16日に行われた200万人のデモに続く規模でした。

多少盛った数字だとしても人口約734万人※の香港でこれだけの規模だと、一部の人の行動ではなく、本当に多くの香港の人たちが声を上げていると言う事でしょう。その理由は、6月20日のブログ「民衆の声【香港デモ】」でお伝えしました、逃亡犯条例改正への反対運動に端を発しています。

さらに1週間前の8月9日〜13日には、抗議活動参加者が香港国際空港を占拠して空港機能が停止する事態にも陥りました。一時全便が欠航する事態となり計1000便以上、およそ10万人に影響が及んだと言われています。香港の主要産業といえば観光ですから、これはダメージが大きいです。日本から出発する全日空や日本航空も欠航便が相次ぎました。また、香港空港といえばアジアを代表するハブ空港で、旅客数は年間7451万人(2018)が利用し、多くの乗り換え(トランジット)客も使用する空港で、ちょうどお盆、夏休みが重なった時期でもありましたので、日本から旅行に行けなくなったり、また日本に帰国できない人たちもいたようです。

ではなぜ日本人にも外国人にも大きな影響がある香港国際空港を占拠したんでしょうか。
理由は2つ。
①外国人や一般の人たちが大勢いるため、警察が強制排除しにくい
②外国人も多くする国際空港で世界にメッセージをアピールできる
です。

すなわち、抗議活動している民主派といわれる人たちが国際社会を味方につけたい思いがあり、国際空港の占拠というふうに至ったようですが、逆効果もあります。なぜなら、海外旅行を考えている人は「香港がちょっと危険だからやめておこう」と控えたり、外務省もすでに8月14日、香港に対して初めて危険レベル1の危険情報「十分注意してください」を発出したり、香港というエリアがとにかく危ないという国際世論にもなってしまいます。

現状の香港の経済状況は、米中貿易戦争によって低成長です。そこに加えて、観光客が入ってこず、観光客の消費が減り、香港経済はかなりの痛手です。すでに7月後半の観光客は10%以上、一部報道では8月初旬の観光客は前年比で30%減少しているとりますので、今月8月は間違いなく大幅に減ります。

一方中国政府は香港からわずか10キロほど先の広東省深圳に人民武装警察部隊(武警)を結集させて、抗議活動を牽制し始めました。

デモや集会が一部暴徒化したという事実ですね。中国政府はこれをテロと呼んでいます。今、テロと呼んでいるこの騒動鎮圧のために武力解決をする意図も読み取れます。そうなれば1989年の天安門事件のように、軍が国民に銃口を向ける事態に繋がるかもしれません。

実際にすぐそこまで武力が来ている。さらに、今回のデモを香港政府は許可しなかった。それでもいわゆる民主派の人たちは、デモを行ったということは、絶対に引かない意思表示でしょう。

アメリカ時間の18日、トランプ大統領は「天安門(事件)のように再び武力を使えば、取引が困難になる」「人道的に解決してほしい。そうすれば貿易交渉に追い風になるだろう」と発言しました。武力弾圧をすべきではないと私も思いますが、しかし中国政府が抗議活動に折れるかといったら折れると思います。
※外務省 香港基礎データ(2016)より


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年8月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。