グループ・ガバナンスに関連する重要判例:ベネッセ損害賠償東京高裁判決が全文開示

2019年08月22日 11:30

今年6月、こちらの「ベネッセ情報流出事件:親会社に初の賠償命令(内部統制の視点から)」と題するエントリーで、6月27日に出された東京高裁判決のニュースをご紹介しておりました。そしてようやく(?)最高裁HPにこの東京高裁判決の全文が開示されましたので、さっそく全文に目を通しました。ベネッセが保有していた顧客情報の管理ミスについて、客観的関連性ありとして、子会社とともに親会社であるベネッセコーポレーション(事業会社)の共同不法行為責任を認めていますね(民法719条 なお、ベネッセグループの完全親会社は持株会社であるベネッセホールディングスです)。

ベネッセ公式サイトより:編集部

子会社の従業員もしくは子会社の委託先従業員の不適切行為について、親会社の管理監督責任を論じるにあたり、このベネッセの損害賠償東京高裁判決は、昨年のイビデン・セクハラ内部通報最高裁判決に続いて重要な判決になるものと思います(たしか控訴人、被控訴人ともに上告受理申立てをされているので、まだ最高裁でどのような判断が下されるのかはわかりませんが・・・)。

会社法の世界では、グループガバナンスに関する実務指針が公表されて「グループガバナンス」への関心が高まり、またアスクルとヤフーにおける子会社支配権に関連する紛議を通じて「子会社のガバナンス」と「親会社による事業ポートフォリオ管理」の狭間における企業集団内部統制が議論されている中で、このベネッセ情報流出事件の高裁判決は、ぜひとも著名な研究者の方に解説をお願いしたいところです(私のようなごく普通の弁護士ではちょっと大所高所からみた判決の意義を述べることは無理そうですー笑)。

ただ、当判決を読んだ「企業コンプライアンスに関心を持つ実務家」として一言申し上げるとすれば、①グループ親会社の経営トップは情報セキュリティについては重大なリスクとして検討しなければならず、②せめて取締役もしくは執行役員の中に、情報セキュリティに詳しい最高責任者をひとり選任する必要があり、③不幸にして情報流出事故が発生した場合には、自浄作用を発揮することが損害額にも影響を及ぼすことを認識しなければならない(自浄作用を発揮しなければ、役員の株主代表訴訟のリスクが格段に高まる)、ということです。ぜひ多くの方にお読みいただきたい判決文です。

山口 利昭 山口利昭法律事務所代表弁護士
大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(1990年登録  42期)。IPO支援、内部統制システム構築支援、企業会計関連、コンプライアンス体制整備、不正検査業務、独立第三者委員会委員、社外取締役、社外監査役、内部通報制度における外部窓口業務など数々の企業法務を手がける。ニッセンホールディングス、大東建託株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を歴任。大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)社外監査役(2018年4月~)。事務所HP


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2019年8月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。

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