FM東京の決算不正:責任の一端は総務省にある

山田 肇

エフエム東京がデジタルラジオ事業で生じた赤字を隠す不正決算を行い、8月21日に謝罪会見した。

エフエム東京本社ビル(Wikipediaより:編集部)

デジタルラジオはアナログテレビの廃止で空いたVHF-Low帯で営むラジオ放送である。簡易な映像通信なども可能ということで、ラジオ各局は「VHF-Low帯マルチメディア放送推進協議会」を一時期組織し普及活動を進めていた。このデジタルラジオに最も熱心だったのがFM東京である。

ラジオは電波を使って広範囲にコンテンツをばら撒くものだが、コンテンツを拾って利用する受信者がいなければ何の価値も出ない。記事によれば、決算不正は「16年にサービスを始めたものの、利用者数が低迷し赤字が続いていた。」ために起きたそうだ。

アナログテレビの廃止で空いた周波数については、VHF-High帯(200MHz近辺)マルチメディア放送がNOTTVの撤退で失敗した。そして今回、VHF-Low帯(100MHz近辺)でも失敗が隠せなくなった。

AMラジオが都市部での反射などによって聴こえにくくなったのを救済するという目的を打ち出して、総務省はVHF-Low帯を使ってAM番組を同時放送する「ワイドFM」を推進している

しかし、「ワイドFM」の推進事業はすでに2016年に行政事業レビューの対象となり、事業全体の抜本的な見直しという結論が出ている。レビューの際に僕は「そもそもラジオを持っていない世帯が多い。」と指摘したが、その場での総務省の回答は「これからラジオの普及を図る。」だった。

FM東京の決算不正は、総務省のいう「これからラジオの普及を図る。」が失敗だったことを示している。

この行政事業レビューからすでに3年が経過している。この間にもワイドFM推進の危険性が指摘されてきた。

空き周波数のマルチメディア放送への転用というこの10年間の施策は完全に失敗したと総務省は認め反省すべきである。

山田 肇