バロンズ:苛烈さを増す米中貿易戦争に、有力投資家は何を思う

2019年08月26日 06:00

バロンズ誌、今週はカバーに9月から開幕するアメリカン・フットボールを取り上げる。9月5日のシカゴ・ベアーズ対グリーンベイ・パッカーズの試合は、ナショナル・フットボール・リーグの記念すべき100シーズン目を意味する。放送局であるNBCは、郷愁をもって試合の中継に臨む見通しで、ロボット空撮カメラ”スカイカム”やドップラー・レーダーを駆使し、臨場感あふれる選手の動きやプレーを映し出す方針だ。ネットフリックスなど新たなメディアが登場し視聴者争奪戦が繰り広げられるなか、スポーツ生放送は新たな展開を迎えつつある。詳細は、本誌をご覧下さい。

カバー写真:The White House/Flickr

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週のカバーは米中貿易摩擦など市場が抱えるリスクと有力投資家の見通しに焦点を当てる。抄訳は、以下の通り。今週は担当のランダル・フォーサイス氏ではなく、アンドリュー・バリー氏が務める。

トランプのツイッターと関税、市場のボラティリティを高める—Trump’s Tweets and Tariffs Are Amplifying Market Volatility.

米株市場は通常、8月末は米議会が夏期休暇中であるほか、米大統領もバケーションに入る場合が多く、開店休業状態が多かった。オバマ前大統領は、1〜2週間にわたって高級避暑地で知られるマーサズ・ビンヤードで過ごしたものである。

しかし、今は様変わりしてしまった。トランプ大統領は夏休みらしい休みを取らず、ツイッターから離れようとしない。週末でも同様だ。関税から米連邦準備制度理事会(FBR)まで、トランプ氏がツイートした内容がニュースのヘッドラインを飾らない日はなく、S&P500のボラティリティの上昇の一役買い、同指数は8月の4週間で4.5%下落した。

過去1週間、トランプ氏はパウエルFRB議長に利下げを要請し続け、ある日はFRB議長に対し「パットができないゴルファーのようだ」と揶揄したものだ。

何より、23日には大きな爆弾を投下した。中国が約750億ドル相当の米国製品に追加で5〜10%の関税を課すと発表した後、トランプ氏は米企業に中国からの事業撤退を求めた。新たな米中間の貿易摩擦の激化により、ダウは623ドルも急落(2.4%安)し、S&P500も2.6%安を迎えた。これを受けて、AGFインベストメンツのグレッグ・バリエール氏は「ニュースのヘッドラインが少ない日に、トランプ大統領は空いた枠を埋める方法を知っている」と皮肉を寄せたものだ。同時に、グリーンランドに対し購入意欲を表明するなど、足元でトランプ氏の言動が常軌を逸し、過激になったと指摘する。そのの上で同氏は、一連の動きがトランプ氏の再選の可能性を低下させ、民主党の追い風になるとみなす

twitter_trump

(出所:Twitter

7月と8月、年始のビックリ10大予想で知られるブラックストーン・グループのバイロン・ウィーン副会長は、ハンプトンで投資家と4回にわたり自身の別荘で昼食会を開いた。25〜30名ずつ招待されたそれぞれの会合で、86歳のウィーン氏はヘッジファンド、プライベート・エクィティ、不動産投資家、ベンチャー・キャピタリスト、学者、企業幹部を招いたという。

ウィーン氏は、その時の披露した見解をこう要約した——「ほとんどの参加者は、どちらの党に所属していようとも、トランプ氏の再選の可能性を見込んでいた。ただ、第4弾の対中追加関税発動を表明した8月1日以降は、再選見通しから熱気が後退していた」。

ただし、米株市場に強気で「多くがS&P500が年末までに3,000の大台を突破すると予想した」という。中国との通商合意も1年以内に可能と判断し、景気後退も「ほとんどが2021年以前に陥ると想定していなかった」。

そのほか昼食会の参加者は、2000年に6兆ドルだった米連邦債務が足元で22兆ドルに膨れ上がったことに対し、多くが懸念を寄せていた。逆に向こう12ヵ月先の金融市場をめぐり、参加者が最も懸念していた問題は米中貿易摩擦ではなく、景気後退入りのリスクだった。ウィーン氏の昼食会で寄せられた予想が必ずしも正しいとは限らないが、巨額の投資資金を有する市場参加者がどのように考えているかを知ることは、決して不利益にはならないだろう。


米中貿易摩擦の激化に際し、ウイーン氏の昼食会に集まった投資家が米株相場に強気で、2021年前の景気後退入りを予想していなかったとしても、過去の話になってしまいました。8月23日に発表された米中間の追加関税・報復関税措置は以下の通りです。

▽中国
・750億ドル相当の米国製品に、5〜10%の追加関税を発動(例:大豆は現行の25%→30%引き上げ)
・発動は9月1日、12月15日と2段階
・対象は5,078品目で、大豆、牛肉、豚肉、小型飛行機など、自動車・部品向けの関税も再開

米国
・発動済みの中国製品約2,500億ドル相当への追加関税税率を10月1日から25%→30%へ引き上げ
(10月1日の発動前に、意見公募を行なう)
・9月1日、12月15日から発動予定の残り約3,000億ドル相当への追加関税措置の税率も10%→15%へ引き上げ

トランプ陣営は、中国人民元の基準レート引き下げに対抗し追加関税措置を引き上げたのでしょう。苛烈さを増す米中貿易摩擦ですが、執筆時点の8月25日時点で9月の米中通商協議は現段階でキャンセルされておらず、交渉余地を残します。しかも両者は、既に2018年時点の輸入額のほぼ上限に達しており、追加関税を今後引き上げていくとすれば、両国経済への一段のダメージは必至。

現時点で無傷にみえる米国もドル高や世界経済減速の影響もあって、設備投資が鈍化に直面し、7月30〜31日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨での懸念材料に挙げられていました。税制改革法案で1世帯当たり約800ドル底上げされた個人所得ヘの効果も、帳消しとなり得る。そうなればトランプ氏再選の可能性も後退する見通しで、米中間のチキンレ—ス長期化のリスクに、結局Fedが追加利下げで対応せざるを得なくなりそうです。

パウエルFRB議長は、注目のジャクソン・ホール講演で「適切に対応する」と発言するにとどめましたが、少なくともFF先物は25bpの利下げを95%織り込んでいます


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年8月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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