「候補者」で敗北した自民党。埼玉県知事選の教訓

2019年08月29日 06:00

自民党が埼玉県知事選で敗北

7月の参議院選以来の初の大型地方選である、任期満了に伴う埼玉県知事選は、8月25日投開票され、立憲、国民、共産、社民の野党4党が支援する無所属新人で前参議院議員の大野元裕氏(元防衛政務官、元在シリア日本大使館1等書記官)が、自民、公明推薦の無所属新人で元プロ野球選手・スポーツライターの青島健太氏を5万7461票差で破り、初当選を果たした。青島氏の推薦と選挙運動の主体は自民党であるから、自民党はこの選挙に負けたのである。

埼玉知事選で激突した大野元裕氏( 左)と青島健太氏=両氏ツイッターより:編集部

今回の知事選の主な争点

今回の知事選は上記両氏による事実上の与野党対決で、前知事上田清司県政の継承か刷新かが主な争点だった。上田県政は行財政改革に積極的で、県職員数は人口1万人当たり12人と日本一少ないとされる。

大野氏は、上田知事の後継候補として「上田県政の発展と継承」を掲げて、「日本一暮らしやすい埼玉を実現する」と訴え、組織票を手堅く固め、無党派層にも浸透して与党が推薦支援する青島氏との接戦を制した。対する青島氏は上田県政の刷新を訴え、少子化対策やインフラ整備、健康対策などを主張したが、及ばなかった。

自民党敗北の原因

選挙戦で自民党は党幹部を大量投入する総力戦を展開した。しかし、投開票日のNHKの出口調査によれば、大野氏は野党支持層から高い支持を得た上に、自民党支持層の約3割を取り込み、さらに、無党派層の約6割の支持を得ている。これでは自民党候補は勝てない。

今回の知事選における自民党敗北の最大の原因は、率直に言って候補者選定の問題である。青島氏は元プロ野球選手でスポーツライターであるが、政治はズブの素人であり、政治的経験も政治的実績もない。反対に、大野氏は元外交官で地元埼玉県選挙区選出の参議院議員に2回当選し、防衛政務官、1等書記官などを歴任した、国会議員として数少ない外交防衛のスペシャリストの一人であると言えよう。

しかも、参議院議員を辞任し背水の陣でこの選挙戦に臨んでおり、その政治姿勢も教条的ではなく柔軟性がある。自民党支持層の約3割の支持を得た理由でもあろう。こうした両候補の政治的経験や政治的実績における大きな違いが勝敗を分けた最大の原因であったと言えよう。

自民党敗北の最大の教訓

今回の埼玉県知事選における自民党敗北の最大の教訓は、何よりも、自民党としての政策の重要性もさることながら、「候補者選定の重要性」が改めて明白になったことである。すなわち、候補者選定にあたっては、いわゆる知名度だけの素人よりも、政治的経験や政治的実績を一層重視すべきである。なぜなら、有権者の目が厳しくなり、単なる知名度だけでは投票しなくなっているからである。

このことは、「野党共闘」についても言えるのであり、今回の知事選はたまたま候補者が優れていたからである。そして、来る衆議院総選挙において、保守層からの一定の支持と無党派層からの大きな支持が得られる候補者を「野党共闘」側が揃えた場合は、自民党にとっては極めて深刻で最大の脅威となるであろう。これが与野党にとっての今回の知事選の最大の教訓と言えよう。

加藤 成一(かとう  せいいち)元弁護士(弁護士資格保有者)
外交安全保障研究。神戸大学法学部卒業。司法試験及び国家公務員採用上級甲種法律職試験合格。最高裁判所司法研修所司法修習生修了。元日本弁護士連合会代議員。弁護士実務経験30年。

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加藤 成一
元弁護士(弁護士資格保有者)

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